ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
現在位置は
です

本文です

「ペニーオークション」落札妨げ、手数料詐取

社員ら3人逮捕

 入札ごとに手数料がかかるインターネットの「ペニーオークション」で、大阪のネット関連会社社長、鈴木隆介容疑者(30)らが、入札参加者が落札できないシステムをサイトに仕組み、手数料をだまし取っていた疑いが強まり、京都、大阪両府警は7日、詐欺容疑で、この会社の社員ら3人を逮捕した。鈴木容疑者も再逮捕する方針。警察庁によると、ペニーオークションを巡る事件の摘発は全国初。

 運営側は、「ボット」と呼ばれる自動実行プログラムを悪用。事前に設定した金額に達するまでボットが自動的に入札を繰り返すシステムをサイトに仕組み、参加者の落札を妨害していたという。

 捜査関係者によると、鈴木容疑者らは、運営するサイト「ワールドオークション」が商品を落札できない仕組みだったのに、格安で落とせるように装い、今年夏頃、入札参加者2人から入札手数料として使う専用コイン(1枚75円)の購入代金を詐取した疑いがある。

 このサイトでは、商品の入札は0円から始まり、参加者が画面をクリックして入札するたびに、1円ずつか15円ずつ、価格が上がる。家電製品などが定価の最大99%引きで落とせるとうたっていたが、両府警が調べたところ、ボットが仕組まれ、参加者の入札があるたびに、ボットが自動的に応札し続け、参加者の落札はほぼ不可能であることがわかった。

 鈴木容疑者は10月、スマートフォンの電話帳から個人情報を抜き取るウイルスを潜ませたアプリを保管したとして不正指令電磁的記録保管容疑で京都府警に逮捕されていた。

サイト突然の閉鎖も

 定価5800円のゲームソフトが67万円――。

 あるペニーオークションサイトでの入札価格だ。店で普通に買えるゲームソフトなのに、参加者がここまで競り合って高値がつくのは不自然で、自動入札を繰り返す「ボット」の仕業、という指摘が、ネット上で相次いだ。

 ボットの存在を疑われたサイトが突然閉鎖した例もある。

 NPO法人「消費者支援機構関西」(大阪市)が東京のある運営会社のサイトを調べたところ、落札額と入札手数料を合わせた同社の売り上げが、商品の仕入れにかかる費用を大きく下回っていることがわかった。

 これでは赤字が出続けることになる。同機構は「商品は元々なく、手数料が目的で、ボットに落札させていた」と判断。同社は不正を否定したが、消費者団体訴訟を起こすと通告された後の9月、何の説明もなくサイトを閉じた。

 ネット犯罪に詳しいジャーナリストの井上トシユキさんは「ネットオークションは商品が安く買えると錯覚しがちで、競争相手が現れると『負けたくない』と現実社会以上に周囲が見えなくなってしまう。催眠商法と同じだ。ネットに甘い話はないと注意すべきだ」と指摘する。
ペニーオークション 

 国内では2009年頃から広まった。入札価格は参加者が自ら決めるのではなく、入札のたびに運営者が事前に定めた金額(1円単位など多くは少額)で上昇していく。参加者は落札の成否にかかわらず、1回入札するたびに数十円程度の手数料を運営者に支払う必要がある。

2012年12月7日  読売新聞)
現在位置は
です