長谷川幸洋「ニュースの思考法」第4回
安倍発言をミスリードした記者たち
前回の記事で「記者が経済学の基本をきちんと勉強していない」と書いた。まさに、それが証明されたような「事件」が起きてしまった。それも、この国の将来を左右する総選挙の戦いが、事実上、始まっている真っ最中に、である。
多くの新聞やテレビが「自民党の安倍晋三総裁が国債の日銀引き受けを要求した」という誤報を流してしまったのだ。それは単に1回の誤報にとどまらなかった。
報道は真実であるという前提で、日銀の白川方明総裁は記者会見で「発展途上国でもIMF(国際通貨基金)が中央銀行制度に関する助言を行う際に、行ってはならない項目リストの最上位に掲げている」と批判。経団連の米倉弘昌会長も「財政ファイナンスは禁じ手であり無謀」と追い討ちをかけた。
そうした大物たちの批判をメディアが再び報じることで「安倍が国債の日銀引き受けを要求した」という話は、あたかも本当であるかのように独り歩きし既成事実化していったのである。
私は11月23日公開の「現代ビジネス」コラムで、これらの批判が事実に基づいたものではなく「メディアが勝手にでっち上げた空中楼閣のような論争」であると指摘した。報道が誤報であったことは、いまでは安倍発言を収録したビデオによって証明されている。
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