バイオリン盗:3万人の“大捜査” ネットで広がる協力の輪

毎日新聞 2012年09月18日 大阪夕刊

盗難被害に遭ったバイオリンを探す海道久恵さん(右)と兄の清原邦仁さん
盗難被害に遭ったバイオリンを探す海道久恵さん(右)と兄の清原邦仁さん

 ◇バイオリン盗を追え

 「サントリー1万人の第九」の指導者やオペラ歌手など5人全員が音大出身の音楽一家がフェイスブックやツイッターなどネット上の「口コミ」も駆使し、盗まれたバイオリンを探している。約3万人がネットへの投稿を読み、多くの人が転載して自分の友人らに知らせた。また、ネットオークションなどでの転売に目を光らせたり、楽器店などへのチラシ配布に協力したりする人も相次いでいる。【稲垣淳】

 被害者はバイオリン奏者で大阪府立高校非常勤講師(音楽)の海道久恵さん(28)=大阪市阿倍野区。8月26日夜、車を止めた大阪市中央区の駐車場で後部座席の窓が割られ、1883年のフランス製バイオリンや弓、ビオラ(計約500万円)が盗まれていた。

 父清原浩斗さん(63)=同府吹田市=は同府合唱連盟理事長で1万人の第九を指導。母は声楽家、兄はオペラ歌手、姉もバイオリニストだ。盗まれたバイオリンは小学5年の時に買ってもらい、使い続けてきた。十数年前、家族で1週間旅行した際も、空き巣を心配して持っていった。今回は、左右の車との間隔が狭く、外に出せなかったという。

 実家でのだんらんの場は防音付きの演奏室。父がピアノを弾きながら懐メロを歌い出すと、久恵さんたちがバイオリンで音色を合わせるなど、一家のコミュニケーションを楽器が媒介。家族の思い出の場面に、いつもこのバイオリンがあった。

 警察に通報後、一家で音楽仲間や自分の生徒たちに協力を依頼。「楽器を探しています!」と写真を載せたチラシも2万枚作製し、転売防止のため楽器店などに配った。ネットもフル活用。兄邦仁さん(37)がブログに「お願いです。盗んだ人は指紋を拭き取り、(盗んだ)免許証の住所に送って下さい」と書き込むと、閲覧者が初日だけで約5000人に。フェイスブックに投稿すると、自分のサイトに転載する人、それを読んでさらに転載する人が続出。元の投稿へのアクセスは既に2万人を超えた。

 投稿を見た久恵さんの音大の同級生(ドイツ留学中)が大阪府の母に頼んで手伝うなど、チラシ配布への協力者も約100人に。面識のなかった大阪市の写真家、谷口正彦さん(45)もネットで投稿を読み、配布を分担。「長年使い慣れ自分仕様になった道具、思いがこもった道具を失う痛みは分かる」という。久恵さんは「こんなにも多くの人が協力してくださり、本当にありがたい」と話している。

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