井上よしひさ『縛姫ーシバラレヒメー』
勿論、ネコ耳宇宙人・エリスちゃんの悩殺エロボディも大層よろしいのですが、ちびロボット達もなかなか愛らしいところ。あと、まさかの日活コルトにはビール吹きました。
さて本日は、井上よしひさ先生の『縛姫ーシバラレヒメー』(ヒット出版社)のへたレビューです。なお、井上先生についての作家評や前単行本『縄士-NAWASHI-』(同社刊)のへたレビューもよろしければ併せてご参照下さい。
怒涛のB級伝奇ファンタジーの中でSMギミックが唸りを上げる変態ハードコアエロが痛快な1冊となっています。
なお、今回では狂言回しも務める“玄武の巫女”・蓮の活躍は前単行本の長編で描かれており、話のつながりもあるので、本作を楽しむ上では前単行本を読んでおかれることを強くお勧めします。
番外編的な掌編作を除き、1話当りのページ数は20~26P(平均25P強)と中の上クラスのボリューム。風呂敷を広げてゆく漫画的な楽しさがある作劇であり、同時に攻撃性の強いエロ描写であるため、単行本通しての読み応えは確かなモノがあります。
【勢いよく駆け抜ける漫画的王道展開】
前作同様に伝奇系バトルファンタジーを描く本シリーズは、変態性癖で快感を覚えると戦闘美少女に大変身☆という濃厚なB級臭を放つ設定を大上段に構え、勢い任せで痛快に突っ走っています。
人の業の呪縛によって生み出された化け物との闘いの中で、前単行本で活躍した祓い巫女・蓮以外の、白虎・青龍・朱雀の巫女達が集い、大いなる悪との対決を迎えるという語り回しは、ベタではありますが、ベタならでは良さの面白さ・安定感が確固としてあり、単行本1冊としてのまとまりの良さは高く評価したいところ。
また、2冊構成の長編として、舞台設定の骨組みがしっかりとしており、鞭打ちの傷が虎の縞模様っぽいので白虎の巫女に変身、婦警=制服が青い=青龍の巫女=青龍は五行で木=三角木馬で変身発動などといった、大馬鹿ではありながらもアイディア力に富むキャラ設定で細部を詰めている点も作品世界の楽しさを下支えしています。
ただ、全世界の“呪縛”をその身に憑依させることで明らかになる蓮の姉の妹に対する感情や、白虎の巫女である大川あがのが蓮に対して持つ想いなど、キャラクター間の関係性をストーリーラインにしっかりと絡めさせることができなかったのは、個々のキャラクター性がせっかく強いこともあって個人的には多少の減点材料。
とは言え、漫画好きにとって親和性の高い要素をふんだんに用いつつ、長編作として一定のドラマ性を打ち出す方法論は、例えばあべもりおか先生や高岡基文先生などの近作と同じく、実に“コミック阿吽らしい”ものであり、最初から最後まで配置された“仕掛け”をニヤニヤしながら楽しるようになっています。
【ロリっ子からアダルト美人まで幅広い戦闘ヒロインズ】
緊縛の快感によって変身する蓮と同じく、各ヒロインは鞭打ち・三角木馬・蝋燭責めといった特殊な快楽で退魔の力を持つ戦士に変身するという設定であり、エロ漫画的にも非常に利便性の高いキャラ揃い。ちなみに、全キャラの名字はダムの名前という誰得仕様となっています。
生意気盛りで男をちょいとバカにしている女子高生で鞭打ち担当な白虎の巫女、真面目な女性警察官で三角木馬担当の青龍の巫女、父親に性的虐待を受けているロリ小○生で蝋燭責め担当の朱雀の巫女、そして退魔の術を扱えなくなっているポニテ(井上作品的にはここ重要)巫女で緊縛担当の玄武の巫女と、キャラ造形・設定は見事にバラけており、ヒロインの多様さも作品の魅力の一つでしょう。
上述した通り、キャラ間の関係性の描出はやや弱めであり、また多人数ヒロイン制の代償として個々のキャラクターに対する設定の掘り下げもやや半端ではありますが、それぞれ一定のインパクトのあるキャラ造形になっていることでカバーしています。
少女天国(ヒット出版)生え抜きの作家さんでもあり、久方ぶりのこのロリキャラに期待される方もおられるでしょうが、近作ではキャラの等身が比較的上がっていることもあり、以前の程良いロリプニ感を期待するのは避けるべきでしょう。
今単行本の途中からデジタル作画へ移行されたそうですが、その変更に伴う絵柄の印象の変化はほとんど感じられず、ベテランらしい作画の安定感の強さをしっかり示しています。
【激しい苦痛が快楽に上書きされる破滅の官能】
作中で“これは拷問だ”との台詞がある通り、ヒロインの肢体を激しく痛めつける各種の過激な責めはエロシーンに非常な攻撃性を有しており、実用面に関しては確実に読み手を選ぶタイプ。
肌を切り裂く鞭、性器に痛々しく食い込む三角木馬、柔肌を焼く溶けた蝋、そして体を締め付ける縄といった責めが生み出す苦痛描写を、エロ展開序盤で激しく描いているのも非常に強烈です。
ヒロインの前後の穴に加えられる猛烈なピストン運動は、時に子宮内を蹂躙し、比較的リアル寄りの性器描写の淫猥さや媚肉の蠕動する卑猥な断面図等の援助もあって各責めに負けない嗜虐性・攻撃性を叩き出しつつ中出しフィニッシュへと激走しています。大量に散りばめられるエロ台詞や各種擬音、効果線等もこれらのアグレッシブさを適切に強化。
現業界における緊縛エロのオーソリティではありますが、今単行本に関してはヒロインのキャラ設定もあって、それ以外の責めが目立つ感はありますので、荒縄と女体のコンビネーションにコダワリの強い方は要留意。しかし、元々股裂きやら拷問やらな過激なアブノーマルエロを得意とする作家さんなので、既刊のファンはすんなり受け入れられるでしょう。
レズプレイがあったり、触手エロがあったりとそれ以外にもエロシチュは豊富ですが、前単行本の重要キャラ・天ケ瀬君の目立たなさに代表される様に、普通の男性とのセックス描写はあまりないことは、多少好みを分けるでしょう。
過激に攻撃的でいて破滅的な陶酔感のあるハードコアエロと痛快に駆け抜けるシナリオが程良く調和が取れており、前単行本を含めてシリーズ通して大層楽しませて頂いた作品でした。
次単行本は読み切り中心になるとのことですが、いくらでもスピンオフが作れそうな世界観なので、またこのキャラ達に出会えたらなぁと思っております。お勧め!
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