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総選挙が公示され、異例の12政党による論戦が始まった。民主党政権の継続か。自民党中心の政権に戻るのか。「第三極」の新党は躍進するのか。どんな基準で[記事全文]
トンネルの天井が崩れ落ち、車が次々と下敷きになる。前代未聞の事故が中央自動車道の笹子トンネルで起きた。天井板をつる金具のボルトが抜け落ちていた。トンネルの開通は35年前[記事全文]
総選挙が公示され、異例の12政党による論戦が始まった。
民主党政権の継続か。自民党中心の政権に戻るのか。「第三極」の新党は躍進するのか。
どんな基準で一票を投じたらいいのだろう。まれに見る「多党化選挙」に、戸惑う有権者も少なくないに違いない。
だが、それによって政策の選択肢が増えるなら、多党化自体は悪いことではない。
新党は、業界や労組などさまざまな圧力団体や官僚機構とのしがらみが少ない。
既成政党にはすくえない、多様な民意にこたえてほしい。新党に期待する人々の、そうした思いは理解できる。
組織が弱く、党員も少ないのは仕方がない。一方で既成政党にはない新党の強みは、自由な発想と、知事や市長として行政組織を率いたリーダーの現場感覚ではないか。
それを生かして、既成政党にはできない、思い切った政策を発信できるか。新党の生命線はまさにその一点にある。
ところが、その公約や主張を聞いて、逆に不安や疑問を感じている有権者も多いのではなかろうか。
たとえば、日本未来の党の公約である。
消費増税は凍結する一方で、最低保障年金を創設し、年31万2千円の手当を子どもに支給する。破綻(はたん)した3年前の民主党のマニフェストそのままだ。
肝心の財源は「特別会計の全面見直し」などで捻出するというが、それで本当に制度を持続できるのか。
日本維新の会の政策にも首をかしげざるを得ない。最低賃金制の「廃止」を掲げたが、批判を浴びて「改革」に修正した。
過ちを正す勇気は持つべきだが、それで立場の弱い働き手をどう守るのか。
ほかにも原発政策や企業団体献金の禁止など、維新の政策の右往左往ぶりは目に余る。
ともに既成政党出身者との合流を急ぐあまり、政策の詰めが甘かったのではないか。これでは有権者は混乱するばかりだ。
多党化がこのまま定着するのか、2大政党中心の政治に戻るのか。先行きは見通せない。
理念や政策を軸にした、新たな政界再編成への途上にあるとの見方もできよう。
選挙後、新党もふくめ、どの政党も政権に参画したり、政策決定の枠組みに入ったりする可能性がある。
であればなおさら、日本が直面する大きな課題に真正面から向き合い、建設的な政策論争に臨んでもらいたい。
トンネルの天井が崩れ落ち、車が次々と下敷きになる。前代未聞の事故が中央自動車道の笹子トンネルで起きた。
天井板をつる金具のボルトが抜け落ちていた。トンネルの開通は35年前だ。中日本高速道路の幹部は脱落の原因を「老朽化であったと思う」と語った。
ボルトや金具の補修や交換をしたことがなかった。つり金具の付け根の部分は目で見るだけで、ハンマーを使った打音検査をしていなかった。
経年劣化への警戒が甘かったと言われてもしかたない。
国土交通省の指示で、全国のつり天井のトンネル49本の緊急点検が始まった。
ただ、心配は同じ型のトンネルだけにとどまらない。
この国は、高度成長期からバブル期にかけて張りめぐらされた高速道路などのインフラの老化問題を抱えている。短い間にできた分、老いるのも一斉だ。地震の影響も気になる。
安全の総点検が必要だ。
コンクリートの耐用年数はだいたい50年といわれる。道路を例にとると、2029年には全国のトンネルや橋の半分近くがその50年を超える。
ひび割れが見つかるなどして通行規制がかかっている橋は、今年4月の時点で1160本あり、08年に比べて1.7倍に増えた。
高速道路も4割が供用から30年を超えた。劣化対策を高速道路各社が話し合いはじめた矢先に、この事故がおきた。
今あるインフラの維持管理や造り替えの費用がかさむため、37年度には新たな建設に財源をまわせなくなる。国土交通省はそう試算する。
新たなものを「造る」から、今あるものを「繕う」へ。頭を切りかえる時期にきている。
公共事業はずっと景気浮揚の道具として使われてきた。
「コンクリートから人へ」をかかげた民主党政権も、整備新幹線や凍結していた高速道路建設の再開、八ツ場ダムなど、大型の新規工事に次々とゴーサインを出した。
自民党や公明党も、防災や減災を理由に「総選挙後に大型補正予算を」と訴える。
安全への投資は必要だ。しかし、新しく大きなものを造れば維持費がさらにかさむ。古びた施設の安全性を高めることを優先すべきだろう。
壊れてから修繕費用を出すより、日ごろからこまめに点検と手入れをする方が施設は長持ちし、費用も安く上がる。
「予防保全」という、この考え方が大切だ。