【岡本玄】京都府舞鶴市で2008年5月、府立高校1年の小杉美穂さん(当時15)を殺したとして、殺人と強制わいせつ致死の罪に問われた無職中(なか)勝美被告(64)の控訴審判決が12日、大阪高裁であった。川合(かわあい)昌幸裁判長は、無期懲役(求刑死刑)とした一審・京都地裁判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
川合裁判長は、犯行現場近くで目撃された男が被告とは断定できないと指摘。検察側が示した間接証拠に「被告が犯人でないのなら、合理的な説明がつかない事実が含まれているとは言えない」と判断した。
中被告は08年5月7日未明、舞鶴市の朝来(あせく)川近くで被害者にわいせつ行為をして抵抗され、顔や頭を鈍器で何度も殴って殺したとして09年4月に逮捕され、裁判員制度導入直前の同月末に起訴された。逮捕直後から一貫して否認。犯行の目撃証言など直接証拠はなく、検察側は、犯行時間帯に現場近くで被告に似た男性と若い女性を見たとする車の運転手の証言などの間接証拠を立証の柱とした。
川合裁判長は、昨年5月の一審判決が有罪認定の根拠とした間接証拠を検討。運転手の目撃証言を「男をほんの数秒しか目撃しておらず、男の目つきや年齢などの説明も変遷している」と信用性を否定。また被告が捜査段階で、被害者のかばん内にあったポーチなど遺留品の色や形状を供述したことを秘密の暴露ととらえた一審の認定についても、「(色や形状に)際だった特徴はなく、犯人でしか知り得ないとは言えない」と結論づけた。
控訴審で弁護側は「運転手の証言は捜査員らの誘導や思い込みで変遷し、信用できない。被害者と一緒にいたのは被告以外の男性の疑いがある」と無罪を主張。検察側は「殺害方法の残虐性や遺族の被害感情などを考えれば、無期懲役は著しく軽い」と訴えていた。