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Googleマップの地図データを供給するゼンリンの開発拠点に潜入

@DIME 12月4日(火)17時39分配信

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Googleマップの地図データを供給するゼンリンの開発拠点に潜入

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Googleマップの地図データを供給するゼンリンの開発拠点に潜入
調査スタッフ渾身の地図原稿がこちら。個人宅名が記載されているので、鮮明に表示することはできませんが、新設された建物などの細かい情報がぎっしり。これはプロのなせる業です。

 ありえない駅名や地名、施設名などを表示する、ある意味斬新な「iOS 6」の純正地図アプリの登場で、最近、何かと話題の地図。やっぱり「Google マップ」は使いやすかった!と再評価する声が多くあがったが、地図右下のクレジットに注目!何を隠そうこの地図データを提供しているのはゼンリンです。しかも、Yahoo!の地図機能、「Yahoo!ロコ」の左下を見てもゼンリンの文字が。さすがは国内最大手の地図情報会社ですね。このほかにも多くのメーカーがカーナビ用の地図データとして採用しています。というわけで、ゼンリンの地図が気になったDIME取材班は、信頼と実績のゼンリンの地図ができるまでを潜入取材してきました! 

 我々が訪れたのは、ゼンリンが本社を構える福岡県北九州市。ここには、ゼンリンの地図データを整備・開発する拠点「ゼンリン テクノセンター」があります。ゼンリンの頭脳です。それでは早速、地図の作り方をご紹介、といきたいですが、まずはその前に気になるゼンリンの歴史について簡単に振り返ってみることにしましょう。

 ゼンリンの原点は、今から約65年前にさかのぼります。創業者である大迫正冨氏は、当時から観光客や湯治客で賑わいをみせる温泉の街で有名な大分県別府市の観光案内小冊子を発行していました。この小冊子には、本編となる名所旧跡の紹介記事に加え、巻末にカラー刷りの市街地図を掲載していたそうです。実は、この市街地図が非常に便利ということで、本編よりも評価を得ることになり、地元の旅館や市役所などから地図上に名前を掲載して欲しいとの要望が相次いだそうです。

 この時、大迫正冨氏は気づきました。「地図は添え物ではなく、最も貴重な情報源だ」と。これを皮切りに、一軒一軒の家の名前が入った住宅地図の作成に着手。別府から全国までを網羅するに至ったわけなんですね。この気づきと行動力がお見事です!ちなみに、社名である「ゼンリン」とは、隣国や隣近所と親しくすることを意味する「善隣友好」 が由来。「平和でなければ地図作りはできない」という大迫正冨氏の想いが込められているとのことです。素晴らしい!

 さて、ゼンリンの歴史を知ったところで、地図の作り方に戻りたいと思います。ここ「ゼンリン テクノセンター」の一画にある制作部門には、全国の調査スタッフが収集した詳細な地図情報が集まってきます。これを元にデータベース化する作業を行なっていくのですが……。

 なんと、このうち住宅地図情報の収集方法は、今もなお創業当時と変わらず足を使ってくまなく歩き回り、新しい建物などの新情報を地図上に手書きで書き留めていくという方法。こうすることで、詳細なデータ収集が可能になり精度の高い地図の提供を実現できるとのこと。確かに、これなら細かな情報も見逃しにくいですね。ちなみに現地調査の拠点は全国約70カ所、1日約1000人のスタッフが調査をしているんだとか。そんな調査スタッフ渾身の地図原稿がスゴイ!個人宅名が記載されているので、鮮明に表示することはできませんが、新設された建物などの細かい情報がぎっしり。これはプロのなせる業です。

 調査スタッフが作成した先ほどの地図原稿をデータベース化していく作業です。手書きで書き込まれた修正情報をデータに反映していくのですが、この時、使われるのがハンドデジタイザといわれる機械。ハンドデジタイザに地図原稿をセットし、パソコン画面に表示される同じ場所の地図を、素早く修正入力します。こうやって住宅地図情報をアップデートしていくんですね。とはいえ、細かな道路が入り組んだ地域になると、地図原稿1枚に対して3時間以上はかかってしまうとのこと。

 最近は、より精度の高い情報を提供していくために、新たなデータの蓄積も行なっています。そのひとつがコレ。車が通れない奥まった住宅密集地の一軒に向かう際、車が最も近づける場所を指定する作業です。この地図の場合、住宅から伸びた赤い罫線が1点に集中していますが、その場所が車で最も近づける位置になります。これが完成すれば、カーナビを利用した時、目的地までまだ遠いにも関わらず目的地周辺でナビ案内を終了、なんてよくあるジレンマが解消できるわけなんですね。しかもこの情報は、道路幅などの細かな情報ともリンクするので、道路幅より車幅が狭い車輌や歩行者などの場合は家の前まで案内する、というようなことも自動判断が可能になります。

 ちなみに道路幅などの道路状況の細かな情報収集には、GPSや360度パノラマデジタルカメラなどの最先端技術を搭載した車輌が活躍します。この車輌で撮影した動画を肉眼で確認しながら道路状況をチェック。もし途中から道路幅が狭くなっていた場合は、動画の道路の端から端までをクリックすると自動的に道路幅が検出され、設定できるようになります。肉眼で確認しながら細かく設定することで精度の高い道路状況の情報をデータとして蓄積できるようになるのです。気になるこの様子は撮影NGなのでお見せすることはできませんが。

 また、新設された道路の情報がある場合は、各自治体などから入手した工事の図面と調査スタッフからの情報を合わせながら、道路の構造を正確に入力していきます。調査スタッフが撮影した写真で、図面に記された番号と照らし合わせながら確認。どの位置からどの方向で撮影したのかが手に取るようにわかるようになっています。これら一連の細かな作業が道路情報のアップデートになるわけです。

 さて続きましては、先ほどの計測車輌が撮影した動画を元に作業する、カーナビに活用される高速道路の出入り口の構造、レーン数、標識などの情報入力の様子を紹介しましょう。例えば、料金所の情報を入力する場合ですが、まずは料金所の映像をアップして様子を確認します。それを元に、総レーン数やETCレーンの有無などを入力していきます。こうすることで、カーナビの画面に表示される料金所の構造が正確に表現できるようになるわけです。高速道路の分岐についても同じ手法になります。画面左が実際の現場の写真で、右側がカーナビに活用されるCG画面。車線や標識、ビル群までもが忠実に再現されていますね。なるほど、あっぱれです!

 あっぱれといえば、歩行者用ナビのデータベース化もものすごいものでした。例えば、歩行者ナビを使う場合、遠回りをしないルートや階段の少ないルートを案内するのはもちろん、それ以外に雨の日は屋根があるルートなどを提供しているとのことです。もちろん、このデータの情報収集はスタッフ自らの足で調査した情報。注意事項などには付箋が貼られてわかりやすく解説されていました。ゼンリンの地図は、こうしてきめ細かい情報を常日頃からアップデートして管理されていたんですね。そりゃ、多くの人に信頼されるはずです。素晴らしい! などと感心している我々の前に、執行役員・制作本部長 西村仁哉氏が登場! お忙しい中にもかかわらずコメントを頂戴することができました!

「地図の情報は元々、特殊な情報です。ですので、データベース化するにあたってのシステムが市販では存在せず、自社での開発を続けてきました。だからこそ、精度を高めた詳細な地図情報の提供が実現できますし、あらゆる場面で柔軟に活用できるノウハウを私共は備えています。今は、カーナビだけでなく、スマートフォンからデジカメにまでも地図データが搭載される時代。さらにネットワークによって情報が共有されており、従来の地図データのビジネスモデルが大きく変化してきています。これからは世界中で自社のノウハウを生かせるよう積極的な展開をしていきたいと考えております」(ゼンリン 執行役員・制作本部長 西村仁哉氏)

 というわけで、国内最大手の地図情報会社・ゼンリンの取材は終了。普段、なかなか見ることのできない地図の作り方をじっくり知ることができました。

最終更新:12月4日(火)17時39分

@DIME

 

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