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2012年12月12日(水)付

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総選挙・税制改革―豊かな人への課税を

消費税をめぐって、民主、自民、公明の3党は5%の税率を2段階で10%へ引き上げ、その税収を社会保障にあてる法律を成立させた。他の政党の多くは、消費増税の凍結や撤回を訴え[記事全文]

国民審査―司法考えるいい機会に

衆院選と一緒に、最高裁裁判官の国民審査がおこなわれる。辞めさせるべきだと思う裁判官に×をつける手続きだ。どう判断したらいいのかわからない。形骸化している。そんな疑問や批[記事全文]

総選挙・税制改革―豊かな人への課税を

 消費税をめぐって、民主、自民、公明の3党は5%の税率を2段階で10%へ引き上げ、その税収を社会保障にあてる法律を成立させた。

 他の政党の多くは、消費増税の凍結や撤回を訴える。だが、高齢化で膨らみ続ける社会保障の財源をどう手当てするのか。筋の通った説明がなければ「無責任」のそしりを免れない。

 民、自、公3党も、消費増税の決定で一仕事終えた気になってもらっては困る。

 自公政権時代から政府が掲げる「2020年度には基礎的な財政収支の赤字をなくす」という目標の達成は、10%への消費増税でも困難だ。

 税収が自然に増えるよう、経済の活性化に努めるのは当然だが、今後も増税を検討していかざるをえない。税制の全体像をもっと語らねばならない。

 待ったなしなのは、消費増税に伴う「ひずみ」の是正だ。

 消費税には、食料品や日用品の支出割合が高い低所得層ほど税負担が重くなる「逆進性」がある。3党はそれを和らげる具体案を決めないまま選挙戦に入った。早急に詰めてほしい。

 さらに問題なのは、3党が所得税と相続税の見直しを棚上げしたことだ。

 広く薄く課税する消費税は世代を超えて国民全体が負担し、税収も安定しているため、皆で支え合う社会保障の財源にふさわしい。

 一方で、所得や資産が多い人により多くの負担を求める「再分配」も、税制の重要な役割である。財政の厳しさも踏まえれば、所得税や相続税の強化は欠かせない。

 政府・民主党は、所得税で現行40%の最高税率を45%にする案を、相続税では課税対象から差し引ける控除を縮小しつつ税率を全体的に引き上げる案を示したが、自民党が反対し、先送りされたままだ。

 3党には「さらなる負担増の話などできない」との空気が根強い。景気は後退色を強めており、「消費増税だけで手いっぱい」との声も多い。

 しかし、消費税率を上げる以上、豊かな人により多くの負担を求めるのは当然である。そうした姿勢を示すことは、消費増税への国民の理解を深めることにもつながるはずだ。

 働く現役層の生活が厳しくなっていることを考えると、とくに相続税の課税強化に力点を置くべきだろう。

 亡くなった人の4%余りでしか納税されていない現状を改め、もっと広く、より多くの負担を求めていく必要がある。

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国民審査―司法考えるいい機会に

 衆院選と一緒に、最高裁裁判官の国民審査がおこなわれる。辞めさせるべきだと思う裁判官に×をつける手続きだ。

 どう判断したらいいのかわからない。形骸化している。そんな疑問や批判を寄せられながらも、15人の「憲法の番人」を監視し、主権者である国民のコントロールの下におく重要な制度として、歴史を重ねてきた。

 配られる審査公報、新聞の特集記事、裁判所のホームページにのっている裁判官の自己紹介文や関与した判決の全文など、判断材料は実はかなりある。

 それらに目を通して、一人ひとりを採点するのはもちろん、司法がはたすべき役割や立法・行政との関係などを考える機会にしてはどうだろう。

 審査をうけるのは、前回の総選挙の後に任命された10人だ。この3年あまり、最高裁はどんな道を歩んできたか。

 衆参両院の一票の格差について、これまでにない厳しさで是正をせまった。日の丸・君が代裁判では、内心の自由を尊重する立場から、起立命令に反した教員へのいきすぎた処分に歯止めをかけた。国民が刑事裁判に参加することの意義をていねいに説き、裁判員制度を合憲とした判決もあった。

 もちろん万人が満足する裁判などあり得ない。だが総じて、憲法の精神をくみ、多くの国民が大切に考えていることを踏まえた判断をしてきた。そう評価していいのではないか。

 一方で「裁判官の顔が見えない」との声は厳としてある。

 なぜその人物が最高裁の裁判官としてふさわしいと考えたのか。任命権をもつ内閣はもう少し踏みこんで説明すべきだと、私たちは社説で求めてきた。

 国民の理解と支持に裏打ちされてこそ、行政や立法をしっかりチェックできるし、裁判に対する国民の信頼も高まる。

 内閣の下に、国会議員や有識者でつくる任命諮問委員会を設けてはどうかとの案もある。

 検討に十分値するが、運用をあやまると、政治が過度に介入するなどして、司法の独立を危うくするおそれもある。ねじれ国会におけるさまざまな人事の混迷や、政治主導をはき違え、権力分立についての根本的な理解を欠く議員の言動などを見るとなおさらだ。

 それぞれの方法の光と影の両面に目配りしながら、議論を深めていく必要があるだろう。

 国民と裁判官とが、適度な緊張感を持ちながら結びつく。この国の民主主義をより確かなものにしていくために、前向きな姿勢で審査にのぞみたい。

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