川嶋 それで今は講演活動で数学の楽しさを教えているんですね。
桜井 サイエンスナビゲーターとして講演活動を始めたのは2000年です。サイエンスナビゲーターは今のところ日本に1人しかいません。そしてサイエンスエンターテインメントショーを繰り広げているわけです。
桜井 僕は、文系の女の子、数学嫌いの女の子の気持ちを180度転換させる、数学を大好きにさせるようなことをやりたいと思った。それで「数学」という言葉を使わないようにしました。
また、小学生に講演する時には算数ではなく、数学の世界を見せます。しかも講演は100分。普通ならば小学1年生は1時間も耐えられないと思いますが、喜んで聞いている。映像と音楽で、映画を見ているように、時を忘れるように食い入るように見ている。
質疑応答では、例えば小学校1年生が「先生、どうして足し算から勉強するんですか」と聞いてくる。非常にいい質問です。
それは世界が足し算でできているからだよと。掛け算も割り算もすべて足し算に集約される。だから足し算が一番大事だから最初に勉強するんですよと。そういう本質をついた質問が小学1年生から出るんです。
見ている学校の先生や父兄はひっくり返る。自分の子供がそんな数学の質問をするのかと。それで学校の先生にはこういう話をします。7歳の子どもがそういう根源的な問いをするというのは当然のことです、それが人間なんですと。
先生の中には算数の嫌いな生徒を半分バカにしたりする人もいるけれど、そういうことではいけません。小学生だってれっきとした理性が働く人間で、聞いたことを覚えていて考えているんです。
制度にしがみつく公教育。先生の間にも競争原理が必要
高濱 今の公教育に欠けているのは、面白さを伝えることだと私も思います。分かった、よっしゃと思った瞬間の快感を知っている子供は、それを中心に勝手に動き出す。
答えが合っているかどうかだけに注目していると、結局面白くないという方向に行く。だから私の塾「花まる学習会」では、答えじゃなくて考え方が見えた瞬間こそ最高に面白いんだということを伝える教育をやっています。
公教育についてさらに言いますと、算数、数学に限らず死んだ状態です。仕組みを維持することに汲々として、免許制度にしがみついている。
変革するのは簡単だと思います。人事制度に手をつければいいんです。塾の先生はほとんど教員免許を持っていないですが、親や生徒から圧倒的に信頼されています。
なぜなら塾の先生は日々生徒の目にさらされ、生徒を魅了しなかったらアウトなので必死にやっている。そこが学校の先生との差ですよね。
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