鉄鋼などの素材産業を中心に、アジア地域の設備能力過剰が日本企業に重くのしかかっている。大型設備が次々と稼働を始めたところに新興国で需要の伸びが鈍化し、余った製品が国内市場になだれ込んできたためだ。
ドルやアジア通貨に対し急速に円高が進んだことで、日本企業への影響は数年前の想定より深刻になっている。企業は事業環境の変化に合わせ、国内に残せる設備の洗い出しと過剰な能力の削減や統合、新たな成長分野の立ち上げを急ぐ必要がある。
製紙大手の王子ホールディングスは、2016年3月末までに国内従業員の1割削減を柱とするリストラ策を打ち出し、印刷用紙工場などの閉鎖も検討し始めた。
国内市場の縮小が加速したことが理由だ。国内の紙需要は06年をピークに減少傾向にある。そこにアジアの過剰供給と円高を受けた輸入紙の増加が追い打ちをかけた。主力の印刷情報用紙に占める輸入品の割合は今年、06年の2倍強の20%に迫る見通しだ。
内需の鈍化と輸入品の増勢が同時に進み、国内生産の減少に拍車をかける構図は鉄鋼や石油、石油化学製品も同じだ。
アジアが抱える過剰能力の中心は中国であり、先進国のような市場メカニズムは効きにくいことを留意すべきだ。今後も鉄鋼などで大型設備の新設は続く。政府・日銀は円高対策に全力を挙げてほしいが、企業には事業環境に合わせた対応策が要る。
日本製紙など製紙8社は5月にインドネシア産輸入紙の一部について反ダンピング(不当廉売)関税の適用を政府に申請した。国際的な貿易ルールに抵触する疑いがあれば、迅速な措置は必要だ。ただし、それだけで過剰問題への対策にはならない。
新日本製鉄と住友金属工業は10月の合併前に広畑(兵庫県姫路市)、堺(堺市)、和歌山(和歌山市)製鉄所の資産価値を引き下げ、計2400億円を減損処理した。国内に維持する設備も、こうした財務リストラや事業再編による競争力強化が課題になる。
アジアの過剰問題に直面する鉄鋼や化学、製紙、繊維、造船、電子部品産業の雇用は合わせて150万人に及ぶ。製造拠点の削減や海外移転が進むことを前提に、政府も雇用の受け皿としてサービス産業の強化や新産業の育成策を急ぐべきだ。
新日本製鉄、日銀、住友金属工業、日本製紙
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