食品出荷制限増、なぜ今 福島県外にも産地拡大
詳細検査で把握 「隠さず対策を」
基準値を超える放射性セシウムが検出された食品の出荷制限地域が広がっている。昨年は福島県だけで制限された食品も東北や関東各地などに拡大。原発事故から1年8カ月もたって、なぜなのか。 (中山洋子)
「これほど多くの食品が汚染されているなんて」。東電株主代表訴訟原告団の木村結さんは、11月15日付で国が福島県に出した出荷制限指示の文書を見て驚いた。そこには、県内で産出されたカブやウメなどの41品目で、出荷制限の対象となる市町村がずらりと並んでいた。
基準値を超えた食品は原子力災害対策特別措置法に基づき、首相が出荷制限を指示する。基準値は今年4月、1キロ当たり500ベクレルから100ベクレルへと厳しくなった。厚生労働省は当初から、県別にまとめた対象品目リストを公表し、指示や解除など変更するたびに更新してきた。原発事故の直後は大きく報道されたが、最近では話題になることも少なくなっている。
あらためて目にした品目の多さに、木村さんは「『安全』を強調する情報が独り歩きして、実態がどんどん分からなくなっている。マスコミは積極的に知らせてほしい」と注文する。
実際には、品目ではなく出荷制限される産地が広がっている。野生キノコや原木シイタケ、山菜、天然ヤマメなどは、昨年から福島県内の各地で検出されていたが、今年に入って、ほかの県の市町村でも検出されるようになった。特に野生キノコから高い濃度が検出されるケースが増えている。出荷制限は11月30日現在で、福島を除くと13県の1〜20品目に及ぶ。
厚労省の担当者は「昨年は混乱の中、手当たり次第に調べたが、実際には手が回っていない食品も多かった。今年は、過去の経験から検出されることの多い食品を集中的に調べた。4月から基準値が厳しくなった影響もある」と説明する。
群馬県高崎市の高崎市民測定所クラシルの甲田崇恭氏は「昨年から県内でも野生キノコはダメだろうと諦めていた。出すのをやめた直売所も多い。シイタケ栽培用の原木も、放射能の影響が少ない西日本産が品薄のため、廃業に追い込まれた生産者もいる」と話す。
新潟大の野中昌法教授(土壌学)は「これまで詳細に調べていなかった地域で検査するようになったことが大きい。風評被害を乗り越えるため、しっかり調べて公表している福島産の農産物が、実は最も安心できる」と指摘する。野中教授は福島県二本松市などで生産者とともに、詳細な土壌の汚染マップを作成。放射性物質不検出の農作物栽培に取り組んでいる。
「隠すことこそが、風評被害を広げる。放射性物質が出やすいもの、出にくいものの傾向も分かってきた。きちんと調べて正しい情報を示し、対策をとるしかない」
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