「オリーブオイル〜食品業界の光と影」

ニセ物が横行するオリーブオイルビジネスの実態(その1)

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2012年12月4日(火)

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「メード・イン・イタリー」を信じてはいけない

 さて、皆さんのお手元にあるオリーブオイルには、原産国表示欄にどの国が表示されているだろうか? 日本の法律では、最後にボトル詰めをした場所が「原産国」となる。オリーブオイルの場合、どの国でもイタリア産が好まれるので、イタリア以外の国でつくったオイルをイタリアに運び込み、瓶詰めをして輸出するということが日常的に行われている。「Bottled in Italy」「Made in Italy」と書かれていても、イタリアでつくられたオリーブ、あるいはオイルを使っている保証には全くならない。お手元のオイルのラベルに「イタリア産」と書かれていて、比較的安価で大量販売されているものであるとするなら、その中身はスペイン産である可能性が高い。

 そして、輸出市場の5割超のシェアを有するスペイン産オリーブオイルのおよそ8割、つまり世界で流通するおよそ4割のオリーブオイルが品質偽装され「エキストラバージン」を騙っているとしたら……。

 そうしたことが、オリーブオイルの実際の市場で普通に起こっていることに、消費者はいずれ気がつくだろう。世界最大のオリーブオイル輸入国である米国では、すでに偽装表示の蔓延に気づいた消費者たちが、スペイン産の安いオリーブオイルを敬遠する動きも出てきている。

 私の友人でジャーナリストのトム・ミューラーは『エキストラバージンの嘘と真実』(日経BP社)の中で、欧州、米国を中心に、オリーブオイル取引・販売の不正が横行していることを赤裸々に描いたが、これは決して対岸の火事ではない。日本でもほぼ同様のことを起きていると考えたほうがいいだろう。

 次回は、日本の国内市場の現状について見ていくことにする。(次回に続く)

エキストラバージンの嘘と真実』(トム・ミューラー著、日経BP社)

 普段何気なく使っているオリーブオイルだが、欧米やオーストラリアでは、偽装オイルの横行、EU補助金の詐取、異物混入事件などが、一般市民の大きな関心事となっており、その火をつけたのが本書だ。偽物オイルをめぐるスキャンダルから健康効果の最新研究まで、オリーブオイルのすべてがわかる最新バイブル。1890円(税込)。

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    ニセ物が横行するオリーブオイルビジネスの実態(その1)

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多田俊哉(ただ・としや)

多田俊哉

日本オリーブオイルソムリエ協会代表理事
国際基督教大学教養学部卒業。モルガン銀行、JPモルガン証券、大手食品商社を経て、大前研一氏主宰の大前・ビジネス・ディベロップメンツ設立に伴い執行役員として経営参画。現在、イデアファクトリー代表取締役。2009年日本オリーブオイルソムリエ協会を設立。オリーブオイルビジネスの不正を暴いた『エキストラバージンの嘘と真実』で解説を執筆。(写真:坂井 瑞)

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