当選確実となり、支持者らの祝福に笑顔を見せる伊藤さんと(右)と妻の幸さん=桑名市西別所で
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「きょうはゴールでない。ここからが桑名の新しい歴史。みんなで変えていきましょう」。二日投開票の桑名市長選で、初当選を決めた伊藤徳宇(なるたか)さん(36)は、選挙事務所前に詰め掛けた支持者に力強く呼び掛けた。
現職の水谷元(げん)さん(56)との戦いに手応えを感じ、まだかまだかと吉報を待ちわびていた陣営。午後十一時すぎ、大きな拍手に迎えられて登壇した伊藤さんは支持者とともに万歳し、大勝した選挙戦を「桑名市の良識が問われた選挙だった」と振り返った。
選挙期間中は連日、選挙カーで走り回り「皆さんが一票を投じることで桑名市が変わる」と支持を訴えた。日焼けした顔をほころばせ、妻幸さん(35)とともに花束を受け取り、事務所は祝勝ムードに包まれた。当日有権者数は十一万一千二百七十九人で、投票率は53・25%だった。
◆支持幅広く集める 本紙出口調査
桑名市長選で、中日新聞社は期日前と二日当日、投票所を抽出して出口調査を実施した。分析すると、伊藤さんに投票した有権者は七割を占め、性別や年代に関係なく、支持が広がっていた。
調査地点別では伊藤さんの地元の多度地区、住宅団地が広がる大山田地区や、長島地区で約六割の支持を集めた。理由を尋ねたところ、「市政を変えたい」「現職が長すぎる」という回答が目立ち、現市政からの脱却を望んでいる人が多いことをうかがわせた。一方、水谷さんも各年代から支持を集め、男性の割合がやや高かった。調査は十一月二十九日〜十二月二日に実施し約一千人のうち八百五十九人から回答を得た。
◆現市政への批判 頂点に
市民は、市政の「刷新」を選んだ。くすぶっていた合併前の旧桑名市から通算五期十七年に及ぶ多選問題に加え、市職員らが逮捕される不祥事が相次いだ現市政。批判の高まりが頂点に達し、数字に表れたといえる。
伊藤さんが選挙戦で前面に打ち出した「一緒に新しい桑名をつくろう」というメッセージは、有権者に広く浸透した。ただ、一騎打ちになり「現職を選択したくない」といった理由から消去法で選ばれた感は否めない。
伊藤さんは多選批判を展開し「市政を変える」と訴えた一方、その具体的な手法までは示さなかった。掲げた政策のいくつかは現職と似通っており、最後まで政策論争は聞けなかった。今後は具体性のある丁寧な説明が求められる。
閉塞(へいそく)感を感じている市民は少なくない。そんな桑名市のかじ取りは、三十六歳の新市長に託された。何をどう変えていくのか。伊藤さんの采配を市民は注目している。
(渡辺聖子)
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