「ライバルは米国」という目論見は間違いだった!?
日本は今年5月に招致ブックをFIFAに提出したころから、最大のライバルは米国であると見ていた。その理由は、'10年のアフリカ大陸(南アフリカW杯)、'14年の南米大陸(ブラジルW杯)により、各大陸開催という大義に一応の区切りがついたことで、それ以降、FIFAはサッカーマーケットの再構築に主眼を置くと読んだからだった。
最有力と見られながら敗北した米国では、「オイルマネーに寄った」と、早くもFIFAを批判する論調が渦巻いている。潤沢な資金を有する新しいサッカーマーケットのロシアとカタールが選ばれたことは、日本がW杯招致の大筋の流れを正確にとらえていたとも言えるのだが、ギリギリまで米国有利と見ていたことで、ロビー活動の方向性が誤っていたともいえるかもしれない。
評価レポートは結果的に大きな意味を持たなかった。
そしてもうひとつ、決定的に読み違えたことがある。
FIFA視察団による立候補地の評価レポートが大きな意味を持つと見ていた点だ。
'02年からFIFA理事を務める小倉会長の経験上、開催地決定に関して最も影響力のあるのはFIFAの調査報告書だった。だが、今回はまったく違っていた。
カタールの総合評価は9つの候補地の中で最も低く、'22年の5候補の中で最低。ロシアは全体で2番目に低く、'18年の4候補の中で最低だったのだ。
スイスで田嶋副会長が「ホテルのロビーは魑魅魍魎の世界。これが本当のロビー活動か」と唸ったというが、さまざまな読み違えが露呈するのは、やはりゆゆしきことである。
W杯招致活動が周知されず国内の盛り上がりにも欠けた。
「早すぎる再開催」という問題点について、国外のみならず日本国内でも理解を得られないままに終わったことも残念だった。
日本サッカー協会は『JFA2005年宣言』で、2050年までにもう一度ワールドカップを開催し、優勝するという目標を掲げている。今回の立候補はここからの逆算でもあるのだが、周知不足によって国内の賛同を多く得られず、盛り上がりに欠けた。
現行のルールでは、開催地となった大陸はその後2大会の立候補はできない。
今回の結果(アジア大陸のカタールでの開催)を受け、日本が次に立候補できるのは'34年大会となった。その'34年には中国が名乗りを上げるという動きが既に出てきている。巨大マーケットを持つ中国が出てくれば敵う開催地はほとんどないだろう。今回の日本の立候補は、中国が手を上げる前に上げておきたいという理由も大きかったのだ。
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