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2012年12月8日(土)付

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総選挙・防災政策―素通りしていないか

津波をともなう地震がまた東北で起きた。首都を襲う直下型地震はいつ起きてもおかしくない。東海・東南海・南海地震への対策も急がれる。東日本大震災は、防災対策の重要性を、私た[記事全文]

敦賀原発―後回しの活断層リスク

原発の下に活断層があると、地震が起きた際に地面のずれで原子炉や安全装置が傾き、過酷事故につながりかねない。日本原子力発電(原電)の敦賀原発(福井県敦賀市)の断層は、活断[記事全文]

総選挙・防災政策―素通りしていないか

 津波をともなう地震がまた東北で起きた。首都を襲う直下型地震はいつ起きてもおかしくない。東海・東南海・南海地震への対策も急がれる。

 東日本大震災は、防災対策の重要性を、私たちすべてに突きつけたはずだった。

 だが、震災後に初めておこなわれる総選挙では、地震への備えについて争点はおろか論戦にすらなっていない。

 民主党はマニフェストに40項目の政策を掲げているが、防災政策は「地域の防災力を強化する」の1項目だけだ。

 中身をみると、首都直下型地震などを想定した避難場所を整備したり、住宅の耐震化の支援を拡充したりすることにとどまっている。

 震災からの復興に取り組んできた政権与党としては、薄っぺらにすぎないか。

 選挙後に連立を考えている自民、公明両党は公共事業に重点を置く防災政策を掲げる。

 自民党は政権公約で「国土強靱(きょうじん)化」を推し進めるために、スーパー堤防の建設や全国の道路網の整備などを盛り込んだ。

 公明党はマニフェストで「10年間で100兆円」の防災事業をうたっている。

 震災ではコンクリート構造物が次々に倒壊した。必要な堤防整備などもあるだろうが、「コンクリ防災」の限界をどこまで学んでの公約なのだろうか。

 津波被災地にはがれきがいまも山積みになり、原発事故によって汚染された地域の除染作業もはかどっていない。

 住み慣れた家を離れて避難する被災者は32万人を超え、11万4千人が2度目の冬を仮設住宅で過ごそうとしている。

 この重い経験から、どのような教訓を導きだし、地震列島で暮らす国民を守る政策を進めていくのか。有権者が知りたいのはそこだ。

 首都直下型地震では、政府の被害想定によると65万棟が焼失する。火に強い街につくりかえ、地域の防災力を高めるにはどうすればいいのか。

 壊滅的な打撃を受ける恐れが強く、首都機能の移転も真剣に考えなくてはいけないはずだ。

 東海地震など南海トラフを震源とする巨大地震では、太平洋岸の人口密集地を津波が襲う。津波対策を進めるなら、高台移転の支援を優先すべきではないか。いち早く逃げるためにも小中学校での防災教育は重要だ。

 暮らしの安全を築くには、ハード対策に加え、ソフト面の施策を組み合わせる必要がある。党首らには、効果的な具体策づくりを論じてもらいたい。

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敦賀原発―後回しの活断層リスク

 原発の下に活断層があると、地震が起きた際に地面のずれで原子炉や安全装置が傾き、過酷事故につながりかねない。

 日本原子力発電(原電)の敦賀原発(福井県敦賀市)の断層は、活断層なのか。原子力規制委員会が現地調査した。

 敦賀原発の原子炉建屋から約200メートルの場所に、浦底断層という活断層が走る。敦賀2号機の原子炉建屋の直下にある「D1」と呼ばれる断層は、この浦底断層につながっている。

 2日間の現地調査で、調査団の5人は浦底断層が非常に活発に動いてきた活断層であるという認識で一致した。

 焦点は浦底断層が動いた時にD1が連動するかどうかだ。

 連動して動くならD1も活断層となる。活断層上での原発の重要施設は認められておらず、事実上、廃炉につながる。

 規制委は早ければ10日にも方針を決める。

 規制委の田中俊一委員長は、直下だけでなく直近の活断層も問題視し、評価法の見直し検討を表明している。

 規制委が安全優先の結論を出す必要があるのはもちろんだが、これまでの経緯から大きな疑問が浮かぶ。そもそも、原電はなぜここまで、活断層のリスクを過小評価してきたのか。

 現地調査前の規制委の会合では、「動かしがたい証拠が出るまで(浦底を)活断層と認めなかった姿勢を反省すべきだ」と原電に厳しい指摘が出た。

 敦賀1号機の運転開始は1970年だ。78年には耐震指針が作られ、90年代には専門家の間で浦底が活断層であることが確実視されるようになった。

 それでも原電は「活断層ではない」との立場を変えず、2004年には3、4号機の増設申請をした。05年に旧原子力安全・保安院が再調査を指示し、08年にやっと活断層と認めた。

 原電は、活断層の危険と正面から向き合わず、都合のよい解釈を繰り返していたといわざるを得ない。

 原電は57年に原発の専業会社として、電力9社などの出資で発足した。敦賀1、2号機と東海第二の3基を保有し、電力会社に電気を売ってきた。

 敦賀1号機は運転開始から40年を超え、東海第二は地元の反対が強くて再稼働のめどが立たない。原電は現在、電力会社からの維持運営費などで経営を維持しているが、敦賀2号機の再稼働が頼みの綱の状態だ。

 甘い調査や評価がまかり通った責任は誰にあるのか。原電が自ら検証して明らかにしない限り、原発事業は任せられない。

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