編集長コラム)ビジネスの観点から、「卒(脱)原発」政策をエンドース(支持)します
ツイート「志」のソーシャル・ビジネス・マガジン「オルタナ」編集部は、12月16日投票の第46回衆議院総選挙において、日本未来の党ほかの「卒(脱)原発」政策をエンドース(支持)します。
エンドースとは米国のメディアが大統領選や上下院選挙などにおいて、特定候補や特定政党の候補者や政策に対して支持を表明することです。
日本の大手メディアにエンドースの例はほとんどありませんが、雑誌オルタナは前回の衆院選(2009年)に引き続いて、エンドースすることを決めました。対象は、日本未来の党、みんなの党、社民党ほかの「卒(脱)原発政策」です。
エンドースの理由は、「ビジネスの観点」からで、具体的には「イノベーション」と「バックキャスティング」です。
イノベーションは通常、「技術革新」と訳されますが、実は技術だけではありません。経済学者シュンペーターは「経済発展の理論」(1912年)の中で「イノベーション」の重要性を指摘しました。
彼がいうイノベーションとは、経営やビジネスの新手法であり、「それまでにない市場を開拓すること」なのです。これが景気循環曲線「コンドラチェフの波」における景気低迷からの脱出法となるわけです。
松下電器産業(現パナソニック)で10年ほど前に「V字回復」を果たした、中村邦夫社長(当時)がよく口にした「破壊と創造」という言葉もシュンペーターによるものです。
ひるがえって、現在の日本のエネルギー政策にも、この「イノベーション」が不可欠です。オルタナ25号(2011年6月発行)の第一特集で『ウランも原油も頼れない』と指摘した通り、そのどちらも「限りがある資源」であり、いずれ枯渇することが目に見えています。
原油については、従来型の「安い原油」の採掘量はすでに2006年にピークを迎えたことを国際エネルギー機関(IEA)は認めています。いまは世界経済が軟調なので原油価格も低迷していますが、いずれ世界経済が回復すると、急騰する可能性は高いはずです。
ウランも、実は有限の資源です。ウランの埋蔵量の最も楽観的な見通しは550万トンで、世界の原発のウラン消費量は、国際原子力機関(IAEA)によると年間7万トン。つまり、ウランを経済的な値段で採掘できる年数は、約80年ということになります。
ここで、自然エネルギーやコージェネレーションを中心とした、次世代エネルギーや、その新しい利用法の開発で日本が得意の技術力を駆使していけば、日本が再び世界のビジネスにおいてリーダーシップを取れる日が来ると信じます。
いま日本のエネルギー業界でイノベーションを起こすためには、シュンペーターや中村邦夫さんが言うように、「破壊と創造」が必要です。ここで言う破壊の対象は、発送電が一体化した「旧体制」であり、旧来の市場であり、旧来の技術です。ちなみに、先進国で発送電が分離していないのは日本だけ。携帯電話並みの「ガラパゴス」状態なのです。
原子力発電は、いったん重大事故が発生するとリカバーが不可能で、リスクが大き過ぎる旧来技術です。原子力発電と早く縁を切ることが、エネルギー・イノベーションのためにも特に重要です。
もう一つの観点は「バックキャスティング」です。これはオルタナ15号(2009年9月発行)で特集記事を組みましたが、将来の「あるべき姿」をまず設定し、そこから振り返る形で、今後の道筋をつけていく経営手法です。スウェーデン軍での導入が嚆矢とされ、いまや北欧・西欧の先進的な企業の多くが導入をしています。
これを現代日本のエネルギー政策に取り入れるとすると、まず何年までに脱原発できるかを考え、そこに至るステップを組み立てていくわけです。
そこで現実的な数字は2022年、つまり日本未来の党が主張するように10年後です。ドイツのメルケル政権も2022年の脱原発を宣言しました。民主党が主張する「2030年代」は曖昧であり、また時間軸としても長過ぎます。
よく自民党や維新の会の候補者が、「原発の代替エネルギーがまだ定まっていないのに、脱原発だけ先に主張するのは無責任」と主張しています。
しかし、福島第一原発からはまだ毎時数億ベクレルもの放射性物質が放出され、事故収束のメドも立っていません。それなのに原発再稼動や、原発推進を唱えることこそ、「大いなる無責任」と考えます。
将来の目標や「あるべき姿」を先に考えるバックキャスティング的な思考方法は、「できることからコツコツと」と現状からの積み重ねを重視する日本人の考え方と正反対です。
よって、多くの日本人にとっては理解しがたい思考方法なのかも知れません。しかし、現状から積み上げていく今までのやり方では、画期的なイノベーションは生まれません。
以上の二つの理由から、オルタナ編集部は「卒(脱)原発」政策を支持します。(オルタナ編集長 森 摂)
2012年12月5日(水)2:23
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