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“外交弱小国”日本の安全保障を考える

ものすごい議会工作

 カナダではその抗日連合会の支部組織「カナダALPHA」が、米国とは異なり正面に出て、議会への工作などを展開してきた。米国では抗日連合会は主役ながら、舞台裏に留まることが多かったのだ。

 カナダの同組織は、チョウ議員のような、香港を含む中国に生まれ育ってカナダに移住してきた中国系カナダ人が主体である。その代表格のチョウ議員が連邦議会に提出した慰安婦決議案はまず今年3月、下院外交委員会の国際人権小委員会で審議され、27日には可決された。賛成4票、反対3票の僅差だった。内容は日本政府による元慰安婦たちへの謝罪表明と賠償支払いを求めていた。

 国際人権小委員会で可決された決議案は、次には下院外交委員会で5月10日に審議され、同小委員会に差し戻された。外交委員会では与党のカナダ保守党の議員らから「日本への内政干渉となる」とか「日本の首相は既に元慰安婦たちに謝罪している」という反対意見が出た。その結果、小委員会に戻して、「さらなる調査を求める」という措置がとられたのだった。

 その後、「カナダALPHA」による議会工作がものすごかった。国際人権小委員会での「さらなる調査」のために、この中国系組織は下院外交委員会のメンバー議員たちを主目標に活発きわまるロビー活動を展開したのである。カナダ各地の中国系住民を動員し、「トロントALPHA」「ブリティッシュコロンビアALPHA」というふうに地方別の小組織を編成し、連邦議会の、特に与党議員あてにアピールを繰り返した。国際小委員会のメンバーで閣外大臣をも務めるケニー議員などは、とくに積極果敢な訴えの集中的な対象となった。

 そしてその結果、最初は決議案の推進には乗り気ではなかった与党議員連までが賛成に回っていったのである。中国系組織の「カナダALPHA」は巧みに韓国系や日系までも巻き込んで、アジア系カナダ人全体の声のように、慰安婦決議賛成の動きを拡大していった。その間、各地で「慰安婦問題の研究」と題するようなセミナーや討論会を頻繁に開き、日本糾弾に基づく「慰安婦問題への理解」を広げていったのだった。カナダ議会の慰安婦決議採択の関連記録には、「カナダALPHA」とその連携組織から多数の議員や政府にあてた日本非難の種々の書簡が山のように保存されている。

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