その朝、3人の男たちは自ら望んでこの地にやってきた。
故郷・敦賀の国を後にし、天下分け目の戦いに参加するために。そう、死にに向かうのではなく、生き続けていくために彼等はこの地にやって来たのだった……。

 慶長五年九月十五日。
その朝、関ヶ原は濃い霧に包まれていた。今、まさに日本史上最初で最後の大戦となった関ヶ原の合戦がはじまろうとしている。
西軍陣営の最前線には、この合戦に参加しようと手に手を取り合って故郷・敦賀を飛び出した3人の若者の姿があった。
やんちゃで頭の回転がよくリーダー格のゴン(津田寛治)。冷静沈着で物静か、他の2人にとっては兄貴のような存在のロク(森下能幸)。そしておそらく最年長だろうが、ちょっと甘えん坊でおっとりしたマタ(田中要次)。幼馴染みの3人は同じ小さな村の百姓の小伜だった。彼らはそれぞれ胸の奥深くに“ある思い”を秘めていた。そしてそれをお互い決して明かすことはなかったのである。
何故、彼らは命を賭けてこの戦に参加したのだろうか?己のため、家族のため、それとも愛する人のため?天下分け目の決戦を目前に控え、彼らの胸中に去来するのは……。

 さあ、霧が晴れてきた。
もうすぐ開戦を告げる鉄砲の銃声の音が、山間に鳴り響く。

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