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一般参加の平和集会も監視していた/自衛隊OBや右派、宗教団体も/発言内容など詳細に報告/自衛隊・情報保全隊


 自衛隊・情報保全隊の監視差し止め訴訟の原告側弁護団は3日、仙台市内で記者会見し、同隊の活動を記した内部文書「週報」を証拠として仙台高裁に提出したことを明らかにし、内容を公表した。平和を掲げた市民集会の参加人数、発言内容のほか、自衛隊や在日米軍に批判的な団体・個人の活動への監視結果が詳細に報告されている。

 同隊の任務は防衛相訓令で自衛隊の秘密情報漏えいを防ぐことと定められている。弁護団事務局長の小野寺義象弁護士は会見で「市民への不当な監視行為で、憲法違反だ」と述べた。

 提出された「週報」は「特に厳重な取り扱いを要する」とのただし書きが記載された2010年12月の3週間分。「防衛省・自衛隊・在日米軍等に関する国内動向」とする欄に各地での調査内容が盛り込まれている。

 札幌市内で10年12月8日に開かれた「武力で平和はつくれない 12・8北海道集会」については参加者数を「約200名」とし、講演した在京紙記者の実名を挙げた上で、内容について「防衛大綱、武器輸出三原則見直しを終始批判する内容の発言が認められた」と報告していた。

 沖縄については同年12月、当時の菅直人首相が沖縄訪問をした際の反対集会などを詳細に報告。同年の知事選で再選を果たした仲井真弘多氏について、経済振興策など条件次第では米軍普天間飛行場の「(県内)移設容認に転ずる可能性がある」と分析した記述もあった。

◎一般参加の集会も監視 
 主催者「気付かなかった」 
 

 今回、明らかにされた内部資料「週報」からは、自衛隊情報保全隊の監視対象が自衛隊に批判的な政党の行事などにとどまらず、平和や防衛問題をテーマにした一般の人々も参加する集会や講演会にも向けられていたことがうかがえる。

 「週報」に記載のある、2010年12月に札幌市で開かれた「武力で平和はつくれない 12・8北海道集会」。当日は会場に受付を設置したが、名前や所属を書かなくても入場は可能だったという。

 主催した労組などでつくる「北海道平和運動フォーラム」の長田秀樹事務局長は「防衛問題について学ぼうと広く呼びかけた会だった。監視されていたことは全く気付かなかった」と憤った。

 この集会があった日は太平洋戦争開戦日で、「週報」には「12・8開戦記念日関連動向」として秋田市、名古屋市、神戸市など全国13カ所で行われた市民団体の行動も詳述。「『日米共同訓練反対』『自衛隊の海外派遣反対』等を主張していることが認められたことから、引き続き注目する」などの「所見」も盛り込まれていた。


◎反自衛隊活動監視が大半 
 元保全隊員との一問一答 


 自衛隊・情報保全隊の活動について、東日本の同隊で幹部として勤務した経験がある男性が、同隊に所属していたことを示す書類を示した上で共同通信のインタビューに応じた。一問一答は次の通り。
 ―隊の構成は。
 「情報収集を行う調査班と分析を行う情報班に分かれる。自衛隊員の思想や家族関係を調査し、情報漏えいを防ぐのが本来の任務だが、実際には反自衛隊活動を行う団体や個人の監視が仕事の大半を占める」
 ―反自衛隊活動とは。
 「防衛省の施策や自衛隊の活動に反対することで、米軍への反対活動も含まれる。基地や駐屯地前で活動を行えば、すぐに監視対象になる」
 ―監視の方法は。
 「雑誌や機関紙などで集会の予定を把握し、直接出向いて主張をチェックするほか、写真やビデオを撮影して参加者を把握する。尾行をすることもある。自衛隊OBや右派、宗教団体についても自衛隊に批判的な言動があれば、その影響力は大きいだけに監視対象となる。1日に少なくとも10件以上の報告書が情報保全隊本部や各方面隊に寄せられていた」
 ―集めた情報はどうするのか。
 「ファイリングしてロッカーや書庫に保管され、データベース化される。毎週の動きは『週報』にまとめて配布され、内部で情報を共有した」
 ―活動に疑問は感じなかったか。
 「反自衛隊活動を行う人は全員が敵という意識で、当時はあまり疑問を感じず、正しいことをやっていると思っていた。しかし、今考えると、まさに市民監視で、非常に政治的な要素が強く、監視の対象は無限に広がりかねない。現在も、首相官邸前などの反原発デモも監視している可能性が高いと思う」

(共同通信)

2012/12/04 14:10

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