コラム:「未来の党」参戦で衆院選に大変化の兆し、枠組み影響も

2012年 11月 29日 13:11 JST
 
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田巻 一彦

[東京 29日 ロイター] 衆院選の構図に大きな変化が生じる兆しが見えてきた。嘉田由紀子・滋賀県知事が代表の「日本未来の党」が結成され、「卒原発」を旗印に61人の前衆院議員が集まり、民主、自民に次ぐ3番目の勢力となったからだ。

既存政党からは「小沢新党」との批判も出ているが、強い警戒心の裏返しとも受け取れる。嘉田氏の清新なイメージに注目が集まれば、総選挙での台風の目になることも予想される。仮に自民、民主に次ぐ第3党に未来の党が躍進すれば、新政権の枠組みにも大きな影響を及ぼすことになる。

<シングル・イシューに既成政党から批判>

未来の党の公約は、卒原発以外では、消費税増税法の凍結、環太平洋連携協定(TPP)交渉入りに反対し、自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)は推進することや、子ども1人当たり中学卒業まで年31万2000円の手当支給、テロや大災害に対応できる日本版国家安全保障会議(NSC)設置などが含まれる。

これに対し、民主、自民、公明などの既存政党からは、原発問題だけを争点にしているとの批判や、現実に10年で原発ゼロにする道筋が見えないなどの批判が出ている。また、小沢一郎氏が代表の国民の生活が第一が未来に合流することで、小沢新党が未来の党の実態であるとの指摘も既存政党の幹部から出ている。

<未来の党に後出しジャンケン効果>

私は、こうした既存政党の批判の裏側には、ある種の強い警戒感が潜んでいると感じる。というのも、衆院選はこのところ、大きなテーマやムードで票が一方向に傾き、「郵政民営化」で自民党、「政権交代」で民主党と投票行動がシフトする現実があった。ところが、今回は今のところ明確な流れがなく、その中では日本維新の会の結成を背景にした「第三極」に風が吹く気配があるものの、まだ、『微風』の段階。

そこに未来の党が結成され、「後出しジャンケン」の優位性を発揮されれば、大きな脅威になるという政治家独特の直感が働いているように見える。実際、29日付日経新聞朝刊に掲載された世論調査をみても、結果を大きく左右する無党派層の中で、51%が投票先を「まだ決めていない」と回答している。

また、未来の党が掲げる政策の「卒原発」が示す原発依存からの脱却に関しては、女性や年少の子供を持つ親の階層で厚い支持を形成しているとの世論調査結果がいくつも出ている。ソフトな語り口の嘉田氏の情報発信が増加していけば、無党派層の投票行動に影響を与え、ブームを形成する可能性はかなりあるのではないかと予想する。

<自民・民主・維新の3党先行、未来参戦で変化の可能性>

日経の世論調査では、投票したい政党として自民が23%、維新が15%、民主が13%という順だったが、未来の党の結党後に実施される調査では、情勢が大幅に変化している可能性があると予想する。

日本維新の会の石原慎太郎代表は、26日の国内報道各社とのインタビューで、選挙後に自民や民主と連立する可能性を問われ、「肝心なことを決めるのに過半数がいるんだったら、協力するよ」と述べている。もし、自民党が第1党になり、維新が第2党か第3党になれば、自民、公明、維新の連立政権の可能性もかなり出てきたのではないか。

<未来が第3党確保なら、政権枠組み協議が長期化も>

だが、未来の党が維新を上回って第3党の座を確保する結果になれば、自民とは原発政策で政策が対立するため、自民、公明、未来の連立政権は成立する可能性が低いと予想できる。その場合の自民、公明、維新の議席数次第では、3党合わせても過半数割れとなって、新政権の枠組み協議が長期化するシナリオの可能性もゼロとは断言できない。

いずれにしても、未来の党が衆院選に加わることで、選挙戦の構図が参加前と大幅に変わることになったのは間違いない。さらに「卒原発」の提示によって、選挙の争点として原子力政策のあり方について、より大きな注目が集まってきたと言えるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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11月29日、滋賀県知事の嘉田由紀子氏率いる「日本未来の党」が結成され、衆院選の構図に大きな変化が生じる兆しが見えてきた。写真は4月、ロイターとのインタビューでの同知事(2012年 ロイター/Toru Hanai)

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