ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます (トッシー)
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タケルの人間性が読者様から嫌われているようでww
しかし、ひゃんな事から能力を得ただけに子供なんてこんなものでしょう…。
しかしここから少しずつ心境が変化していきます。
少しずつですよ。



本日の目玉商品『砂塵のヤリ』

現在オレは魔の森を駆けていた。
流石は『星降る腕輪』と言うべきか。
今まで体験した事の無い感覚だ。人間ってこんなに早く走れるのか。
めまぐるしく流れる風景に感心しながらオレは更にスピードを上げる。
暫く走ると森の闇に人影が二人見える。
マァムがポップに詰め寄っているみたいだ。

「まさか、見捨てて逃げてきたんじゃないでしょうね!」

「ち、ちち‥‥違っ、ちがっ!」

「じゃあどうしてのよ!ええ!?」

マァムは激しい剣幕でポップを怒鳴りつけている。

「…っ!?」

ライオンヘッドが倒れている。
おそらくマァムがぶっ飛ばしたのだろう。
だが…。
倒れているライオンヘッドがゆっくりと起き上がった。

「あぶない!伏せろ!」

咄嗟の事だった。
オレは反射的に掌をライオンヘッドに向けていた。
多分、ポップとマァムを案じてでは無いと思う。
ライオンヘッドの怒りに狂った表情にオレの防衛本能は警報を鳴らしている。
オレは力の限り叫んだ。

「バギマァアアッ!!!」

放たれた風は渦巻き木の葉や枝、小石を巻き込みながらライオンヘッドに吸い込まれた。

「ギャアアアアアアッ!!!」

ううぅ、グロい…。
ライオンヘッドは全身を切り刻まれながら吹き飛ぶ。
血を撒き散らしながら前足が、羽が尻尾が真空の渦から飛びだす。
風が止むと、そこにはグチャグチャのスプラッタ状態の肉塊が残った。
マジで怖かった…。
こりゃ暫く肉は食えないな。

「あ、ありがとうタケル。でもどうしてここに?」

ポップから手を離したマァムが話しかけてくる。

「いや、それは…」

い、言えない。
好奇心に負けたなんて。
マァムは少なくとも命がけで村を出た筈。
オレもある意味命がけだけど、全ては保身に直結する。
好奇心は猫を殺す。行動に矛盾があるがオレは好奇心に負けた。
やっとの思いで搾り出した答えは…。

「し、心配だったから…」

「そう、ありがとう…」

「いや、それよりも、もう一人の子は?」

「はっ!?そうだったわ!」

「ちょ、ちょっとも待てよ!もしかして助けに行く気か?」

「当たり前でしょ!?あんたそれでも仲間なの!?」

「さっき言っただろ!?現れたのは軍団長の一人!とんでもないバケモンだったんだぞ!?」

ちょっと待て!?
本気で行かないつもりかポップ!
それは不味い!
ダイが死んだらどうしてくれるんだ!?

「だから急ぐんだろうが!あの子が死んでも良いのか!?」

「うぐっ!?」

オレの激しい一括にポップは口ごもった。

「さっさと案内しろ!ケツ蹴っ飛ばすぞ!」

「どわっ!わ、わかったよ!」

後で自分を殴ってやりたいと思った行動だった。
何様だよオレ…。
ダイが死ぬ=魔界浮上=人類滅亡=オレ死亡。
この公式が頭に浮かんだオレはかなり必死だったと思う。
今のオレならクロコダインとだって表面きって立ち向かえるはず。
オレとマァムはポップの後を追った。




……無理。
何が無理だって?
クロコダインと正面切って立ち向かうだよ!
オレの視線の向こうではクロコダインがダイと対峙していた。
掲げた巨大な斧が、激しい突風を生み出している。
あれが真空の斧だろう…。
つか怖すぎる!
殺気で目をギラギラさせた二足歩行の巨大なワニ。
メチャクチャ怖い!
アレと睨めっこだって出来るか!
そしてオレはダイの凄さに驚愕した。
だってたった一人であの化物と戦ってるんだ!
さすが勇者様だよ。

「今だ!海破斬!」

ダイはクロコダインが放った真空の刃を切り裂いた。
海破斬の衝撃波はクロコダインの鎧を裂き、後退させる。

「何ィ!?」

ダイは好機とばかりに飛びかかった。
しかしそれは悪手だった。

「カアアッーー!!」

「うわっ!」

突如吐き出された激しい息吹攻撃(ブレス)。
空では身動きの取れないダイはまともに食らってしまう。
ダイの全身を焼け付くような痛みが襲う。

焼け付く息(ヒートブレス)
クロコダインの切り札だ。
コレを受けた者は、全身が麻痺し動けなくなってしまうのだ。

「オレに傷を負わせるとは噂通り大した小僧だ」

しかし。
それでもダイは身体を引きずって落とした武器(ナイフ)を取ろうとする。

「もう寄せ、お前はよく戦った。
 オレは勇者を名乗る大人の戦士と星の数ほど戦ったが…
それでもお前の方が余程強かったぞ」

クロコダインは止めとばかりに真空の斧を振りかぶった。

「少々惜しいが楽にしてやる」

ヤバイ!
ダイのピンチ!

「ダイーーっ!」

ポップは走りながら杖を構えた。

「そうはさせん!」

クロコダインは真空の斧を使い突風を生み出す。

「これじゃあ近づけない!」

マァムは徐に魔弾銃を取り出した。
銃口をクロコダインに、ではなく倒れているダイに向けた。

「おい!何処狙ってるんだ!敵はクロコダインだぞ!おい!…や、やめろ~~~~っ!!」

ポップの制止の叫びと同時に引き金が引かれた。
放たれた光線はダイへと吸い込まれる。

「なにするんだ!?気でも狂ったのかよ!」

「落ち着いて!ほら!」

マァムの指先を追うと、ダイの体が回復魔法の光に包まれていた。
焼け付く息によって傷ついた身体は見る見るうちに元に戻り…。

「う、動く……動くぞ!」

「おのれ!」

ダイは起き上がってナイフを拾い上げるとクロコダインと距離を取った。

「いったいどうなってるんだ?」

「もしかしてキアリクか?」

「そうよ」

オレの回答にマァムは肯定して魔弾銃から弾を抜き取った。

「キアリクを込めた弾を撃ってあの子を助けたの」

魔弾銃。
火薬の代わりに様々な魔法を込めて撃つ鉄砲。
原作同様にマァムは説明してくれる。
商人としては欲しい一品だぜ。
話し込んでいる間に再びオレたちを突風が襲う。
見るとクロコダインが再び真空の斧の力を発揮していた。
オレたちを近づけない気か!
今のダイでは一人でクロコダインを倒すことは出来無い。

「あの武器を何とかしないと…」

マァムは閃いたようにポップに聞いた。

「そうだ!あんた、氷系呪文(ヒャド)出来る!?」

「おお!オレの氷系呪文(ヒャド)と言えば天下一品と評判で…」

「貸してくれ!」

「あ!」

ポップの自慢に付き合ってるヒマはない。
オレはマァムから弾丸をひったくると呪文を唱えた。

『氷系呪文(ヒャダルコ)』

弾丸に確かに吸い込まれる感覚。
それを確認したオレはマァムに弾丸を手渡した。

「マァム!」

「…え、ええ!」

一瞬戸惑いを見せたマァムだったが直ぐに気を取り直して弾丸を魔弾銃にセットする。銃口を真空の斧に向けた。

「死ねぃっ!!!」

「今だ!」

ダイに向かって斧を振り下ろす瞬間。
マァムは狙いを付けて引き金を引いた。
ヒャダルコの呪文を込めた弾丸は見事に斧に命中。


「うお…、おおぉっ!?」

真空の斧はビキビキと音を立てて凍りつく。
氷はクロコダインの腕まで覆い込んだ。
ダイがこの機を逃すはずがなかった。高く跳躍する。

「クロコダイン!これでもくらえ!!」

「しまった!朝日がっ!?」

ダイの背後の太陽光によって目を塞がれたクロコダイン。

「でやあああああああ~~~~っ!!!」

ダイの会心の一撃がクロコダインの片目を奪った。

「ぐわああああああ~~~~っ!?」

ズゥン…!
轟音を立ててクロコダインは大地に倒れ伏した。

「ダイーッ!?大丈夫かーっ!」

オレたちは倒れかけているダイの体を駆け寄って支えてやった。

「ポップ…、ひでぇよ、逃げちゃうんだもんな…」

「いや…あ、あはは…」

ダイの言葉にマァムはポップを睨みつける。

「回復呪文(べホイミ)」

オレはダイにベホイミを掛けながら、クロコダインに注意する。
このまま終わる訳がない事を知っているからだ。

「あ、ありがとう……」

「あなた、回復呪文まで…もしかして賢者?」

「いや、商人だよ。呪文の才能だけはあったみたいで…っ!」

クロコダインが起き上がった。
ダイ達もオレの表情を見て視線の先を見る。
そこには片目を潰され怒りの形相を向けるクロコダインがいた。

「グゥゥ……よ、よくもオレのカオに…いや!オレの誇りに傷を付けてくれたな……っ!!」

その表情にオレの身体は完全に硬直していた。
蛇に睨まれた蛙である。本当にこんな状態があるのか!
マジで怖すぎる。つくづく思う。
チートな能力を得ても所詮オレはしがない学生でしかない事を。

「お、覚えていろよっ!……ダイ!お前はオレの手で必ず殺す!!!」

その形相に恐怖を覚える一行。
クロコダインは闘気の塊を地面に向けて放った。
そして出来た穴に飛び込んで姿を消した。
どうやら助かったみたいだ。
緊張が切れたオレはその場にへたり込んだ。




「どうにか助かったな…」

「そうね。それにしてもタケルには驚かされたわ」

「いや、オレもアバンの使徒の凄さを改めて知ったよ」

「「えぇ!?」」

オレの言葉にダイとポップが目を向いて驚いた。

「お、オレも!俺達も、アバン先生の弟子なんだよ!」

「そ、そうなの?」

ポップとダイは首飾りを取り出して言った。

「アバンの印…」

マァムも胸元から『アバンの印』を取り出した。
マジで乳でけーな…。

「そうだったのか…道理で強いわけだ」

ダイは納得したように微笑んだ。

「どうだ?傷の方は?」

立ち上がってダイに聞いた。

「もうすっかり。爺ちゃんのベホイミよりきくよ」

そりゃ光栄だな。
こうやってダイの傷を治すのも好感度アップの為。
そりゃ子供が傷つくのには思うところはある。
でもそれ以上にダイに死なれるのは不味すぎるのだ。
オレの平穏を取り戻してくれるのはダイ達だけなのだから…。

「攻撃呪文に回復呪文…おめえ、賢者か?」

「マァムにも言ったけど聞こえてなかったのか?オレは唯の旅の商人だよ。呪文がちょっと得意なだけな」

「でも本当に凄いと思うわ。ここに来る時も私たちの足についてきたんですもの。かなり鍛えたんでしょうね?」

「へえ~」

ダイも感心したように俺を見た。
いいえ。
星降る腕輪の力です。
そんなに尊敬の眼差しで見ないで下さい。

「あれ?その傷…」

マァムは俺の腕を取った。
何時の間にか腕から血が流れている。

「多分、どこかで枝にでも引っ掛けたんだろう。
 こんな傷くらい舐めときゃ治るよ」

「ダメよ」

マァムは回復呪文(ホイミ)を唱えて傷を直してくれた。
人に回復呪文を掛けてもらったのは始めてでちょっと感動。

「あ、ありがとう…」

「どういたしまして」

その様子を見ていたポップが遠慮がちに頭をかきながら言った。

「あ、あの…、俺にもひとつ回復呪文(ホイミ)を…」

ベチ!っとマァムは薬草を投げつけて返答した。

「はい薬草」

「て、てめえ!なんだよこの待遇の差は!?」

「臆病者と勇者の差でしょう?この人は商人なのよ?」

ごめんなさいポップ、マァムさん…。
俺は臆病者です。断じて勇気なんて無いです!
これで次回の戦い逃げれば幻滅されるかな?
「本当は臆病者です!」なんて今更言えない…。
澄まし顔で無視するマァムと喚くポップ。
ダイはその様子に思わず笑い声を上げていた。

(せっかく逃げる為に用意した砂塵のヤリ、意味なかったな)

いざとなればマヌーサの効果で逃げようと思っていたが…。
無駄になったのは喜ぶべきか残念がるべきか…。
俺は日の登り始めた空を眺めながら溜息を付いた。

「あぁ…これで魔王軍に目を付けられたかも…」

まだ大丈夫、だよな?












本日のステータス

レベル:15

さいだいHP:89
さいだいMP:546

ちから:42
すばやさ:100
たいりょく:45
かしこさ:275
うんのよさ:256

攻撃力:96
防御力:107

どうぐ
E:砂塵のヤリ
E:ビロードマント
E:力の盾・改
E:幸せの帽子
E:スーパーリング
E:星降る腕輪
E:魔法の弾×10

呪文・特技

錬金釜 採取 大声 口笛 
寝る 忍び足 穴掘り 大防御


ホイミ ベホイミ 
キアリー キアリク シャナク
メラ メラミ メラゾーマ
ギラ ベギラマ 
イオ イオラ
ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン
バギ バギマ
フバーハ
ラナリオン
トラマナ レミーラ



タケルの魔法の才能はあくまでも魔王軍と戦闘になってしまった時に生き残る為に必要な能力です。
流石に道具だけじゃ自衛は無理そうなので…。

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