少子化が深刻なシンガポールで先月流れたCMです。
独立記念日の夜の過ごし方を提案し、話題になりました。
「今日は国民の日。
みんなで義務を果たす時だ。
だけど演説でも花火でもパレードのことじゃない。
さあ、今夜は子作り、子作り。」
シンガポール政府は、子どもを出産しやすい環境を作ろうと、有給の出産休暇制度を4か月にまで拡大したり、日本円で最大
40万円を支給する出産一時金の制度を設けるなど、対策に取り組んできました。
さらに、結婚を促そうという取り組みも進んでいます。
政府が設けたこちらのお見合いサイトでは、
独身の人が登録するとパーティーなどの案内が届きます。
「カモ~ン」
これは政府の少子化対策に協力してきた名物医師が、恋愛や結婚、そして出産に関心を高めて欲しいと始めた女性向けの情報番組です。
出産に欠かせない健康な身体作りに役立つ「ラブ・サラダ」という料理のレシピを紹介。
出産の悩みを解決するスマートホンのアプリも開発中です。
Dr.ラブ
「これは赤ちゃんを望んでいる人たちのためのツールです。
出産前の食べ物やリラックスの方法などを学ぶことが出来ます。
子づくりについての情報を友人と共有することで少子化対策になるのです。」
しかし、こうした対策にもかかわらず、少子化に歯止めがかかりません。
その要因の一つとして指摘されているのが女性の社会進出です。
吉岡記者
「中心部にあるビジネス街です。
ここを歩く人たちを見ますと男性と女性の割合というのはほとんど変わりません。」
徹底した能力主義のシンガポールでは、男女の分け隔てなく優秀な人材が登用され、経済成長の原動力となってきました。
働く女性の8割あまりはフルタイムの正規雇用。
およそ4割の日本を大きく上回り、女性が企業の要職につく割合は、アジアでも飛び抜けて高いといわれます。
一方、女性のキャリア志向が強まるとともに、結婚や出産は後回しになりました。
一昨年、政府が行った調査によりますと、20代後半の女性で独身の割合はこの10年で14ポイント増え、54%にのぼっています。
晩婚化が進行しているのです。
市民
「シンガポール女性は仕事が大事なの。
子どもは仕事の妨げになるわ」。
「この国で子どもを育てるのは簡単ではありません。
子どもが多いと、最善なものを与えられません。」
ファッション雑誌の記者として働くシャーメイン・ホーさん、33歳。
この業界で働いて8年あまり、現在はシニアライターとして活躍しています。
残業や深夜勤務は日常茶飯事、休日に自宅で記事を執筆することもしばしばです。
将来は独立し、会社を興すのが夢です。
来年(2013年)初めに結婚を控えるホーさん。
しかし、仕事を続けながらの出産、子育てに不安を感じています。
シャーメイン・ホーさん
「シンガポールでは子どもを持つのが難しいといわれるけれど、それはお金の問題だけじゃなくて仕事が犠牲になるのが問題なの。」
ホーさんの婚約者
「彼女がキャリア志向なのは良いことだし、私に何か起きても彼女が家計を支えることが出来ます。」
いつかは出産もしたいと考えていますが、同時に頭に浮かぶのは、シンガポールの厳しい競争社会です。
シャーメイン・ホーさん
「定員100人の大学に1000人が応募しているような状態で国中で競争しているわ。」
競争が激しさを増すなか、「いくら費用がかかっても子どもに高いレベルの教育を受けさせたい」という親は以前より増えているといわれます。
ホーさん自身も同じ考えです。
シャーメイン・ホーさん
「子どもには出来るかぎり最高の環境を与えるのが親の責任だわ。」
独立という自分の夢を追いかけながら、出産もして、子どもには英才教育を授ける。
その両立は容易ではないと、ホーさんは感じています。
シャーメイン・ホーさん
「理想は5人の子どもが欲しいけど、理想と現実は違うからせいぜい2人までかしら。」
吉岡記者
「仕事を続けながらどうやって子育てしますか。」
シャーメイン・ホーさん
「今は何も考えたくないの。
将来のことを想像すると、とても怖いわ。」