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【第12回】 2012年11月30日
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降旗 学 [ノンフィクションライター]

大阪で中国人留学生が暴行被害
日本人なら誇りをなくすな、と私は思うぜ

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 日本人は決してそんなことはしない……、と言いたいところだが、目には目をとでも思っているのか、日本でもいくつかの残念な事件が起きているのもまた事実だ。中国での大規模な破壊活動が報じられた翌九月一九日の午前三時前、神戸中華同文学校の校門から不審火が出た事件がそのひとつ。

 たまたま警戒中の警察官が発見し火を消し止めたが、現場では灯油のような臭いがしたとのことだ。この学校には、以前からも脅迫文が郵送されたり脅迫電話がかけられていたという。放火の疑いで捜査は続いているが、まだ犯人は捕まっていない。

 九月一七日には、福岡の中国総領事館に発煙筒を投げ込んだ男が出頭し事情聴取を受け、二九日には大阪の中国総領事館の壁面とシャッターに墨汁、消化剤を投げつけた男二人が現行犯逮捕されている。いずれも、右翼団体に所属する構成員の仕業だった。

 同じではないか、これでは。
 やられたらやり返せでは余計に始末に負えない。

 中国人の破壊活動を苦々しく思い、冷静さと秩序とを尖閣問題の拠り所にしようにも、中国人と同じことをする日本人がいたら、私たちの発言は何の根拠も伴わなくなるだけだ。

 国を愛するなら野蛮な行動に出るな、と私は言いたい。ネット上で見る中韓を嘲弄するような発言もいかんよ。それで勝った気になっているなら情けないかぎりだぜ。

 学校の不審火と総領事館での事件で死傷者が出なかったのは幸いだったが、今月十三日、東大阪市の路上で、中国人留学生が何者かに襲われ、顔を切られるという事件が起きた。

 バイトを終えて帰宅する途中、この女性は背後から肩をつかまれ、灰色のスプレー塗料を顔に吹きかけられた直後、いきなりカッターナイフで斬りつけられたという。軽傷だが、女性は鼻や額、まぶたの上など計六箇所に切り傷を負った。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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