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【男子】
GPファイナルで、2回の優勝経験を持つパトリック・チャン(カナダ)はカナダ大会で2位という形で終わった雪辱を回避するためにも、頑張らないといけない大会だ。SPの曲はラフマニノフの幻想的なピアノ曲「悲歌」。静かな感じをパトリックの表現力がどのように演技に結びつくのかが期待された。
常連のローリー・ニコル氏の振り付けからの変更で、ジェフリー・バトルに構成を頼んだ。スケーティング、ステップ、スピンと、選手時代も定評のあるものを持っているバトルの振り付けは興味深い。全体を、音、デザイン、体の線、つなぎのステップを流れる形で構成しいる感じだ。
8つの要素も流れの中で見せてくれた。最初の4回転トーループ+3回転トーループが1回転になってしまい減点3。フライングシット・スピンはレベル4だったが、その他のスピンとステップはレベル3とエンジンが全開とはいかないようだ。それでも加点は付く。さすが王者である。曲のハイライトを抑えつつ、体全体を曲想に合わせて強弱をつけて、静かな中にも抑揚が見える。スケーティングの質感も氷上で上質な流れに乗っていく。1位で発進した。
フリーではプッチーニの曲「ラボエール」。デビット・ウィルソンの振り付けは、パトリックをロマンティクな形に仕上げていくのに貢献しているのが見えるような演出を感じる。一味違う、鍛練されたスケートが構成に生きている。序盤は得意とされる4回転トーループ+3回転トーループ、膝の上手な使い方の見事なジャンプだ。流れも申し分ない。
続く4回転トーループもまたいい。技術評価点の加点3が付いても当然という感じだ。3回転ルッツ、見せ場のステップなど曲想に合っていて、デビットとのコラボレーションも素敵に見せてくれる。
後半、苦手意識の強いアクセルが2回転半になり、コンビネーションやシークエンスにダブルが入ってきてしまった。しかし、勝ち方は心得ている。ジャンプで跳び上がった時に、3回転は無理だと思えば2回転できれいに降りてくる。わずかな加点でも貯金になることも理解している。ジャンプの前後の工夫された跳び方やスピード感は、ほかの選手たちを寄せ付けない風格がある。終盤のコレオステップも曲調を反映しているものだ。
王者の貫録か? 自分の領域に少しづつみんなを引き入れていく、氷上のエンターテイナーだ。一歩、一歩の伸びるスケートと質の良さが演技を一層引き立たせてくれるのだろう。カナダ杯よりロシア杯と良くなってきている。2位以下を10点以上引き離し、フリー1位、総合1位で優勝。ファイナルの切符を手にした。
佐藤教室のトップ選手である小塚崇彦は昨年低迷していたが、今季のスケート・アメリカで復活。自信を取り戻したようだ。ファイナルを狙う彼にとって大事な2戦目を迎えた。SPは映画音楽「栄光への脱出」。ポール・ニューマン主役のよき映画時代の曲。振り付けは、デビット・ウィルソン氏。どんな選手にでも、ぴったりの振り付けをして、良い所を前面に出す演出だ。
トラディションやターン、ステップ、フリースケーティングムーブメントなどの足さばきを重視し、氷上でクリーンにエッジを裁いていく。さすが、佐藤先生の愛弟子と感心する部分ありきだ。8つの要素を確実にやることを要求されるSPにおいては、4回転トーループは比重が大きい。少し慎重すぎたか、両足着地で回転不足。減点3を大方のジャッジから引かれてしまった。トリプルアクセルも両手が氷上に付き減点2と、3つのうち2つのジャンプのミスが重なり、減点を取られてしまった。
それでも、スピン、ステップを含めた他の演技は伸び伸びと、自信を取り戻した力を発揮、良く滑るスケートだった。ファイナルにつなげる3位でスタート。フリーの方が自信があるというところを見せてもらいたい。
フリーでは、似合っているというクラッシックで、サン・サンースの交響曲、「動物の謝肉祭」をマリーナ・ズエワが振付けている。序盤の4回転トーループは両足着地し回転不足で減点。続く、4回転トーループは回転不足で転倒しシークエンス扱い。ここでもマイナス3の減点だ。3連続ジャンプも3―2―2回転だったものの減点対象になってしまった。後半の3回転ルッツ+3回転トーループの第2ジャンプの回転不足などで減点。ジャンプにミスが目立った。
しかし、好きなバイオリンの曲に合わせてのステップシークエンスは小塚の良さを引き出しながら進んだ。上半身の動きも大会を追うごとによくなってきている。コレオステップに関しても速くなる旋律に合わせ、正確にターン、ステップ、ムーブメントと流れに乗って演じている。これも小塚の特技として、ジャッジたちにも定評があるというものだ。3つのスピンは全てレベル4とはいかなかったが、加点がもらえるのはスケートがうまい証拠だ。
フライングエントランスの足換えコンビネーションスピン最後のバックスクラッチは、佐藤先生譲りのものだ。軸がしっかりした高速回転で、フィニッシュとしてはグッドである。4回転がまだ確実ではないものの、少しつづ体か曲になじんで動くようになってきている。フリーの方が緊張しないというから、完成に向けて進んで行くだろう。今回は、3位。総合2位でファイナルに駒を進めた。
織田信成は、まだ試合感覚が戻っていない感じはあった。4回転トーループ+3回転トーループが3―3になり、トリプルアクセルが1回転半になってしまった。3つのジャンプのうち2つのミスは大きく、5コンポーネントも伸びず、8位に沈んだ。抑えられた感じの得点にかなりのシヨックはあったようだが…。
切り替えてのフリーは、4回転トーループでの転倒と3回転サルコーの回転不足以外は、膝を修復した信成が少し大人になって帰ってきた。相変わらずの膝の柔らかさも、流れの中のジャンプの着地も元のままだった。安定した演技は健在であった。フリー2位で総合5位。ファイナルは逃がしたが…。本人はフリーが好成績だったので自信が取り戻せたと昨年のブランクを振り返り、全日本に向けて何をやるべきかを悟った様子だった。
【女子】
ベテランのキーラ・コルピ(フィンランド)が大人の味をだしながら、スケーティングの質の上手さをプログラムの中に織り込み総合1位。
グレイシー・ゴールド(米国)はジュニア時代に良い成績をあげ期待されていたが、これまでシニアの壁を超えることが難しかった。そんななか、シニアのGPで銀メダル獲得。米国にニューヒロインが誕生するかもしれない。
3位のアグネス・ザワツキー(米国)はパトリック・チャンの元コーチ、クリスティ・クラール女史に師事してから、めきめきとジャンプの確実性が増してきた。その功をなしてか? 全米選手権でも優勝し、初めてGPのメダルも手にすることが出来た。クラールコーチの功績大か?
メダルを逃した村上佳菜子は、いつもとは違うステップからの始まりだった。後半、ジャンプの得点が1・1倍となることを考えてのことだろう。とても緊張してのスタートだったらしい。ダブルアクセルは流れもあり高さも、飛距離もあって加点は確信。3回転トーループ+3回転トーループの第2ジャンプが回転不足。スピードも流れも良かったが…減点。ステップからの3回転フリップで転倒。減点3を取られてしまった。
3つのスピンは軸が通り、高速回転が出来ていて良かったと思う。最後のレイバックスピンはレベル3だったものの、2~3の加点がもらえた。一生懸命さも出ていて、好感のもてる演技だったが6位と出遅れてしまった。しかしトップまで3点も離れておらず、表彰台は確保できる位置にいたことは幸いだった。
気持ちを切り替えてのフリーに臨んだ。「タンゴ」の曲想に乗って、スピード感があるスターだった。序盤の3回転ルッツはスピードの中で行われたが「e」マークが付き、減点となってしまった。「平常心で臨んで」という言葉を胸に張り切って演技した。3つのジャンプは何いつも通りの前向きな姿勢だった。後半の4つの連続したジャンプに表彰台を賭けたが、3回転ループ+2回転ループの第1ジャンプが回転不足になってしまった。村上はプログラムの構成の中で、アクセルを忘れてしまったようだ。
最後の得意な3回転フリップが単独になり無得点。「キックアウト」扱いになってしまい残念だった。上手く力強く滑り、演技力も良かったのに、フリー3位。総合で0・27差で4位とファイナル行きを逃した。注意を怠らなければ確実に表彰台は確保できたのに、非常に残念だった。
(2012年12月7日01時09分 スポーツ報知)
1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。
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