希望新聞:東日本大震災 放射線リスク、冷静に対応を 各地で勉強会開催−−福島・田村の半谷輝己さん
毎日新聞 2012年04月06日 東京朝刊
「住み慣れた故郷を離れることが、心身に大きな影響を与えるリスクについていま一度考えてみませんか」−−福島県田村市の塾講師、半谷(はんがい)輝己さん(50)が「家族のリスクマネジメント勉強会」という活動を続けている。放射線のリスクと、避難によるストレスリスクを冷静に勘案し、福島の再生を考える一つの試みだ。
半谷さんの自宅は福島第1原発から約40キロ。経営する塾で化学などを教えていたが、避難者が増え、約100人の生徒は約3分の1に減った。そこで昨年11月、放射能問題に関する勉強会を始めた。きっかけは母親(86)の死だった。
母は原発から3キロの双葉町に兄夫婦と住んでいたが、事故後田村市や新潟市、役場が移転した埼玉県と移り住んだ。故郷や友人と離れ、座るか寝るかだけの避難生活。体重は半分以下に減り、昨年11月、埼玉県内の病院で衰弱して亡くなった。
「無理な避難をしなければ、もっと元気に長生きしたのではないか」と思ってしまう。母と似たような最期をとげた高齢者が多くいることを知り、「単に避難すればよいわけではない」との思いを強めた。そこで原発から20キロ圏外で毎時3・8マイクロシーベルト、年間10〜20ミリシーベルト以下の低線量地域なら、家族や地域の中で生きる選択の方が大切だとネットで訴えた。