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実効性を伴う監査で市場の信頼高めよ

2012/12/12付
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 公認会計士が企業の財務諸表を点検する監査業務について、金融庁の企業会計審議会監査部会が改革案をまとめた。オリンパス事件のような損失隠しの再発を防ぐことが目的だ。

 決算に関する不祥事は海外でも増えつつあり、監査改革は世界共通の課題になっている。粉飾を効果的に封じ込める監査を確立し、日本の資本市場への国際的な信頼を高めたい。

 改革案は監査法人に対して、決算操作の疑いが濃厚な企業を抜き打ちで監査するよう求める。粉飾リスクの判断基準として「赤字が続く」「オーナー支配が強い」といった企業類型を明記し、抜き打ち監査を発動しやすくする。

 不正をはたらく企業は定期監査の日程にあわせて帳簿や在庫をとり繕い、粉飾を隠すのが通例だ。抜き打ちで実施すれば、隠蔽を難しくする効果が見込める。

 改革案はさらに、監査法人が交代する際の引き継ぎの充実をあげる。粉飾に走る企業は監査法人を交代させることが多い。残念ながら前任の監査法人がどの程度までリスクを認識していたかなどの情報は、守秘義務の壁もあり、十分に引き継がれていない。

 監査基準で粉飾リスクなどにも引き継ぎ範囲を広げることにより、後任法人は厳しい姿勢で問題企業への監査に臨める。

 一連の監査改革はオリンパス事件で判明した制度上の不備をただすという意味で、前進といえる。ただ一方で、制度を細かく直すだけでは監査の質を高められないのも事実だ。

 監査人には検察のような強制捜査の権限がない。抜き打ち監査を促し、引き継ぎを充実させても、不正の証拠発見には限界がある。手続きを細かく定めるほど監査が形式主義に陥り、不正発見の機能が鈍る恐れもある。

 制度の限界を補うには、監査人が粉飾の端緒をつかむための専門性を高め、体制を整えることが必要だ。通常の監査とは別に、粉飾の疑いがある企業を専門に担当する部門の増員を検討する大手監査法人もある。こうした取り組みの広がりが、監査の実効性を高めるうえで欠かせない。

 ニューヨーク市場に上場する中国企業の不正決算を受け、米国でも監査改革の機運が高まっている。海外の改革例も参考に、日本も不正を絶つための取り組みを今後も続けるべきだ。

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