NAVERまとめ編集コンペ受賞作に見る、作家性と大衆ウケの微妙なバランス

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2012/12/06


NAVERまとめのコンペ、結果が公開されていますね。NAVERまとめ 編集コンペ – 受賞作品の発表


受賞作のPVはどれも少ない

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受賞作品はどれも質が高く、うまいなぁ、とうなってしまうものばかり。が、うがった見方をしてしまう僕は、PV数の少なさに興味深さを見いだしてしまいました。

例えば優秀賞を取った「【大人なら知っておきたい】日本料理の“華”! 椀盛の小宇宙」は、現時点で1,500PV程度。もうひとつの優秀賞「「海と猫のまち 尾道」オトナの日帰りおもてなしプラン」は1,000PV。他の受賞作も500〜2,000PV程度のボリュームが多く、唯一バズっているのは「日本にある「ギネス認定」された場所に行ってみる旅」の約5万PV。

一概には言えないのですが、この結果だけ見ると「受賞するほどクオリティが高い編集物でも、オンラインでバズるとは限らない」といえそうです。


作家性の高さと閲覧数は比例しないもの

この手の「矛盾」はオンラインコンテンツのクリエイターには実は付き物で、必ずしも手間を掛けた、その人の「色」があるコンテンツが、オンラインで受けるとは限らないんですよね。

5分で書いたライトな記事が1万人に読まれて、1時間掛けて書いた熱い記事が100人にしか読まれない、なんてことはホントに頻繁にあります。これはオンラインでコンテンツを作ったことがある方なら、ほとんどの方が頷いてくれると思います。僕も毎日そんなんばっかりです。

作家性の高さと閲覧数は比例しない、ともいえます。今回のNAVERまとめの編集コンペの受賞作は、まさにそのことを端的に表しているでしょう。


しかし、伝わるものはある

じゃあ「あまり読まれないけど作家性は高いコンテンツ」に価値がないかというと、決してそんなことはありません。

希望も相半ばしておりますが、作家性が高いコンテンツ、すなわち「クリエイターの色が出ているコンテンツ」を出していくことは、熱心なファンを獲得していく効率的な手段になります。


数字的にいえば、「あまり読まれないけど作家性は高いコンテンツ」を発信するメディアは、訪問別PV数が高くなるでしょう。わかりやすくいえばリピーターが多いということです。

一方、僕のブログのように「ウケる記事もあるけど、他のサイトにも載っている情報が多い」メディアは、訪問別PVが低くなる傾向があります。こちらもシンプルにいえば、リピーターが少ないということです。

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(うちのブログは1.38。ちょっと改善しましたが、まだ低めです。これを1.8ぐらいにしたい…。)


また、「あまり読まれないけど、作家性は高いコンテンツ」を発信するメディアは、読者の「ファン度」が高いため、有料メルマガ・有料サロンでのマネタイズに向いているでしょう。逆に、作家性の低いメディアの場合は、フリーミアム的な課金は成功しにくいかもしれません。


とはいえ、大衆ウケもやっぱり必要

しかしながら、まずはたくさんの人の目に触れる必要があるので、やっぱりコンテンツクリエイターには大衆ウケも求められてしまうのが現実です。

資本主義経済に乗るかぎりは、どこかで「ちょっとだけ魂を売る」瞬間が出てきてしまうのです。

今回の受賞作でいえば、大衆ウケを考えると、「【大人なら知っておきたい】日本料理の“華”! 椀盛の小宇宙」よりも「【美人すぎる和服女将が解説】日本料理の“華”! 椀盛の小宇宙」の方がPVは伸びるでしょう。他の例では、「これは映画素人の男が彼女に捧げた映画の物語」ではなく「ブサメン童貞魔法使いだけど映画で女子高生口説きおとしたwww」の方がウケるでしょう(たぶん)。

作家性と大衆ウケ。この微妙なバランスのコントロールはホントに難しいです。インセンティブの改正を見るに、NAVERまとめもその方向に向かっているようですが、コンテンツプラットフォーム的には、その人しか作れない、こだわりや熱意のあるコンテンツをうまく浮上させる仕組みが求められるのでしょう。哲学をもって運営してくれることを期待したいところです。


作家性と大衆ウケにまつわる議論は尽きないと思いますので、ぜひコンテンツクリエイター、編集者の方はみなさんのご意見を教えてください。みなさんはどんなバランスで仕事をこなしてますか?


関連本。編集コンペの審査員でもあった菅付さんの著書。編集のふかーい世界へ誘ってくれます。