昨年の7月クールで放送されたテレビ東京の深夜ドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』。国民的ロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」をほうふつさせながら、“安っぽさ”を前面に出した異色の作品だ。主演は山田孝之。ストーリー展開を重視しない脱力系コメディに、一部のコアなファンが食いつき、1万円台半ばと決して安くないDVD-BOXが3万セット以上売れた。アマゾンの年間売り上げランキング(Best DVDs of 2011※)の「日本のTVドラマ部門」では1位を獲得。この反響の大きさを受けて、続編『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』が、10月12日から放送を開始した。
もともとのアイデアは、監督・脚本を担当している福田雄一氏が、『アーサー王伝説』を低予算でパロディに仕立てたイギリス映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』が好きだったことに始まる。「いつかあのような作品を作りたいという福田さんの意向と、深夜帯である『ドラマ24』という番組枠のマッチングがうまく働くのではないかと思った」と、浅野太プロデューサーは語る。
「“低予算”というだけでは訴えるものがなさ過ぎて、他局ではおそらく成立しない。でも、“テレ東の深夜帯で”となると、何となく低予算に説得力が増す(笑)。そういう部分も含めて、うちでしかできない番組です」(浅野氏)
ドラマのオープニングでは、「予算の少ない冒険活劇」と堂々と表記。「スライム」に見える物体や数々のモンスターは、福田氏が主宰する劇団「ブラボーカンパニー」の役者たちが手作りする段ボール製。山形県の庄内映画村でロケをしているが、予算の関係でセットを組めないため、登場する村の景色のパターンにあまり変化がないなど、“安さエピソード”は枚挙にいとまがない。
前作『〜魔王の城』では、ファンを増やすために早い段階からツイッターなどSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を意識。ゲームを題材にし、サブカルチャーの要素が強いことから、ネットと相性がいいことは予測できた。
「放送直後に、フェイスブックでその回のゲスト出演者の動画コメントを出したり、CM中にツイッターで撮影秘話を投稿した」(浅野氏)