- 2011年9月20日 5:00 PM
- 福島原発震災
9・19 さようなら原発5万人集会での、ハイロアクション福島・武藤類子さんのスピーチをご紹介します。
ふくしまの想いを、ひとりでも多くの方に、伝えたい。英訳はこちら。
*このスピーチが収録された本が出版されました。
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みなさんこんにちは。福島から参りました。
今日は、福島県内から、また、避難先から何台ものバスを連ねて、たくさんの仲間と一緒に参りました。初めて集会やデモに参加する人もたくさんいます。福島で起きた原発事故の悲しみを伝えよう、私たちこそが原発いらないの声をあげようと、声をかけ合いさそい合ってこの集会にやってきました。
はじめに申し上げたい事があります。
3.11からの大変な毎日を、命を守るためにあらゆる事に取り組んできたみなさんひとりひとりを、深く尊敬いたします。
それから、福島県民に温かい手を差し伸べ、つながり、様々な支援をしてくださった方々にお礼を申し上げます。ありがとうございます。
そして、この事故によって、大きな荷物を背負わせることになってしまった子供たち、若い人々に、このような現実を作ってしまった世代として、心からあやまりたいと思います。本当にごめんなさい。
皆さん、福島はとても美しいところです。東に紺碧の太平洋を臨む浜通り。桃・梨・りんごと、くだものの宝庫中通り。猪苗代湖と磐梯山のまわりには黄金色の稲穂が垂れる会津平野。そのむこうを深い山々がふちどっています。山は青く、水は清らかな私たちのふるさとです。
3.11・原発事故を境に、その風景に、目には見えない放射能が降りそそぎ、私たちはヒバクシャとなりました。
大混乱の中で、私たちには様々なことが起こりました。
すばやく張りめぐらされた安全キャンペーンと不安のはざまで、引き裂かれていく人と人とのつながり。地域で、職場で、学校で、家庭の中で、どれだけの人々が悩み悲しんだことでしょう。 毎日、毎日、否応無くせまられる決断。逃げる、逃げない?食べる、食べない?洗濯物を外に干す、干さない?子どもにマスクをさせる、させない?畑をたがやす、たがやさない?なにかに物申す、だまる?様々な苦渋の選択がありました。
そして、今。半年という月日の中で、次第に鮮明になってきたことは、
・真実は隠されるのだ
・国は国民を守らないのだ
・事故はいまだに終わらないのだ
・福島県民は核の実験材料にされるのだ
・ばくだいな放射性のゴミは残るのだ
・大きな犠牲の上になお、原発を推進しようとする勢力があるのだ
・私たちは棄てられたのだ
私たちは疲れとやりきれない悲しみに深いため息をつきます。
でも口をついて出てくる言葉は、「私たちをばかにするな」「私たちの命を奪うな」です。
福島県民は今、怒りと悲しみの中から静かに立ち上がっています。
・子どもたちを守ろうと、母親が父親が、おばあちゃんがおじいちゃんが・・・
・自分たちの未来を奪われまいと若い世代が・・・
・大量の被曝にさらされながら、事故処理にたずさわる原発従事者を助けようと、 労働者たちが・・・
・土を汚された絶望の中から農民たちが・・・
・放射能によるあらたな差別と分断を生むまいと、障がいを持った人々が・・・
・ひとりひとりの市民が・・・ 国と東電の責任を問い続けています。そして、原発はもういらないと声をあげています。
私たちは今、静かに怒りを燃やす東北の鬼です。
私たち福島県民は、故郷を離れる者も、福島の地にとどまり生きる者も、苦悩と責任と希望を分かち合い、支えあって生きていこうと思っています。私たちとつながってください。私たちが起こしているアクションに注目してください。政府交渉、疎開裁判、避難、保養、除染、測定、原発・放射能についての学び。そして、どこにでも出かけ、福島を語ります。今日は遠くニューヨークでスピーチをしている仲間もいます。思いつく限りのあらゆることに取り組んでいます。私たちを助けてください。どうか福島を忘れないでください。
もうひとつ、お話したいことがあります。
それは私たち自身の生き方・暮らし方です。 私たちは、なにげなく差し込むコンセントのむこう側の世界を、想像しなければなりません。便利さや発展が、差別と犠牲の上に成り立っている事に思いをはせなければなりません。原発はその向こうにあるのです。 人類は、地球に生きるただ一種類の生き物にすぎません。自らの種族の未来を奪う生き物がほかにいるでしょうか。 私はこの地球という美しい星と調和したまっとうな生き物として生きたいです。 ささやかでも、エネルギーを大事に使い、工夫に満ちた、豊かで創造的な暮らしを紡いでいきたいです。
どうしたら原発と対極にある新しい世界を作っていけるのか。誰にも明確な答えはわかりません。できうることは、誰かが決めた事に従うのではなく、ひとりひとりが、本当に本当に本気で、自分の頭で考え、確かに目を見開き、自分ができることを決断し、行動することだと思うのです。ひとりひとりにその力があることを思いだしましょう。
私たちは誰でも変わる勇気を持っています。奪われてきた自信を取り戻しましょう。 そして、つながること。原発をなお進めようとする力が、垂直にそびえる壁ならば、限りなく横にひろがり、つながり続けていくことが、私たちの力です。
たったいま、隣にいる人と、そっと手をつないでみてください。見つめあい、互いのつらさを聞きあいましょう。怒りと涙を許しあいましょう。今つないでいるその手のぬくもりを、日本中に、世界中に広げていきましょう。
私たちひとりひとりの、背負っていかなくてはならない荷物が途方もなく重く、道のりがどんなに過酷であっても、目をそらさずに支えあい、軽やかにほがらかに生き延びていきましょう。
コメント:27
- 宝珠山 継男 2011年9月20日
感動と怒りで涙が出ました。
原発は絶対に廃止しなくてはなりません。
小さな個人の力を結集して、巨大な利権悪の巣窟である原発をなくしましょう!- サクラダフミコ 2011年9月21日
涙が出ました。
自分がどうしなくちゃいけないか、
真剣に行動します。- へびいし郁子 2011年9月21日
類子さん、お疲れ様でした。そしてありがとうございます。類子さんの静かな、そして落ち着いた語り口、ひとつひとつの言葉が胸をうちます。
どなたか5カ国語に翻訳して外国の方にも伝えて下さい。よろしくお願いします。- 田中喜久親 2011年9月21日
類子さん 有り難うございます!
僕も、原発事故後、国、マスコミ、あらゆる体制側に所属するものは、自覚有る無しに拘らず、保身に心を奪われ、ますます、社会を腐らせ、不幸に陥れているのだという現実を強く感じています。怒りというエネルギーをぶちまけたいけど、それでは解決出来ないことを薄々感じています。
気がつき、勇気を出して、類子さんの様に発信し手を繋ぐことが大事だということだと思います。
勇気を出して、命を削って、発信して下さり、本当に有り難うございます。- やなぎ 2011年9月21日
walk9でお世話になりました岩手のやなぎです。今は札幌にいます。
類子さん、素晴らしい言葉をありがとうございます。
そして、このような事態になるまで/なっても、原発に依存する社会を変えられなくてごめんなさい。この挨拶を、脱原発ネットワーク・北海道のサイト上でシェアさせていただきたいのですが、転載してもよろしいでしょうか?
- 橋本真一 2011年9月21日
操作を間違いました。失礼しました。
郡山出身です。高松市でハラハラしながら故郷の事を想っています。「死の街」どころか、放射能の海に沈んだのだとおもいます。一刻も早く脱出して欲しい、せめて子ども達だけでも。そのためにできる事は 何かと考えています。
それが無理ならせめて内部被曝を少しでも減らす方法を考えましょう。心はいつも故郷の福島・郡山にいます。聴いていて、悔しくて泣いてしまいました。- 丸森あや 2011年9月21日
類子さん、ありがとうございます。
つながっていきましょう。やらなくてはならないことのあまりの膨大さに
ときどき、絶望しそうになります。
悲しみにとらわれて動けなくなることもあります。
それでも、やらなくてはならない。
自分のなかに、わずかでも希望を見つけて。類子さんの言葉に励ましていただきました。
ありがとう。- 山田明子 2011年9月21日
3歳の娘と、イギリス人の夫とともに、ステージ近くで聞きました。この歴史的なスピーチに震え、涙が止まりませんでした。3歳の子の未来をどうして守っていこうか途方にくれていましたが、励まされました。自信を取り戻さなければ、と。
- 浜田正博 2011年9月21日
学童疎開中に我が家を米軍の空襲で焼かれて家なし子になり、両親の疎開先で作り方を覚えた草履を
原発に住まいを追われた福島のみなさんに想いを寄せて
いつか役に立つと作っている1935年生まれの男性です。- おりひめさま 2011年9月21日
涙が出てきた・・県外の人が言うより何倍も力あります。
嬉しいです。日本中に非常にヤバい原発いっぱいあります。もう福島だけの問題じゃないと思います。世界中の人間の意識革命から・・もう時間の猶予はないような気がします。- 浅見肇 2011年9月22日
素晴らしいスピーチをありがとうございました。
私自身も被曝者であるという事実を胸に刻み、この想いを共有し表明する仲間を増やして行きたいと思います。- 熊谷敬子 2011年9月22日
類子さん、スピーチ読みました。会場での堂々とした類子さんが思い浮かび、またまた感激でした。
ありがとう。
たくさんの人にこのメッセージを伝えます。悔んでばかりいられませんね。
一人ひとりが力を出し合って、
つながり
できることをなんでもやりましょう、
軽やかにほがらかに生き延びるために。- 吉沢敬子 2011年9月22日
・真実は隠されるのだ
・国は国民を守らないのだ
このことをずばっとおっしゃってくださる武藤さんに感謝します。
みなさんとつながって、力強くすすんでいきたいです。- 小笠原公子 2011年9月23日
ご無沙汰しています。
19日はじっくり聞くことができなかったのですが、読ませていただき、尾鮫での出会いを思い出していました。胸をつかれます。20代前後の学生たちとシェアさせていただきました。- 橋本ふじ子 2011年9月27日
r類子さん!ご無沙汰しております。
盛岡のふっちゃんです。
スピーチ読ませていただきました。あなたらしい言葉で、あなたらしい柔らかな所作と、あなたらしい、柔らかく、
あたたかい声で、聞くものたちへの不安や恐れを希望へと繋がる真の勇気を与えたに違いないと思います。
盛岡でもこの言葉をコピーさせていただき一人でも多くの人達に福島の現状を伝えたいと思います。
ありがとう!類子さん!あいしているよ。
- H.N 2011年9月27日
感動しました。
妻と娘にも聞いて貰いました。
長期にわたり、取り組まれているんですね。
足元にも及びませんが、「原発ゼロをめざす署名」を少々集めました。
一服してましたがまた集め始めなくてはと思わされました。
たいしたもんです。
聡明な、粘り強い方々!!万歳!!- 堀泰雄 2011年10月11日
私は、国際語エスペラントをやっています。大震災後、最初の一ヶ月は毎日、その後は週に2-3回、日本の状況を世界にエスペラント語で発信しています。それはさまざまなメーリングリストに転載され、たぶん世界中の5000人のところに届いていると思います。大震災についての私のレポートは、エスペラント語の本にもなりました。
9月19日のことを報告しようと、U-tubeを見ていて、武藤さんのスピーチに出会いました。感動しました。今エスペラント語に訳し終わったところで、これから世界に送り出します。フランス、中国で、たぶん翻訳して、メーリングリストに載せるでしょう。
エスペラントを知りたい人は、「エスペラント」で検索して日本エスペラント学会のホームページを見てください。世界に大勢のエスペランチチストがいて活動していることにびっくりすると思います。本当に役に立つ、平和の言語です。ちなみに私はもと英語の教師ですが、英語は役に立たないばかりか有害なので、今はエスペラント三昧の生活です。- 筒井淳子 2011年11月23日
デモで実際に武藤さんの演説を聞かせて頂きました。
武藤さんの優し〜い声で語られ、私は自分の思いと重なり、オイオイ号泣してしまいました。関東で子育てをしておりますが、周りとの隔たりを感じたり、放射能対策に本当に苦労しています。
福島を思うと胸が張り裂けそうになります。
武藤さんの優しい素晴らしい演説が心の支えです。
本当にありがとうございました。
あきらめないで、ほがらかに、努力していきます!- 北沢美知・エンゲル 2012年1月6日
素晴らしいスピーチですね。原発問題を巡り、日本人が受け続けている屈辱を極限から見通す明晰さと、“にもかかわらず”生きようとする前向きな姿勢に人間の深い尊厳を感じ、涙が出ました。
私は足掛け15年ドイツに住み、こちらで反原発運動に加わり出して約10年になります。私が住む北ドイツのリューネブルクという町は、北18kmにドイツで最も古く大規模で危険だといわれたクリュメル原発を控え、さらに東60km(かつての旧東独との国境付近)に全独の核廃棄物貯蔵施設を持ちます。福島原発事故後、クリュメル原発の永久停止が決まりましたが、そうした事情から、反原発運動の盛んなドイツの中でも、最も運動の盛んな地域です。
2010年秋より、ドイツの多くの都市では毎週月曜日の夕方に反原発デモが催されています。リューネブルクも例に漏れません。2011年最後のデモのために、武藤さんのスピーチをドイツ語に翻訳し朗読させていただきました。翻訳原稿は以下からダウンロードできます。
http://www.bank-einbruch.de/antiatom.htm
(最下欄、”Ruiko Muto`s Rede”をクリック)ドイツ人の胸にも深く響いたようで、この周辺ではすでに、3月に予定されている“福島原発事故一周年・反原発デモ”への呼びかけとして使われています。“原発をなお進めようとする力が、垂直にそびえる壁ならば、限りなく横にひろがり、つながり続けていくことが私たちの力”-ドイツの仲間たちもつながります。素敵なスピーチをありがとうございました。
- 長原千代 2012年3月23日
武藤さん、貴女のスピーチに胸が熱くなり涙が溢れ心にズシンと響きました。深く尊敬の念を覚えます。貴女の優しい語り口とは反対に、心の底から誠実に訴える力強いものに感動しました。貴女の声をより多くの人々に伝えたく、イタリア語に訳しました。イタリアに住んでいても、3.11以来日本人としてなすべき事は何かを考え、イタリアと日本の架橋となるべく、同じくイタリアに住む友人と『朋アミーチ』というサイトを結成しました。手をつなぎ輪を広げていきましょう。ありがとうございます!翻訳はこちらの方をご覧下さい。http://www.tomoamici.net/
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