ノーベル賞:「予期せぬ結果こそチャンス」…山中教授会見
毎日新聞 2012年12月06日 23時38分(最終更新 12月07日 01時14分)
【ストックホルム須田桃子】ノーベル医学生理学賞を受賞する山中伸弥・京都大教授(50)は6日午後(日本時間深夜)、共同受賞者で英ケンブリッジ大名誉教授のジョン・ガードン博士(79)とともにカロリンスカ研究所内で記者会見した。「同じ会場で何度も講演した。受賞者として今ここにいるのは、光栄だが夢の中にいるようだ」。山中さんは心境を英語でこう表現した。
科学との出会いについて聞かれ「少年時代、ラジオを自分で分解し、組み立てるのが好きで、そのころから科学への興味が芽生えた」と振り返った。若者へは「仮説と異なる思いがけない実験結果がなければ、人工多能性幹細胞(iPS細胞)はできなかった。予期せぬ結果こそ、新しい発見やブレークスルー(画期的な成果)のチャンスだ」と力を込めた。ガードン博士も「自分が好きで興味を持っていることがあれば、もし成績が悪くてもあきらめないことだ」と強調した。
ストックホルムの印象について山中さんは「この街が好きな理由の一つはすしの店が多いこと」と話した。日本のすしとの違いについて問われると「ES細胞(胚性幹細胞)とiPS細胞ぐらい似ていて匹敵するおいしさ」とユーモアを交えて説明、笑いを誘った。
ガードン博士については「私の研究分野の流れを50年前に切り開いた。とても尊敬しており、一緒に受賞できるのは光栄」と称賛。「患者の手元に届くまでこの研究の流れは続くので、私の残りの人生をささげたい」と、iPS細胞の再生医療応用への決意を語った。
◇「メダル」1000枚購入
会見に先立ち、ストックホルム市内のノーベル博物館で公式行事に臨んだ山中さんは、慣例にならって同館に記念品を贈った。十数年前、奈良先端科学技術大学院大に初めて自分の研究室を持ってiPS細胞を本格的に研究し始めた頃に使っていた実験器具のピペットを選んだという。また、同館で土産用に売られている、ノーベル賞のメダルをかたどったチョコレートを1000枚購入。多忙なスケジュールを山中さんなりに楽しんでいる。
一方で山中さんは、書きかけの論文数本をストックホルムに持ち込んだ。前夜もホテルの部屋で遅くまでパソコンに向かっていたことを明かし、「仕事もしながら(公式行事を)楽しみたい」と語った。