「チベットの人にも失礼でしょ!ただ中国を混乱させたいなんて何で正々堂々と言えるのか。大人としてあり得ない。よっぽど携帯を投げつけてやろうと思ったけど、新品のiPhoneだったので止めました(笑)。そのときが日本滞在の2年間で一番辛かった」
房さんの問題意識は、反中国ナショナリズムを煽る日本のマスメディアのあり方へと向かう。
8月27日、丹羽宇一郎・駐中国大使の公用車が男女4人に襲われた事件に絡み、中国のネット上では「愛国無罪」とか「彼らは英雄だ」とかの書き込みがあったという報道が日本で相次いだ。
だが、房さんに言わせると実情は相当違う。中国には政府に雇われて愛国的な書き込みをするグループがある。彼らは一件の書き込みで5毛(1元の半分)もらうので「五毛党」と呼ばれる。それは中国の若者の間では常識だ。日本人記者もみんな知っている。
にもかかわらず、日本のメディアはそんな背景事情をほとんど説明せず、中国の反日感情ばかりを拡大・強調して報道する。
「今の中国は愛国精神が弱まっていると私は感じています。それは政府にとってはあまりよろしくない。なので、愛国的な空気を保つために人を雇って書き込みをさせているのではないかなと私は思います」
そうか!中国政府は求心力を高めるために愛国心を利用する。一方で日本政府に対してはコトを荒立てずに収めていこうとメッセージを出す。その二つのバランスをとりながらやっている、と。
「まさに対外と対内(政策の使い分け)ですね。その二つは矛盾しないんです。全部、自分にとって都合がいいから」
房さんは〈政府ににらまれるのでは〉とこちらが心配するようなことまで平然としゃべる。
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