まもなく一行はバスで披露宴会場に移動し、ド派手な演出が施されたパーティータイムになだれ込む。100人以上の出席者が飲めや歌えやの大騒ぎを繰り広げるなか、ノリノリの新郎新婦も豪快なダンスを披露し、大広間のテンションは最高潮に達していく。
その合間にいったん会場の外に出たアドリアンのカメラは、庭園をうろつく黄色い防護服姿の男たちの姿と一台のパトカーを捉えていた。
そのとき突然、惨劇が起こった。先ほどから具合の悪そうだったぺぺ叔父さんが2階から大広間に転落し、心配して駆け寄った妻の首に噛みついたのだ。異常にギラついた目つきで妻の肉を食いちぎったぺぺは、ドバーッと大量の血を吐き出す。さらに次の瞬間、ぺぺ同様に荒れ狂った数名の人々が大広間に乱入し、手当たり次第に出席者たちに襲いかかる。彼らは人間の理性を狂わせる未知のウイルスに冒され、怪物化した感染者だった。
よく晴れたその日、バルセロナの結婚式場には華やかに正装した老若男女が集っていた。誰もがうらやむお似合いのカップル、コルドとクララが人生最良の日を迎えようとしているのだ。コルドの従弟アドリアンが回すビデオカメラは、クララの友人の美女ナタリーに首ったけの色男ラファやメタボ体型のプロ・カメラマン、アトゥンらの姿を映し出す。ブレ防止用のステディカムまで持ち込んだアトゥンは、ジャン・ルノワールばりの映像美で結婚式の一部始終を撮ってやると意欲満々だ。そしてアドリアンは、一族の中でもとびきり陽気なぺぺ叔父さんにカメラを向ける。病院で犬に噛まれたという不運なぺぺは、右手に包帯を巻いていた。
神父の立ち会いのもと、結婚式はつつがなく執り行われた。純白のウェディング・ドレスに身を包み、緊張の面持ちで式場入りしたクララは、コルドと心から愛を誓い合う。親族や友人たちの祝福の歓声を浴びたふたりは、無上の幸せを噛み締めるのだった。
中央制御室をめざすコルドと行き違うようにして、神父とともに窓から2階に降りたクララは、惨劇の発生にまったく気づかぬまま呑気に愛を交わしていたラファ、ナタリーとばったり出くわす。しかしまもなくナタリーは感染者の餌食となり、クララは醜く変わり果てた母親に襲われかけてしまう。もはやパーティに出席したあらゆる人々が感染者に襲われ、彼ら自身も血肉に飢えた化け物へと変貌を遂げていた。
やがて凄まじい雷雨の庭を駆け抜けたクララとラファは、地下道に逃げ込んだ。この長い地下道を一目散に突っ走れば、敷地の外に抜け出せるかもしれない。ところがクララには、このまま逃げるわけにはいかない理由があった。コルドが「クララは絶対に生きている」と思っているように、彼女もまた彼がきっとどこかで生きていると信じているのだ。
「私は彼のところに行く。今日は祝福の日なのよ!」
ただ愛ゆえにこの世の地獄に舞い戻ることを決意したクララは、チェーンソーを握り締めてドレスの裾を切り裂く。まさにそのとき地下道に容赦なく感染者たちが押し寄せ、美しき花嫁は絶望的な闘いに身を投じていくのだった……。
大パニックに陥った大広間でクララを見失ったコルドは、やむなくアドリアン、アトゥン、クララの妹ティータらとともに厨房に逃げ込む。しかしその場も感染者に脅かされ、コルドらは体型上の問題で狭いダクトを通れないアトゥンを残して裏庭に脱出し、いち早く教会に避難した祖母らと合流する。祖母の話によると、感染者はなぜか教会に入れず、聖水を恐れる習性があるらしい。ならば教会内に立てこもって救助を待つのが賢明だが、コルドは愛するクララを捜し出すことで頭がいっぱいだ。すると備え付けのスピーカーからクララの声が聞こえてきた。
「私の夫、愛してるわ。挙式で忙しくて話せなかったから、今話すわ……実は妊娠したの。私たち、親になるのよ!」
新妻の思わぬ告白に俄然発奮したコルドは、教会内に展示されていた中世の甲冑を身にまとい、勇ましくもクララの救出に向かう。
その頃、クララは本館3階の中央制御室の監視モニターで、コルドの居場所を必死に捜していた。クララと行動を共にする神父は、半ば放心状態で「……こんなに早く始まるとは。悪魔の復活が!」と呟く。神父は感染者たちが単なる病人などではなく、世界に災いをもたらす悪魔の手先だと確信していた。