中国:焼身「扇動」と厳罰 チベット僧拘束 さらなる反発の可能性
毎日新聞 2012年12月11日 東京夕刊
【上海・隅俊之】中国国営新華社通信は9日、チベット族8人に焼身自殺をするようそそのかし、うち3人を死なせたとして、四川省の警察当局が同省アバ・チベット族チャン族自治州アバ県のチベット族僧侶(40)とおい(31)を拘束したと伝えた。
中国政府は、チベット族居住区で相次いでいる抗議の焼身自殺をチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世らによる扇動と主張しているが、こうした厳しい姿勢が中国政府のチベット政策に対するチベット族のさらなる反発を呼ぶ可能性もある。
新華社によると、僧侶は09年2月以降、「焼身自殺は教義に反しない」「自殺者は英雄」などと訴え、8人に自殺するようあおり、3人が死亡したとされる。焼身自殺を図ろうとしているチベット族の写真を事前に撮影し、自殺者の情報を海外に伝えることで、その名誉を高めることができると話していたという。記事は僧侶がダライ・ラマ14世のグループの指令を受けていたと主張している。
2人が拘束されたのは8月中旬だったが、新華社の報道はその約4カ月後。中国共産党機関紙、人民日報系のニュースサイト「人民網」は新華社の記事配信前の9日午前、「焼身自殺を扇動したり支援したりした場合、故意殺人罪が適用される」との最高人民法院(最高裁)の見解を伝えていた。同じ日に記事を配信することで、当局側が焼身自殺に対して厳しい姿勢で臨むとの意思表示をしたものとみられる。
◇16歳少女も自殺
10日の新華社によると、青海省黄南チベット族自治州で9日、16歳のチベット族の少女が焼身自殺した。米国の海外向け放送、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、少女は火を付けた後、「ダライ・ラマ(14世)を支持する」「チベットに自由を」などと叫んだ。少女が自殺した後、チベット僧ら3000人以上が現場で中国当局に対する抗議活動をしたという。中国政府に抗議する焼身自殺が相次ぐようになった昨年以降、焼身自殺を図ったチベット族は96人に上っている。