中村勘三郎さん死去 悼む声相次ぐ12月5日 15時3分
歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが亡くなったという知らせを受けて、東京・文京区の中村勘三郎さんの自宅には、歌舞伎界で親交のあった人たちや関係者が相次いで弔問に訪れています。
このうち午前7時ごろには、歌舞伎俳優の中村獅童さんが訪れました。
黒いスーツ姿の獅童さんは無言で勘三郎さんの自宅に入っていきました。
その後も坂東三津五郎さん、松本幸四郎さん、それに市川海老蔵さんらが相次いで訪れ、沈痛な面持ちで玄関に向かっていました。
勘三郎さんの舞台を撮影してきた写真家の篠山紀信さんは「勘三郎さんの口上を撮影していたら、舞台の真ん中に呼び出されて、お客さんと一緒に写真を撮影したことがいちばん印象に残っています。常にアグレッシブで新しいことをする人でした。本当に残念で、勘三郎さんのいない歌舞伎は考えられません」と話していました。
また、自宅には、関係者からお供え用の花も次々に届けられています。
勘三郎さんの所属事務所によりますと、通夜は今月10日の午後6時から、葬儀・告別式は今月11日の午前11時からで、いずれも東京・文京区の自宅で近親者のみで行うということです。
喪主は、長男の中村勘九郎さんと次男の中村七之助さんが務めます。
また、年内に、本葬を行う予定だということです。
坂田藤十郎さん“もっとお元気でいてほしかった”
中村勘三郎さんが亡くなったことについて、京都・南座の顔見世興行に出演している人間国宝の坂田藤十郎さんは「非常に驚いております。来年4月の歌舞伎座のこけら落としを楽しみにされていたと聞いておりました。ご一緒することがかなわず残念でなりません。もっともっとお元気でいてほしかったです。勘九郎さん、七之助さんご兄弟の活躍を応援していきたいと思いますので、皆様方にも温かく見守っていただきたいです。ご冥福をお祈りします」というコメントを発表しました。
坂東玉三郎さん“言葉もありません”
中村勘三郎さんが亡くなったことについて、同世代の歌舞伎俳優として活躍している坂東玉三郎さんは、「中村屋さんがこんなに早く亡くなられるとは思ってもおりませんでした。本当に驚いています。言葉もありません。歌舞伎界にとって大きな損失ですし、私自身にとっても寂しいかぎりです。途方に暮れる思いですが、皆と話し合いながら、将来を考えていきたいと思います」というコメントを発表しました。
坂東三津五郎さん“人生の半分もぎとられたような気持ち”
中村勘三郎さんと同い年で幼なじみとして互いに芸を磨いてきたという坂東三津五郎さんは、勘三郎さんの自宅へ弔問に訪れました。
勘三郎さんが亡くなったことについて、三津五郎さんは「本人にとっても、ご家族にとっても、歌舞伎界にとっても、そして私にとっても、絶対に起きてはいけないことが起きてしまったというのが実感です。小さい頃から、同学年で彼が先頭を立って走ってきたから、僕もそれに遅れまいと頑張ってきたお蔭で今の自分があります。今は、もう二度と同じ舞台には立てないのかと思ったら、自分の人生の半分をもぎとられたような気持ちです」というコメントを出しました。
野田秀樹さん“悲しい、さみしい、つらい”
亡くなった中村勘三郎さんが挑戦を続けていた現代劇で親交が深く、舞台でも共演している劇作家で演出家の野田秀樹さんは、「同じ年の生まれで、歌舞伎の世界と現代劇の違いはありましたが、いつも二人三脚のような気持ちでいました。彼が必ず隣で走ってくれていました。悲しい、さみしい、つらい、ありとあらゆる痛切なことばを総動員しても今の気持ちを表現することばが見つかりません」という談話を発表しました。
大竹しのぶさん“役者としても人としてもすばらしい人”
勘三郎さんと舞台で共演したことがあり、私生活でも親交が深かった女優の大竹しのぶさんは、5日、東京で開かれた舞台の製作発表会見で勘三郎さんとの思い出を語りました。
大竹さんは、来年1月から再演される歌手のエディット・ピアフの生涯を描いた舞台に出演します。
5日の製作発表会見で、大竹さんは「20歳のときに舞台で勘三郎さんと共演し友人となり、『おもしろいから』と言われて勘三郎さんから渡されたのがピアフの生涯を書いた本でした。それをまた何十年もたって自分が演じるようになって、前回は彼もすごいよかったと言ってくれたのでうれしかったのですが、今ここに居ないことが現実として考えられない思いです」と話していました。
そのうえで、「周りのすべてのスタッフにも本当に細やかで、すごいとてつもない愛を持っている、役者として人としてもすばらしい人でした。歌舞伎界だけでなく演劇界が彼をなくしてどうなってしまうのかというのが正直なところですが、頑張らなくてはいけないなと思います」と話していました。
山川静夫さん“柱を失ったという寂しさでいっぱい”
古典芸能に造詣が深く歌舞伎に関する著書を多く発表するなど、評論家としても活躍している元NHKアナウンサーの山川静夫さんは、子どもの頃から舞台に立つ勘三郎さんの姿を見てきました。
山川さんは「勘三郎さんは子どもの頃からまさに天才でした。歌舞伎の基礎となる踊りがとにかくうまく、普通の人にはできない最高の踊りで魅了する役者でした。彼は特に「鏡獅子」をライフワークとしていましたが、すでに完成形にあり、これからさらに体力と精神力が合わさって円熟した芸が見られると思っていたので非常に残念です。若手の演出家と新しい舞台を作り上げて若いファンを歌舞伎界に導きながらも、常に王道を追求していました。息子2人も立派な役者に育て上げ、ことし4月に親子でお会いしたときには『勘九郎さん、一回りも二回りも大きくなったね』と言ったら、勘三郎さんが『小さくなったら困りますよ』と笑って話をしていたのが最後になりました。彼の影響を受けている役者は多いので、歌舞伎界の柱を失ったという寂しさでいっぱいです」と話していました。
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