喫煙者に対する締め付けが厳しさを増している。しかし、「そこには多くの矛盾がある」と、第二東京弁護士会所属の溝呂木雄浩弁護士は指摘する。
「例えば、タクシーの禁煙車両が増えていますが、その理由は“臭いが残るから”としか言っていない。それなら、香水やニンニク臭はどうなるのか。また、お酒の席で嫌な思いをしたことのある人でも、たばこは分煙、禁煙と叫ぶことはあっても、お酒を飲む人と飲まない人を分けようという発想はない。そういう矛盾を、たばこを吸う吸わないに関わらず、多くの人にもっと問題視してもらいたい」という。
もちろん、喫煙問題だけに矛盾があるのではない。例えば、生レバーは加熱しないと食中毒に至る可能性のあることが科学的に立証され、販売禁止となった。それは当然のことだ。しかし、生レバーで亡くなるより、正月に餅をノドに詰まらせて亡くなる人のほうがはるかに多い。
それでも餅が禁圧されることはない。科学的に検証するものではないからだ。それなら喫煙も同じではないか。たばこの害は何も立証されていない。にもかかわらず叩かれる。
「要するに、叩けるもの、叩きやすいものは叩いておこうということ。それが今の日本社会の風潮であり、そういう歪な構図に国民が慣れてしまっていることに危機感を感じます」
同じ少数者の人権という観点では、障害者も喫煙者も同じように保護されるべきと溝呂木弁護士は言う。
「しかし、障害者には社会的な利益、不利益は考慮することなくバリアフリーやユニバーサルデザインなどさまざまな配慮がなされるのに、喫煙者にはそれがない。では、障害者が喫煙者ならばどうか。これはもう、完全に喫煙者に対するのと同じ扱いになる。新幹線の喫煙ルームを見れば一目瞭然で、車椅子の人はどうする術もありません」。ここにも、大きな矛盾が生じている。
「今、喫煙問題は非常に危機的状況に来ています。国も、弁護士会も、あるいは禁煙派にしても、先入観を捨て、イデオロギーに害されない検討をすべきです。そのことをマスコミからもどんどん発信してほしい」と溝呂木弁護士は訴える。