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卓上四季

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絶滅受合法案

大正デモクラシー期を代表する論客、長谷川如是閑(にょぜかん)が「戦争絶滅受合(うけあい)法案」なるものを提唱していたことを、作家落合恵子さんと哲学者高橋哲哉さんの対談に教わった▼それは如是閑の評論集「真実はかく佯(いつわ)る」にある。デンマークの軍人による起草とし、開戦後10時間以内に、《1》国家元首《2》元首の親族《3》総理、国務大臣、次官《4》代議士(戦争に反対票を投じた者を除く)―の順に「一兵卒として最前線に送るべし」と規定した▼世界恐慌前夜、時代はきな臭さを増していた。「権力者や利益を得る人間が末端の国民を犠牲にして起こす戦争の本質を突いている」との高橋さんの評価に同感する▼きのうの衆院選公示後、複数の政党党首が福島県内で第一声を上げた。震災と原発災害からの復興をアピールしたかったのだろう。が、かりそめの姿勢ではいけない▼福島第1原発事故で、役場ごと埼玉県への避難を強いられている双葉町の町長が先日、本紙の取材に「国と東電(の責任者)こそ避難所で生活すべきだ」と語っていた。事故現場では、多くの作業員が放射線にさらされている▼原発を動かしたい政党は、せめて「事故時は議員自ら収束作業に当たり、議員宿舎または自宅を被災者に提供する」といった法案を示してはいかがか。憲法をいじってもっと戦争しやすい国にしたいなら、「戦争絶滅受合法案」もぜひ参考に。2012・12・5

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