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「新世界より」あらすじ・ネタバレ

2012.11.24 (Sat)|
【登場人物】
渡辺早季:本作の主人公である。町長の父と、図書館司書を務める母を持つ。210年12月10日生まれ。性格は好奇心旺盛で、危機的状況にも耐性がある。瞬には好意を抱いている。物語は早季の書いた手記という形で進行していき、いわば語り手である。

朝比奈覚:早季の幼馴染であり、ホラ話を吹聴する癖がある。瞬には劣るが、優れたサイコキネシスの使い手である。利根川上流に夏季キャンプに行った際、禁断の知識を得てしまい、早季とともに否が応にも"世界の秘密"を解き明かすことととなる。

青沼瞬:早季の幼馴染。非常に聡明で大人びている、面倒見の良い少年である。優れたサイコキネシス能力の持ち主で、いずれは集落のリーダーとして嘱望されていた。

秋月真理亜:早季の幼馴染であり恋人でもある。赤い髪の美少女である。

伊東守:早季の幼馴染。少なからず臆病であり、絵を描くことが得意である。秋月真理亜に好意を寄せている。

鏑木肆星(かぶらぎ しせい):安全保障会議顧問。神栖66町で最強の呪力を持つ男。本気を出せば地球を真っ二つにすることができるとさえ噂されている。片目に2つずつ、合計4つの虹彩がある特異な遺伝的特徴を持つ。その目は360度の視界を持ち、遮蔽物をも見通せ、反応速度は通常の神経細胞の限界を遙かに超える。

日野光風:職能会議代表。鏑木と並ぶ強大な呪力者。性格は少々常軌を逸している。

朝比奈富子:倫理委員会議長。覚の祖母(正確には9代前の先祖)。彼女にしか使えない「DNAのテロメアを延長させる」という特殊な呪力により200年以上生きている。

無瞋(むしん):清浄寺の和尚。神栖66町でも最高の人格者。元・和貴園校長。

離塵(りじん):清浄寺の僧侶。西堂(教育を担当する最上位の役職)を務める。

遠藤:全人学級の教師で、早季たちの担任。通称「太陽王」。

スクィーラ / 野狐丸(やこまる):「塩屋虻」コロニーの奏上役を務めているバケネズミ。後に人間から「野狐丸」という漢字名を授けられる。弁が立ち非常に頭が切れる。女王から実権を剥奪しコロニー間の融合を推し進めることにより勢力を拡大。遂には人間に対して反乱を起こす。

奇狼丸(きろうまる):「大雀蜂」コロニーの総司令官であるバケネズミ。勇猛だが保守的な価値観のためにスクィーラと敵対するようになる。

【あらすじ】
舞台は、現代(21世紀初頭)から1000年後の日本。

「神栖66町」が主な舞台となる。人類は「呪力」と呼ばれる超能力を身に着けていた。注連縄に囲まれた自然豊かな集落「神栖66町」では、人々はバケネズミと呼ばれる生物を使役し、平和な生活を送っていた。町の中と外は、外から悪いものが侵入するのを防ぐ「八丁標(はっちょうじめ)」という注連縄によって隔てられている。子供たちは、決して八丁標の外に出てはならないと言いつけられている。

神栖66町に生まれた渡辺早季は、他の子供たちと同じく12歳で呪力が発現し、小学校「和貴園」を卒業して、呪力の訓練を行う「全人学級」に入学する。同級生の朝比奈覚・青沼瞬・秋月真理亜・伊東守と共に利根川上流に夏季キャンプに行った早季たちは、「ミノシロモドキ」を発見する。ミノシロモドキの正体は、先史文明が遺した「国立国会図書館つくば館」の自走型アーカイブであった。

「ミノシロモドキ」は、検閲されている先史について、早季にたちに以下のような知識を与えてしまう。
1) 呪力、すなわちサイコキネシス(PK)の存在は、西暦2011年に行われた実験によって初めて科学的に立証され、それ以降世界各地でPKを持つ能力者が確認されるようになった(最終的には世界人口の0.3%に達した)。

2) 当時のPKはさほど強力なものではなかったが、PKを用いた犯罪が頻発したことからPK能力者に対する弾圧が開始され、それに対抗するかの如く、より強力なPKを操る能力者が出現するようになる。能力者と非能力者間の際限のない抗争は、結果として旧来の社会体制の崩壊、現代文明の終焉をもたらした。

3) その後、安定的な時代が訪れるまでの間、東北アジアの人間社会は4つの集団に分化した。それらはPKの君主を戴く奴隷王朝、非能力者の狩猟民、PKを持ち家族単位で移動する掠奪者、先史文明を利用して細々とくらしていた能力者の4つである。この中で、先史文明を利用して細々とくらしていた能力者たちが生き残った。その生き残りたちの末裔が、早希たちだった。

4) 使えるエネルギーには事実上上限が無く、強力な呪力行使は核兵器の威力すらも上回る。そのため、同種間攻撃などが起こった場合には社会全体の崩壊も起こりうるため、それを避けるべく「攻撃抑制」と「愧死機構」が呪力を持つ人間の遺伝子には組み込まれた。
「愧死機構」(きしきこう)とは、同種である人間を攻撃しようとした際に作用し、そのことを脳が認識すると、無意識のうちに呪力が発動し、内分泌系に作用して眩暈、動悸などの警告発作が起こる(注:作中では、脳-副腎に作用する、とあったため、副腎髄質ホルモンであるドーパミンなどのカテコラミンが異常分泌されるため、このような症状が出現すると考えられる)。それでもなお、警告を無視し攻撃を続行した場合には、強直発作(注:低カルシウム血症によるテタニーによる。機序は不明だが、過換気による低カルシウム血症か?)、心停止により死に至る(注:最終的には、高カリウム血症による心停止すると記載あり。機序は不明だが、これも副腎皮質/髄質ホルモンによる作用か?)。

この時、清浄寺の僧侶・離塵が現れる。ミノシロモドキは破壊され、早季たちは暗示により呪力を凍結されて連行される。連行中、早季たちは人間に服従しない外来種のバケネズミの襲撃を受ける。離塵はこれを退けるも、その後現れた風船犬の爆発に巻き込まれ死亡する。呪力を失った早季たちは逃走を図るが、早季と覚の二人はバケネズミに捕らえられる。二人はそこからなんとか脱出し、「塩屋虻」コロニーのバケネズミ・スクィーラに救われる。早季たちを捕らえたのは外来種の「土蜘蛛」コロニーで、塩屋虻と土蜘蛛は戦争中であることが判明する。

土蜘蛛の奇襲攻撃を受けた早季たちは、地中にあるバケネズミの巣の中で迷子になる。トンネルを歩いているうちに精神が朦朧としてくるが、早季は意識のレベルが下がった状態を利用して覚の呪力を復活させる。覚は呪力を使って巣穴から脱出し、土蜘蛛に反撃する。戦いを続けた覚は呪力の精度が落ち、撤退しようとする。撤退中に、「大雀蜂」コロニーの援軍が来て土蜘蛛を制圧する。

早季たちは、町の大人からの命令を受けてバケネズミが自分たちを始末するのではないかと恐れ、コロニーから逃走する。そして他の三人と合流を果たし、カヌーに乗って町に戻る。早季は瞬の呪力も復活させる。神栖66町に帰還した早季たちは、面談を受けるが、何らかの処分が下されることはなかった。その後、5人全員が呪力を取り戻すことに成功する。

2年後、早季たちは14歳になっていた。瞬の様子がおかしくなり、学校にも来ないようになる。瞬の家に行こうとする早季だが、家の周囲の動植物は異形と化していた。瞬は、自らが、呪力が異常漏出し無意識に周囲のものを異形化させてしまう「業魔」(橋本・アッペルバウム症候群の重篤期患者に対する俗称。パニック障害に類似した事象が脳内で起こり、無意識に呪力で周囲の生物・無生物を異形化させてしまう。異常化された生物のほとんどは、生命活動を維持できず死亡する)になったことを告げる。瞬は押し寄せる大地に沈み、命を落とす。

早季たち5人の班には稲葉良がいる。だが早季は、自分が知っていたのは良ではなく、他の誰か(瞬)だという違和感があった。早季たちは倫理委員会議長である覚の祖母・富子の呼び出しを受ける。早季は富子から、自分が後継者候補だと告げられる。

2月、守が突然家出する。彼の後を追った早季たちは、守が処分に怯えていることを知る。守と、彼の話を聞いた真理亜は町に戻らないことを決意する。早季は教育委員会の尋問を受け、富子の指示で、覚と共に二人を連れ戻しに向かう。

守と真理亜を探す早季たち二人は、バケネズミの「塩屋虻」コロニーにたどり着く。奏上役スクィーラは「野狐丸」という名を授けられていた。塩屋虻は大雀蜂と並ぶコロニーとなるまでに発展しており、覚はバケネズミへの不安を覚える。早季は真理亜の置手紙を受け取る。手紙には、守と真理亜は異常な町には帰らず、遠い場所へ行くと記されていた。

12年が過ぎ、早季と覚は26歳になっていた。早季は保健所でバケネズミの調査・管理を担当し、覚は妙法農場で働いていた。傘下コロニーへの襲撃事件をきっかけに、バケネズミの大雀蜂と塩屋虻コロニーとの間で戦争が起こる。安全保障会議では、力をつけたバケネズミへの懸念が示される。

町で夏祭りが行われる。すると、振舞われた酒を飲んだ者が死に、それを皮切りに町民たちは爆弾、矢、銃による襲撃を受ける。スクィーラ(野狐丸)率いるバケネズミが人間に反旗を翻したのだった。人間側も呪力を使い反撃し、町民は五人一組になってバケネズミの掃討を始める。その最中、早季と覚のグループのメンバーが呪力で殺され、バケネズミの切り札が「悪鬼」だと判明する。早季は、その容姿から、悪鬼が守と真理亜の子であると確信していた。野狐丸は、守と真理亜を襲撃して子供を攫い、「バケネズミ」として育てた。そして、その子どもに「お前はバケネズミだ。能力者どもこそ、敵である」と教育・洗脳したのだった。

早季たちは清浄寺へと避難する。そこで早季は、司書である母親からの置き手紙を受け取る。それによれば、1000年前に呪力を持つ者を殺すために作られた大量破壊兵器「サイコ・バスター」が、まだ使える状態で東京に存在する可能性があるという。早季たちは、清浄寺にいた大雀蜂コロニーの将軍・奇狼丸、鳥獣保護官の乾と共に東京に向かう。なんとか東京にたどり着くが、バケネズミの追手はすぐ近くまで迫ってきていた。

早季と覚たちは追手を警戒しながら、廃墟と化した東京の地下を進む。途中二手に分かれるが、早季のペアになった乾が水中生物から早季をかばい、命を落とす。早季は地上のビルの中で金庫を発見する。金庫の中には、「サイコ・バスター(中には、炭疽菌が充填されている)」の入った十字架があった。その後、覚、奇狼丸と合流する。

とうとう悪鬼の少年がすぐ近くまで迫り、サイコ・バスターを使うも、覚の身を案じて早希がサイコキネシスを発動してしまい、失敗する。その絶体絶命の状況で早季は、悪鬼の少年は実は「悪鬼」ではないと推測する。彼はバケネズミに育てられたため、攻撃抑制と愧死機構が人ではなくバケネズミに対して働くというものだった。作戦により、命を捨てた奇狼丸は人間に化け、悪鬼の少年の前に自ら姿を見せて攻撃させる。「同胞」たるバケネズミを殺してしまった悪鬼の少年は、愧死機構により死亡する。

早季たちは、バケネズミの反乱の首謀者・スクィーラを拘束して町に戻る。主力を失ったバケネズミの軍勢は瓦解し、反乱は完全に鎮圧された。報復裁判で、スクィーラには無間地獄の刑が課せられた。一ヶ月後、早季は戦後処理と町の復興に中心メンバーとして携わっていた。そこで覚は、バケネズミの遺伝子を調べて知った真実を告げる。

バケネズミの正体はネズミを進化させた生物ではなく、呪力を持たなかった人間が変えられた存在だったのだ。「愧死機構」を自らに組み込んだ能力者たちは、今度は非能力者たちに怯えることとなった。なぜなら、同じ人間である非能力者たちを殺害すると、「愧死機構」により自らが死んでしまうからだ。

一方で、非能力者たちは能力者たちを攻撃しても、その抑制は受けない。そこで、愧死機構が働かないよう、非能力者たちをバケネズミの姿に変えたのだった。醜い姿に変えることで、愧死機構が働かないようにしたのだった(なぜ、非能力者たちに愧死機構を埋め込まなかったのかというと、能力者たちが能力者たちを亡き者にしようとする際、バケネズミたちを利用したかったためである。非能力者たちに愧死機構を埋め込めば、そのような暗殺に使用できなくなってしまう)(注:その他、能力者の"処分"には、不浄猫などが用いられている)。

それから10年。覚と結婚した早季は子供を身ごもった。早季は新たな悪鬼や業魔の出現を危惧しつつも、未来への希望を抱いて手記を終える。「想像力こそが、すべてを変える」と添えて。



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