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2012年12月9日(日)付

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北朝鮮ミサイル―発射は孤立深めるだけ

北朝鮮がまた、人工衛星を打ち上げるとしてロケット発射の準備をしている。失敗に終わった4月に続く、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験だ。中止を強く求める。[記事全文]

総選挙・原発政策―ゼロへの道筋を示せ

選挙戦も後半を迎える。各党は原発政策の見直しを掲げているが、有権者にとって判断基準たりうる中身になっているだろうか。残念ながら、まだ十分とは言えな[記事全文]

北朝鮮ミサイル―発射は孤立深めるだけ

 北朝鮮がまた、人工衛星を打ち上げるとしてロケット発射の準備をしている。失敗に終わった4月に続く、事実上の長距離弾道ミサイル発射実験だ。

 中止を強く求める。

 「平和的な宇宙利用」だと、北朝鮮は主張する。それが、先代の権力者、金正日(キムジョンイル)総書記からの「遺訓」だという。

 宇宙の平和利用は、本来どの国にも認められる。だがロケットの技術は、ミサイルと基本的に同じだ。国際ルールを破って核武装を進める北朝鮮が手にすれば、平和への脅威になる。

 北朝鮮は2009年にミサイル発射と核実験をし、国連安全保障理事会から「弾道ミサイル技術を使った発射」を禁ずる決議を受けた。

 今年4月の発射後には、衛星の打ち上げも深刻な決議違反だ、と安保理の議長声明で確認した。平和利用の名目でも、北朝鮮には発射が許されない。

 若い金正恩(キムジョンウン)第1書記の体制を固める狙いがあるとされるが、そうならば、何よりも国民生活の向上を急ぐべきだ。食糧不足が深刻なままで、ロケットを打ち上げて何になるか。

 金総書記の一周忌になる17日を意識した計画とすれば、考え違いもはなはだしい。国際社会から孤立して、国民が豊かになれるはずもない。

 米国と北朝鮮は今年2月、米側の食糧支援と引きかえに、北朝鮮がウラン濃縮をやめると合意したが、4月の発射で実現できなくなった。今回、日本と米国、韓国は北朝鮮が再び発射を強行すれば、金融制裁などの水準をさらに上げる方針だ。

 最大の後ろ盾となってきた中国は、習近平(シーチンピン)体制への移行を受けて、共産党幹部が訪朝したばかりだ。メンツは丸つぶれだ。

 中国は北朝鮮に自制を求めてはいるが、もっと厳しく働きかけるべきだ。対話が動かない間も北朝鮮は核開発を続けており、脅威は増している。

 韓国では大統領選が、日本では総選挙が控える。いずれの政権も、北朝鮮への不信感を強めて発足することになる。

 日本政府は、始まったばかりの北朝鮮との局長級協議を延期した。そして、コースを外れて落ちてきた場合に破壊できるよう、地対空誘導弾PAC3やイージス艦を沖縄などに配備した。

 前回は、政府が独自の発射確認にこだわり、自治体への連絡がおくれた。今回、米軍の監視情報だけの段階でも通報するよう見直すのは当然だ。冷静な準備とともに、国際的な協力をいかして対処すべきである。

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総選挙・原発政策―ゼロへの道筋を示せ

 選挙戦も後半を迎える。

 各党は原発政策の見直しを掲げているが、有権者にとって判断基準たりうる中身になっているだろうか。

 残念ながら、まだ十分とは言えない。

 最もあいまいな姿勢に終始しているのは自民党だ。

 原発を推進してきた党として何を反省し、どう見直すのか。「10年以内に持続可能な電源構成を確立します」と言うだけでは、無責任きわまりない。

 民主党をはじめ「脱原発」を掲げる側にも注文がある。

 原発ゼロへの速度を競う姿勢が目立つが、実際に原発を閉めていくうえで最大の課題は、「どうやって」の部分だ。

 大規模停電は避けなければならない。原発を止めた分、火力発電の燃料代負担が電力会社の経営を圧迫し続ければ安定供給に支障が出るおそれもある。

 かといって、電気代を一度に大幅にあげれば生活や経済活動を圧迫しかねない。立地自治体や環境問題への目配りも必要だろう。

 「即停止」を主張する政党は激変をどう乗り切るのか。実効性ある道筋を示すべきだ。

 日本未来の党は、一定の政策パッケージを明らかにしてはいる。だが、ゼロ達成までの間、手段としての「再稼働」を認めるのかどうかが不透明だ。

 民主党は「原子力規制委員会が安全と認めた原発を再稼働」「運転開始から40年で廃炉」といった条件を示す。ただ、これだけでは2030年代にゼロにならず、最終目標と矛盾する。ていねいな説明がいる。

 使用済み核燃料の処理についても具体的な言及が乏しい。

 原発を減らしていく以上、核燃料を再利用する核燃料サイクル事業は不要になるどころか、余剰プルトニウムを生み出すことで、核不拡散との関係で国際的な問題を引き起こす。事業は中止するしかない。

 ただ、再処理をやめれば、「資源」だった使用済み燃料は「危険なゴミ」になる。再処理を条件に施設や廃棄物を受け入れてきた青森県は、中止と同時に各電力会社に引き取りを求める姿勢を明らかにしている。

 各原発に持ち帰って保管するのか、ほかの手立てを講じるのか。今後は国がきちんと責任をもつ必要がある。これまでの再処理で生じたプルトニウムの管理・処分方法も含め、考え方を示すべきだ。

 残り時間は限られるが、各党とも、有権者が「選べる」レベルまで原発政策の中身を引き上げてもらいたい。

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