12月4日 シナリオ作家協会講座 境宗久先生×小林雄次先生 「『プリキュア』のつくりかた」
のターバンメモ。
ちゃんと聴き取れたか自信がない事と、受講生じゃないのに聴かせてもらったうえに吹聴するのもはばかられるのでこういう形でメモをここに書いときます。(暫くしたら消します)
意訳してる部分もあるかと思いますし、そもそも間違ってる可能性すらあります。
そこの所を了承して頂いたうえで読んで頂きたいと思います。
ちなみに背景の焚火マークは、当日むねひさが着ていたシャツの柄を真似して書いてみました。むねひさの気配が少しでも伝われば幸いです。
さて、
この講座は基本的に小林さんが境監督にインタビューするみたいな形式で進められていきました。
講座っていうよりはトークショウって感じ。
以下、ぱらぱらっとまとまりなく内容を書いていきます。
小林氏:(ワンピースの映画、ストロングワールドの監督でもありますと紹介した後、)日本アカデミー賞取ったんですよね?
境監督:あわててスーツを作りに言ったwあれ以来、着ていないw
小林氏:東映は社員の監督さんたちが作ってるんですよね?
境監督:社員はもう絶滅して今はみんな契約社員です。自分も毎年契約を更新してます。
小林氏:ワンピースとプリキュアの違いは?
境監督:一番大きな違いはオリジナルと原作付きの違い。
小林氏:それと、プリキュアは1話完結感が強いと感じる。
境監督:だから個性が出る
小林氏:プリキュアに関わることになったとき、ぶっちゃけプリキュアをまともに観たことがなかった。
でも、見てみたら「書ける!」と思った。難しく考えて書くもんではなく日常の延長だと思った。
自分は途中参加だったが、スムーズに加われた。
境監督:プリキュアはある程度決まったパターンで作れるので…
境監督:ワンピなど原作があるものは30分にまとめる中で、大きな原作の流れの中のどこが盛り上がり所なのか等のポイントがあるうえ、各話30分の中でも盛り上げ所を作らなければならない。
中継ぎの話でも面白く見せ場を作らなければならないのが難しい。
原作は原作でちゃんと各話の中に見せ場もあるが、アニメのフォーマットにした時にまんがの1話がアニメの1話になるとは限らない。それがズレたりするひずみが存在するので、そこが演出の腕の見せ所。
小林氏:シリーズディレクターとはどういう仕事か?
境監督:作品の全体を統括する。企画の時からどういう作品にするか、どういうスタッフにするかプロデューサーと話し合いながら決める。各話の演出、アニメーター、美術さんに「今回はこういう話だよ」と伝える橋渡し的なお仕事。
小林氏:1年間でどれくらいのスタッフが関わっているのか?
打ち上げに行くといっぱい人が居てびっくりするんだけどw
境監督:移動もままならない位にいますからねぇw自分の知らない人も居る。
…っと、ここで先日のスマプリ41話を上映。
そして、なんと!上映後に境監督の絵コンテのコピーを回し読み!!!!
回し読みしなきゃいけなかったので、そんなにゆっくりは見れなかったのですが、
境監督のコンテは恐ろしく細密で、もうほとんどアニメそのものでした。
そして忘れられないのが、最後のコマに「おわり」と書いてあって、その「おわり」の後に猫の足跡マークみたいのが付いていたこと!MUNEHISA!!!
これ以降、41話の話を中心にトークが行われました。
小林氏:41話では風景で心理描写をしている場面が目立つ。これはこだわりか?
境監督:最近できたこだわりだが、アニメは実写と違って情報量が限られる。絵もがんばるが限界がある。
表情は記号として限界がある。もっと掘り下げようとした時に、情景描写をすることで、心理を掘り下げている。
小林氏:(実際打ち合わせではどういう話をしていくのかという話題で)41話ではどういう打ち合わせをしたんでしたっけ?
境監督:ミラクルピースとピースの戦闘をリンクさせようという話はしたんですよね。
っと、ここで話がちょっと脱線。
41話の打ち合わせを大塚監督と小林氏と境監督で行う際、小林氏は大塚監督と待ち合わせて会議室に向かったところ、会議室は真っ暗で、
中に入ったら境監督が「わっ!」と脅かしてきたとの事wwww小林氏は大塚監督と境監督の仲の良さに感心したそうです。境監督は「だって二人が来るのが東映の3階から見えたからw」だって!む ね ひ さ!!
それと、大塚監督について小林氏は「食べない、飲まない、ガリガリなのが特徴」と言い、毎回、「また痩せたんじゃない?」と冗談を交わす、との事。
また、スイプリは打ち合わせ終了後に毎回飲みがあったのに、大塚監督は「食べない、飲まない」ので飲みに行かず、結構飲むのが好きな米村さんががっかりしているとの事w
小林氏:絵コンテはどれ位で描くのか?
境監督:自分は特に遅い。早い人は一週間くらい。41話の絵コンテは一か月くらいかかった。(!)
小林氏:思い付いたシーンから描いたりするのか?
境監督:自分は頭から描く。先輩にはメインの盛り上がる所から描く人も居る。自分はそれができない。
でもシナリオを読み込んだ時点で絵が浮かぶ。ここを盛り上げようと決めて、そこに向かって描いていく。
小林氏:自分がシナリオを書く時あ書けないシーンを飛ばして書くことがある。
境監督:頭から描いていかないと、自分は感情の流れを追えない。
小林氏:プリキュアには「縛り」が多い。必ず変身し、必ずおもちゃを出さなければならない。
41話も最後にアレ(デコルの事の様です)…、ほらアレ出してるし…
境監督:ああ、アレ。うん、アレ…(境監督もデコルという単語が出てこないらしい)
小林氏:自分は3話も書いたので、大塚監督からの要望で41話も書いた。
41話はやよいの成長を描くのが目的。だから、3話では人から言われてポスターコンクールに出たが、41話では自発的にまんがコンクールに応募している。
また、みゆき達からの手伝いの申し出に対し、3話ではお願いしたが、今回は断った。そういう成長による変化が盛り込まれている。
小林氏:演出、美術、作監はそれぞれ何をする人達か?
境監督:基本は絵コンテを演出が描く。これが設計図になる。絵コンテと演出が分かれている場合もある。演出というのはアニメーターと打ち合わせる人。
作監はいろんなアニメーターの絵を調整する人。
美術監督は背景スタッフをまとめる人。色味や形、美術コードをこしらえて…。(この、こしらえて、という言い方がKAWAII!むねひさ!)
クレジットされている人たちがスタッフ全員ではない。原画はあれで全員だが。
あと、たとえば凄く上手な人にスペシャルスタッフとして「ここ願いします!」って頼む場合もある。
小林氏:打ち上げの時にアニメーターさん達が声優さんたちに「ぼくはここのシーンを描いたんですよ!」って自慢しているのをよく見るw
声優さんたちもよく言われるのか慣れていて「そうなんですかー」ってって答えている。
小林氏:成田さんがやよいを「女子に嫌われそうなキャラクターだけど大丈夫か?」と言っていた。
小林氏:そういえば、これは梅澤プロデューサーに確認した訳ではないが、プリキュアはいつもライターが男だけ、女だけにならない様になっているようだ。
境監督:それは梅澤プロデューサーがそう言ってました。
小林氏:男と女の脚本は違う。自分は理屈から考えてしまう。女性の書く脚本には理屈ではないものを感じる。
ところで、トウメイニナール回はプロット上ではちゃんと構成があったが、出来上がった脚本を見た大塚監督が「これはストーリーは要らない」と言った為、"計算して計算を無くした"。
小林氏:男の演出と女の演出は違う?
境監督:どうだろう?でも女性の演出はやわらかい感じがする。
小林氏:41話の演出で他に何かあるか?
境監督:とにかく、感情の膨らませ方をどうすれば良いか、それをどう掘り下げれば…というのを考えた。
夢のミラクルピースとピースの戦闘のリンク。あと、最初はやられっぱなしのピースと、その後やり返す時のピースも同じにした。(攻撃→やられる。 再度同じ攻撃→今度は弾き返す)
小林氏:プリキュアはシナリオの枚数が少ない。ペラで言うと60枚位…。スマイルプリキュアでは60枚でも多い方。
Aパートで日常。Bパート暫くしたらバトル…バトルの中で成長しました、はい、終わり!なのでドラマはせいぜいAパートのみ。
スマイルプリキュアは5人居るので台詞の割り当てが大変。必要じゃない部分を削ぎ落とさないといけない。書こうと思えばいくらでもおしゃべりさせられるが尺の問題でそうもいかない。
境監督:5人描くのは大変!髪の毛が他のキャラに被っちゃうしw
小林氏:スマイルはゲストキャラが少ない。
境監督:ゲストを出すとゲストを説明しないといけない。尺の問題がある。
小林氏:プロットではもっとゲストを出そうとした。しかし、ゲストを出すと5人のドラマになりにくい。
でもゲストとキャラを絡めた方が話は書き易い。
スマプリは脚本はもう全部上がっているので、ライターの打ち上げをしたのだが、米村さんが大塚監督に「ゲストキャラを出さなかったから大変だった」と言っていたw
自分が脚本を書いた花火回では最初、花火職人のおじさんが出てくる筈だったが消えたw
3話に出てきた美術部員をなんとかもう一回出せないかと米村さんが考えて、海の家回は美術部員VSプリキュアとする話だったが、
だったらあかねちゃんVSなおちゃんの方が良いよ、とああいう形になった。
(これはほんと衝撃の事実ですよねーww生徒会長なんで出てこないのかと思ったけど、こーいうことだったんですねー。)
小林氏:境監督はスマイルプリキュアでは3つ演出を担当されたが、自分が印象的なのはやよいちゃんのお父さん回である。
あれはカット数多い?
境監督:そうでもない。感情表現とかを表情とか台詞に頼らないとした場合に、ああするかなぁ、と。視聴者が感じられる絵を作ろうかなぁ、と。
小林氏:あの話は、やよいのお父さんが死んだ理由を説明しないのが凄い!
自分だったら死んだシーンを入れる。その方が盛り上がるし。それを敢えて入れない米村さんは凄い!
境監督:どこに話の軸を置くかということだと思う。死んだシーンを入れた方が盛り上がるが、感情の軸が必要。
やよいは何で悩んでいるのか。お父さんが死んだ事が悲しいのか、お父さんを忘れていくのが悲しいのか。
小林氏:やよいとお父さんの結婚式のシーンでは、お父さんは自分の死期を悟っている様に思える。想像を掻き立てられる。
境監督:それを描写するのは野暮かな、と。そこは余白を残すというか…。
境監督:やよいのお父さん回についてはシナリオをもらって「静かな話を作っていけばいいのか」と思って作り始めたが、スマプリの他の回を観ていて「これは違うなw」と思ったが、
大塚監督が「それで良い」と言ってくれた。
大塚監督は、それぞれの演出家の得意なところを分かっていて、自分に任せてくれたのかなと思う。41話も。
小林氏:スマイルプリキュアは大塚監督が「これは誰が書いて」という指定が結構あった。
ロボニナール回は女児向けアニメで男児向けをやったらどうなるか、という大塚監督の試みで、最初は自分が脚本を指名されたが、
いつの間にか方針が変わっていて、こういうのは逆に女性の成田さんがやった方が良い、となって、ああなった。
…だいたいこんな感じで、最後に質問ターイム!!
Q:プリキュアのモチーフはどうやって決めるのか?
境監督:プロデューサーなどが決める。雲の上で決まっている。w
小林氏:梅澤プロデューサーから聞いたが、スマイルプリキュアは東日本大震災の前にはプロットができていて、
プリキュアは1人だった。(?!)しかし、大震災を受けて「これからは一人じゃない!」という事でこういう形になった。
境監督:スイートプリキュアのプリキュアのそれぞれのキャラクターの名前はみんなで決めた。名乗りもみんなで決めた。
小林氏:ビートの名乗りを決めるときは色んなアイデアをみんなで出した。ひどいのだと「心のビートはお祭り騒ぎよ!」なんてのもあったw
境監督:ワザとばかみたいなのを出して「意外と良い!」というパターンもある。あほな事でも取りあえずやってみる。
で、次に私が質問させて頂きました。
「スイートプリキュアで気に入ってるシーンや話、または難しかったシーンや話などがあったらお聞かせ下さい」
(ただし、すごく漠然とした質問だったので、境監督も答え辛そうにしてました;
さらに私も興奮してちゃんと聴いてなかったっぽいのでかなりこのあたりあやふやです)
境監督:最初っから終わりの方まで決まっていた訳ではなかった。その中で物語のひろがり、着地点を感じられたのが良かった。
たとえば、ノイズがどこに封印されているかなんて決まってなかった。
もう、公園に居るんじゃね?wとか言ってた。裏山に化石として封印されてるとかも考えてたw
打ち合わせの際「…で、これからどうする?w」っていつも言っていたw
ワンピースの原作者である尾田栄一郎が話を作る際、例えばチョッパーの話ならチョッパーのエピソードをあちこちいっぱい散りばめておいて、
後で「お、これ使えるじゃん」って回収していくという方法をしている、という話を聞いて、それを実験的に自分も使ってみたというのはある。
小林氏:まんがはいつ終わるか分からないので、そういうやり方が大事なんですよね。
境監督:だいたいは決まっているんですが…ここで何をやろうとか。
小林氏:やよいのお父さんが死んでいる設定は米村さんが打ち合わせで言い出して決まった。
Q:境監督の演出の中に出てくる情景はどうやって決めてるのか?
境監督:シナリオをもらって、何が必要か考える。みゆきのおばあちゃん回で言えば、みゆきのおばあちゃんが田舎に留まり続ける訳…おばあちゃん家が良い所でないといけない。
あの時は漠然としていたので、ロケハンに行って、ここなら住み続けたいと思えるシーンを撮ってみた。
41話で言えば、イチョウでやよいの話である事を視覚的に伝えてみた。
Q:他の作品に脅威を感じることはあるか?
境監督:そういうことはあまりない。「この作品が凄いね」という話はするが、自分の作品と比べてどうか…ということはない。
自分は自分の作品を作っていけば良いかな、と。
小林氏:ほかのアニメからアニメの参考にすることはあまりない。
境監督:さっき、小林さんとコーヒーを飲みながら話した時みたいに「この人はこういう考え方をするんだー」みたいな方が影響がある。
すごいアニメみたら、逆にその真似はできないしね。
小林氏:プリキュアのスタッフにはプリキュアのおたくがいない。ウルトラマンにはウルトラマンおたくが居るが…。
そういうプリキュアおたくがプリキュアを作り出したら、今までとはズレ始めると思う。
Q:一緒に仕事をしてみたい、と思うのはどういう人か?
境監督:柔軟な発想を持っている人は仕事をし易い。楽しい。
自分でガチガチに固めてやりたい様に作る人も居るが、自分は自分でアイデアが貧困だと思うので人の意見を聞きたい。
自分の絵コンテに「こうしたいなら、こうすれば?」と意見が言える人が良い。
…っと、だいたいこんな感じでした。
自分はやっぱり、自分が質問したことの答えが一番心に残りましたね。
ガチガチに決まっていた訳じゃないんだな、と。
昔、サクラ大戦を作った広井王子が「キャラが独り歩きすることはある」という事を言っていたのですが、それに近いものを感じました。
響達がどう成長し、どう戦い、何を成し遂げるかというのは、まさに響達が歩いていく中で少しづつ決まっていったことなのかなぁ、と。
そして、そういう「ひろがり」「着地点」を境監督自身も「良かったな」と思っておられる様子なのが良かったです。
あー、やっぱりスイプリってそういうアニメなんだなぁーって感じで!そういう所が好きなんですよー、自分は。
境監督は以前、みゆきのおばあちゃん回の時に「受け取り方は自由です」という様な趣旨のツイートもされてましたが、なんというか境監督、大らかで良いっす。
あと、やよいのお父さん回の話をされてる際に「余白を残す」と言っておられますし、スイプリの謎部分は余白であって想像の余地なのかなぁと。うん、やっぱりむねひさ!!
はてさて、
凄い適当にまとめてしまいましたが、少しでもご参考になれば幸いです。
以上、ターバンメモでした。