佐藤慶浩「外部委託先に対して情報セキュリティ対策のマネジメントシステム適合性評価の認証取得を求めることの課題」
情報ネットワーク・ローレビュー11巻(2012年11月)88頁に,佐藤慶浩「外部委託先に対して情報セキュリティ対策のマネジメントシステム適合性評価の認証取得を求めることの課題」という研究ノート(←論説=論文扱いではない。)が掲載されていた。
読んでみて思ったのは,この雑誌の査読者のレベルが低下しているのではないかということだ。
この研究ノートは,主として,その筆者の業務上の商業宣言広告を目的とするものであり,学術研究を目的とするものではないのではないかという疑いがあるが,その点は一応措くとしても,「内容的には無だ」との一言に尽きる。何ら哲学を感ずることもできない。
こういう研究ノートがまかり通ってしまうから,先日のNTTデータ関連の重大事故のような事故の発生を避けることができないのだ。
もし私が査読者であれば,何の疑問も躊躇もなく,却下(不採用)とすることだろう。
なお,誤解を避けるために附言しておくと,私が批判しているのは,この研究ノートの内容に対してだ。著者に対してではない。著者が更に基本的な勉強を重ね,研鑽を積み,将来,研究論文と認められるような立派な著作を書けるようになる日が来ることを心から期待する。
ちなみに,別の記事でも書いたが,マネジメントシステムに傾斜し過ぎる思考傾向の弊害があまりにも目につき過ぎる。元に戻して,不法行為法や刑法などの一般理論からもう一度考え直すべき時期に来ている。
マネジメントシステムはプロシージャの一種に過ぎないので,対症療法とはなり得ても,病因の根治には基本的には役立たないし,それを目的とするものでもない。これは,宿命のようなものだ。
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(余談)
こういうことが増える危惧感をもっていたので,約2年半前に某出版社からの依頼に応じて,「個人情報の本人」に関する原稿(共同執筆担当部分)を書いた。
私見である「免罪符説」を世界で初めて文字にしたものだ。
長らく放置されていたので,やむを得ず,学生には同じ内容のレジュメを配り,口頭で「免罪符説」について説いてきた。目下のところ,最も真理に近い学説だと思っている。
そういうわけで,企画がボツになったのだろうと思っていたら(←昨今の出版事情の下では,そういうことがあってもぜんぜん不思議ではない。),今年の夏になって突然ゲラがやってきた。しかも,全体として予定の総ページ数を大幅に超過してしまったため,一律一定割合でカットして欲しいということだった。
この間,重要な法改正があったので,それも含めてゲラ校正をし,期限までに提出した。
しかし,やはり,その後も放置されている。
おそらく,出版されることがないのだろう。
年内に出版されない場合には,私の執筆担当部分だけまとめ直した上で,電子出版として米国から出版してしまおうかと考えている。
あまりにもノロすぎる。
加えて,これとは全く別の出版社だが,私が司会を担当したあるパネルディスカッションの記録について,私の発言部分等のゲラ修正等をしたのに,その掲載雑誌を1冊も送ってこない。
日本の出版社の能力は地に落ちてしまっているようだ。
あまりのひどさに,怒る気にもなれない。
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