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争点「復興」どこへ 衆院選・議論の外…被災地怒りと失望

宮城県沿岸部の仮設住宅の一角に立つ衆院選のポスター掲示板。衆院選の前哨戦で「復興」がかすんでいる

 東日本大震災後、初めてとなる衆院選(4日公示、16日投開票)で、政治が優先的に取り組むべき「震災からの復興」が争点からかすんでいる。11月30日の党首討論会でも、被災地については議論が交わされずじまい。国政の主要な課題に隠れ、埋没した感すらある。「見捨てられた思い」「震災を忘れたのか」。被災地に怒りと失望、落胆が渦巻く。

 岩手県釜石市平田の平田第6仮設団地の自治会長を務める森谷勲さん(70)は「被災地の復興は置き去りにされているようだ」と政治不信を募らせる。
 240戸ある同市最大の仮設団地には、野田佳彦首相をはじめ政府・与党の幹部が訪れた。森谷さんはその都度、早期復興を訴えた。
 「社会保障も国の財政もしっかりしないと復興はままならない。だから、消費税の増税も賛成だ」と話す。そうした被災者の覚悟とは裏腹に、各政党は「被災地の将来」を語らず、離合集散ばかりを繰り広げる。「エゴ、保身にしか映らない」
 福島第1原発事故で福島県南相馬市から宮城県亘理町のみなし仮設住宅に避難する女性(58)は憤る。
 「古里を追われた私たちに、政治は真剣に向き合わない。見捨てられた思いだ」
 民主党は「復興が最重点」、自民党は「まず、復興」、日本維新の会は「復興のための体制づくり」、公明党は「復興日本」とうたう。共産党や社民党は復興予算の「流用」阻止を掲げる。
 しかし、各党が意見を戦わせるのは専ら、エネルギー政策としての原発、環太平洋連携協定(TPP)、経済政策だ。
 宮城県東松島市商工会の橋本孝一会長(64)は「選挙が近づくにつれ、復興が話題に上らなくなった。被災地がないがしろにされている」と言う。
 資材やマンパワーの不足、雇用の場の創出、復興予算の無駄遣い−と課題は残されたままだ。橋本さんは「いずれも政治が解決すべき問題ではないのか」と訴える。
 自治体の首長からも注文が付く。奥山恵美子仙台市長は会見で、復興の議論が不足していると苦言を呈した。
 菅原茂気仙沼市長も「これからでも構わない。立候補者が被災地の直面する課題の解決方法を明確に示し、選挙戦に臨んでほしい」と話す。


2012年12月02日日曜日


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