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原発事故 科学者の対応を議論
12月8日 21時40分

原発事故 科学者の対応を議論

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、科学者や専門家による原子力安全の取り組みや事故後の対応を、学術の在り方に立ち返って話し合おうという日本学術会議の公開シンポジウムが東京で開かれ、今後の検討には人文・社会科学など幅広い分野の知識が必要だといった意見が出されました。

このシンポジウムは「原発災害による苦難と科学・学術の責任」をテーマに、日本学術会議の哲学委員会が開いたもので、会場には120人近くが集まりました。
シンポジウムでは、4人の研究者がパネリストとしてそれぞれの意見を述べました。

“安全が骨抜きに”

このうち、倫理学が専門で、専修大学教授の大庭健さんは、「原子力安全文化」ということばについて、「チェルノブイリの事故のあと、国際社会が獲得した教訓で、『原子力については安全を最優先にする文化』という意味だった。しかし、次第に、『原子力は安全だという宣伝がしみ込んだ文化』という意味にすり替わり、安全は骨抜きにされたのではないか」と指摘しました。

“幅広い知識が必要”

また、原子力工学が専門で、東北大学名誉教授の北村正晴さんは、「関係者の一人として重い責任を感じている」としたうえで、今後、検討すべき課題を、▽東京電力の組織的な問題や、▽当時の原子力安全・保安院など規制当局の能力、それに、▽いわゆる“原子力関係集団”の現状の、5つに分けて示しました。
そして、「これらを実践に結び付けるには、工学者や技術者だけでなく、人文・社会科学を含む学術の幅広い分野の知識が必要で、相互のコミュニケーションが課題になる」と述べました。

研究者の対応に批判も

会場の参加者からは「30代や40代の研究者に人文・社会科学の知識を教え始めるのではなく、大学で哲学や倫理を必修にすべきだ」といった意見が出ていました。
また、福島県浪江町出身だという男性から、事故のあとの研究者の対応について、「研究内容が、復興という一つのテーマに統合されていくと思っていたが、残念ながら、そのようにはならなかった。浪江町は研究者の作品ではない。バラバラに来ないでほしい」と批判していました。

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