様々な試練に取り組み、自分の内面と向き合う日々の中で、
やがて天賦の才は花開き、心もしなやかに成長を遂げていた。
地元宮城で行なわれたNHK杯では、高橋大輔を抑えて初優勝。
GPファイナルに挑む17歳の飛躍の秘密とは?
Number817号掲載の独占インタビューを一部特別公開します。
「トロントに来たのは、ブライアン(コーチ)がキム・ヨナを育てたからじゃないです。俺はもっと戦略的に考えたんですよ。僕はライバルがいて競い合わないとダメなタイプ。だからショーや試合の公式練習で刺激されて上手くなることが多かった。だったら、その重圧を毎日受けられたら、僕はどれだけ変われるんだろう? って。4回転を2種類跳べるハビエル(フェルナンデス)の秘密も見たかった。だから、俺をカナダまで突き動かしたものは、ライバルと一緒に練習できるこの環境。ヨナは全然関係ない」
カナダの名伯楽の元で学んだ5カ月に、隠し切れない高揚感。
トロントのダウンタウンから電車とバスで約30分。メープル並木に囲まれた高級住宅街の一角に、『クリケット・スケーティング&カーリングクラブ』はある。日本人をほとんど見かけないこの街に羽生結弦が移り住み、名伯楽ブライアン・オーサーのもとで練習を開始して5カ月。ライバルの話になると「僕」と言ったり、自分の戦略を語る時には「俺」と言ったり。威張ったり、謙虚になったり。自分の中で始まった大きな変化に、高揚感を隠し切れない17歳の少年が、そこにいた。
2012年3月、ニースで行なわれた世界選手権。会場が割れんばかりの大喝采のなか、羽生は背中を押されるように、フリーの演目を力の限り情熱的に踊り続けた。
ショートプログラム7位の羽生は、演技を終えた時点で首位。最終滑走6人の演技を見ていた時、阿部奈々美コーチが言った。
「来年は、海外の先生にも見てもらわないとね」
世界選手権銅メダリストとなった17歳に起きた心境の変化。
阿部コーチからすると、海外合宿程度の提案だったのかもしれない。しかし、17歳にして世界選手権の銅メダリストになった少年は、故郷・仙台に戻り、オフの計画を立てはじめた頃、その言葉を何度も咀嚼した。
「仙台で練習するのが一番安心だし、家族とも離れたくない。でもあれだけの歓声を浴びたし、期待を背負ってる。もうスケートは自分だけのものではないんだ。表彰台に立ったからには、自分の感情は優先させちゃいけない。新たな一歩として、阿部先生と別れて、自分の足で海外に飛び出さないと」
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