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GPファイナルの男子は日本の独壇場。“先駆者”高橋大輔の危機感と自信。

Number Web 12月4日(火)18時31分配信

 NHK杯が終わり、フィギュアスケートのグランプリシリーズ6大会が終了した。

 12月6日にソチで開幕するグランプリファイナル進出者も決定した。

 その顔ぶれを眺めれば、あらためて日本男子の躍進が目をひく。すでに進出が決まっていた小塚崇彦、町田樹に、NHK杯で優勝した羽生結弦、2位の高橋大輔が加わり、6名中、4名を日本勢で占めたのだ。過去最多である。さらにファイナル進出はならなかったが、無良崇人のフランス大会でのグランプリ初優勝があり、織田信成もスケートカナダで3位と表彰台に上るなど、故障明けのシーズンで一定の成果をあげている。驚くべき層の厚さである。

 それは今後の日本代表争いの激化も意味する。

■町田、羽生……若手の勢いに危機感を募らせる高橋大輔。

「来年3月の世界選手権日本代表の3枠に入るのもきついですね」

 NHK杯の終了後、高橋はこう口にした。

 11月初旬の中国杯ではショートプログラム(SP)1位だったものの、フリーで町田樹に逆転を許して総合2位。迎えた2戦目のNHK杯では、SPで世界最高得点を更新した羽生に大差をつけられて2位という状況でフリーに臨んだ。

 その出来は、冒頭の4回転ジャンプに成功するなど、中国杯よりは明らかに向上していた。自身、「プログラムに慣れてきました。ちょっとずつ成長しています」と手ごたえは得ていた。だが、優勝には至らなかった。

「若い選手たちの勢いがすごいので、それに見合った成長なのかどうか」

 それほどに日本男子の勢いがあるということであり、危機感を募らせてもいる。

■「追いかけているうちに気づいたら、自分が上にいた」

 そういう状況の中、日本男子の活躍ぶりに関する質問が、高橋にいくつも飛んだ。その中のひとつに、高橋はこのように答えた。

「シニアに上がったとき、本田(武史)コーチや田村岳斗さんらがいて、追いかけているうちに気づいたら、自分が上にいました。そして織田選手、小塚選手、羽生選手……と続いてきました」

 高橋自身、自分の先輩の選手たちを追いかけて、第一人者となった。

 そして今は自分が追いかけられる立場にあることを示唆している。

■日本男子の可能性を切り拓いてきた高橋の多大なる功績。

 ただ、高橋が追いかけてきたときと少し異なるのは、彼が切り拓いてきた場所の大きさだ。

 グランプリシリーズで優勝を含め何度も表彰台に上り、世界選手権で優勝し、ついにはバンクーバー五輪で日本男子初の銅メダルを獲得した。

 類まれな、彼ならではの観客を引き込む力とともに、日本男子がどこまで到達できるのか、ひとつひとつ形にして見せてきたのが高橋である。

 その活躍に、他の選手も大いに刺激を受けてきた。

「高橋選手に負けまいとやってきて、ここまで来ることができたと思います」

 と、以前、織田が語ったことがある。

「バンクーバーで銅メダルを見せてもらって、『次は僕も』と思いました」

 とは、小塚の言葉だ。五輪の次のシーズンの小塚の大活躍は記憶に新しい。

 日本男子の今日を生み出した理由はいくつもあるだろう。そのひとつに、まぎれもなく、高橋大輔というフィギュアスケーターの存在がある。

 NHK杯で優勝は果たせなかったものの、変わることなく、観客を引き込む力を見せる姿、若手の活躍について尋ねられる様を見て、なぜだか、ふと、その存在の大きさをあらためて思い起こさせられることになった。

■高橋が思い描く理想の演技はソチ五輪で完成する!

 若手の成長でシビアな状況にあるのはたしかかもしれない。ただ、高橋が見据えるのはソチ五輪である。今はあくまでも過程にすぎないし、今年、コーチとしてモロゾフを再びチームに迎え入れたばかりだ。思い描いている演技がほんとうに完成されてくるのは来シーズンになるのかもしれない。

 危機感を示しつつ、どこか、そればかりではないニュアンスも高橋の言葉は感じさせた。

「一フィギュアスケーターとしては(日本男子の活躍は)きつい。でもレベルが上がっていることがうれしいですね」

 さらにこう口にした。

「ソチ五輪のとき、どこまで成長しているかを楽しみにやっています」

 シビアな状況の中にあって、あくまでも自分の成長を信じている。

 12月6日に開幕するグランプリファイナル、そして全日本選手権。

 来シーズンの最終目標、ソチ五輪へ向けて、ひとつひとつの過程を、高橋は進んでいく。

(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)

最終更新:12月4日(火)18時31分

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