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【肥田美佐子のNYリポート】世界が右傾化日本に「ノー」 総選挙を前に

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 最近、欧米メディアで、「Japan(ジャパン)」の5文字をたびたび見かけるようになった。通常なら、ツイート・ゼロも珍しくない日本の政治のニュースが、かなり読まれている。報道数も従来より多い。マイナーなオンラインメディアまでが日本について論じている。なぜか。

 沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)に続き、石原慎太郎・前東京都知事や橋下徹・大阪市長、安倍晋三・元首相の動向など、ナショナリズムの台頭を懸念してのことだ。日本では、軍事大国化防止と平和推進が務めであるはずのメディアの中に、彼らを持ち上げ、はやし立てるようなケースも見受けられるが、欧米では、日本社会右傾化の兆しとして警戒されている。

 東日本大震災では、国民の忍耐強さや誠実さ、秩序などに世界中から称賛が集まった。だが、長期低迷する経済を含め、今や一転して、要注意の存在として、注目されているのだ。

 藤崎一郎駐米大使が首都ワシントンでの講演会で反論を試みたとされる英誌『エコノミスト』(9月22日号)の特集「アジアは、これら(尖閣諸島)をめぐって本当に戦争に突入するのか――諸島をめぐる争いは、同地域の平和と繁栄への重大な脅威」は、12月7日現在、オンライン上で約200のツイートと4100の「いいね!」、2273件のコメントを集めている。

 また、同誌10月6日号の「日本のナショナリズム――ポピュリスト(大衆迎合主義者)に気をつけろ<迎合するメディアの追い風を受け、一握りの国粋主義者が、日本沿岸を超えて危険な影響を及ぼしうる>」も、ツイート349、「いいね!」が499という人気ぶりである。コメントも451件と、日本ネタとしては異例の大ヒットだ。

 「ポピュリストに気をつけろ」によれば、敗戦以来、アジアの平和と繁栄の力強い源泉となってきた日本が、保守派さえも懸念を抱く、石原前都知事の尖閣購入案という右派的ポピュリズムで中国の怒りを買い、かき回されているという。安倍元首相の自民党総裁就任により、そうした極右的見解が、今や国政の本流にまで流れ込む可能性があると指摘する。

 維新の会などの第3極を論じた英紙『フィナンシャル・タイムズ』(11月19日付電子版)では、両者とも強烈な個性で知られ、領土問題や原発など、カギとなる政策でズレのある橋下市長と石原氏の連携について、上智大学の中野晃一氏(政治学)の弁を借り、「真の問題は、政策の違いよりもエゴのぶつかり合いだろう」と結論づけている。

 米ブルームバーグニュース(11月12日付電子版)も、言い得て妙だ。コラムニスト、ウィリアム・ペセック氏は、個人的見解という但し書きは付いているものの、「右翼日本、19世紀に帰る」と題する記事の中で、日本の指導者たちは、軍事大国化へと突き進んだ1800年代と決別できないようだと、痛烈に批判する。

 次期首相になるであろう安倍氏と石原氏、橋下氏という三大政治家は、機会があふれているダイナミックなグローバル環境に飛び出していくのではなく、国粋主義の下で、日本の内向き化という誤った方向に進もうとしていると、ペセック氏は残念がる。

 米国人エコノミストなどに取材すると決まって言われることの1つに、日本の「内向き志向」があるが、次期国務長官の就任も取りざたされる知日派のハーバード大学のジョセフ・ナイ教授も、『フィナンシャル・タイムズ』への寄稿「日本のナショナリズムは、弱さの表れ」(11月27日付)で論じている。

 安倍、石原、橋下3氏や日本の世論の右傾化について、同教授は、「真の問題は、日本が国際社会で過度に力を示そうとしているのではなく、弱く、内向きになっていることかもしれない」と分析。20年に及ぶ低成長や財政赤字、米国の大学に留学する日本人が、2000年当時の半分以下に落ち込んだことを挙げながら、「日本は、偉大な力強い国であり続けたいのか。それとも、甘んじて二流の地位へと流されるのか」と、問いかける。

 経済のかじ取りについても辛らつだ。米国の経済専門テレビ局CNBC(12月4日付電子版)は、6年間で、もうすぐ7人目の首相が誕生する日本は、長きにわたって金融緩和を行いながら、いまだに停滞から抜け出せないどころか縮小していると指摘。毎年、10%ずつ膨らみ、国内総生産(GDP)比で220%余りに達した先進国中最悪の公的債務残高を例に挙げ、欧州も米国も日本の状況に比べたら、まだ序の口だが、日本を警報とすべきだという。

 どれも耳に痛い指摘ばかりだが、特に政治家は、警告として肝に銘じるべきだ。ポピュリズムで国民を手なずけようとしても、国際社会の目はシビアである。経済にしても、根拠のない楽観論は、国民の問題認識の目をくもらせ、日本の競争力をそぐだけだ。

 日本からは、「内向きで、どこが悪い。ぜいたくや成長さえ望まなければ、まだまだ食べていけるのだから、今のままでいいじゃないか。国際社会でのプレゼンス(存在感)を高めて何の得がある?」といった声も耳にするが、企業、個人を問わず、食うか食われるかのグローバル化時代にそんな悠長なことを言っていては、現状維持もおぼつかない。

 最大の経済成長圏であるアジアの安定が損なわれれば、状況に応じて交渉国や戦略などを変える東アジアでのピボット外交で経済的恩恵を得ようとする米国にとっても厄介だ。日中関係の悪化や日中韓のあつれきは、世界経済の足も引っ張りかねない。

 なにより日本は、福島の復興、原発・放射能問題、被ばくした人たちの長期健康管理という最重要任務を抱えている。40年にも及ぶ東京電力福島第1原発廃炉への技術的・人的・財政的算段や賠償金の確保すら、いまだにおぼつかない状況だ。そんな中、「国防軍」論議や防衛費のGDP1%枠撤廃などで、最大の貿易国である中国や他のアジア諸国を刺激し、国際社会を不安にさせることが、義援金やボランティア活動で応援してくれた世界の人々への答えなのか。

 「美しい日本」はけっこうだが、「強い」のは、経済と、復興と危機解決に向けた結束力だけでいい。

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肥田美佐子 (ひだ・みさこ) フリージャーナリスト

肥田美佐子

 東京生まれ。『ニューズウィーク日本版』の編集などを経て、1997年渡米。ニューヨークの米系広告代理店やケーブルテレビネットワーク・制作会社などにエディター、シニアエディターとして勤務後、フリーに。2007年、国際労働機関国際研修所(ITC-ILO)の報道機関向け研修・コンペ(イタリア・トリノ)に参加。日本の過労死問題の英文報道記事で同機関第1回メディア賞を受賞。2008年6月、ジュネーブでの授賞式、およびILO年次総会に招聘される。2009年10月、ペンシルベニア大学ウォートン校(経営大学院)のビジネスジャーナリスト向け研修を修了。現在、『週刊エコノミスト』 『週刊東洋経済』 『プレジデント』などに寄稿。『週刊新潮』、NHKなどの取材、ラジオの時事番組への出演、日本語の著書(ルポ)や英文記事の執筆、経済関連書籍の翻訳にも携わるかたわら、日米での講演も行う。共訳書に『プレニテュード――新しい<豊かさ>の経済学』『ワーキング・プア――アメリカの下層社会』(いずれも岩波書店刊)など。マンハッタン在住。 http://www.misakohida.com

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