写真グラフ
 

県内葉タバコ生産 岐路  農家数99人 平均年齢75歳
(2012年12月3日掲載)
 

ハウス内にずらりと並ぶ葉タバコ。縄に挟んでつり下げ、自然乾燥させる=7月、長野市戸隠栃原




真夏の収穫は葉がしおれないよう、早朝と夕方に行う。帽子とタオルで日差しを避けながら1枚ずつ手で大きな葉の根元を折る=8月、長野市戸隠栃原




葉タバコの苗を一つずつ植えていく。かつては集落の全戸が葉タバコを作り、あちこちに畑が広がっていた=5月、長野市戸隠栃原
 

作った葉タバコの等級鑑定に臨む北山さん(右から2人目の黒い帽子)。県内でこの光景が見られるのは今年が最後。来年からは福島県須賀川市まで運んで行う=11月26日、長野市若里の長野葉たばこ取扱所



苗を植えるために土を起こし、うねを作る=4月、長野市戸隠栃原



農家の背丈を越える場所に咲くタバコの花。かれんな淡いピンク色の花は、葉に栄養分を送るため摘まれる=7月、長野市戸隠栃原

 長年、県内の中山間地農業を支えてきた葉タバコ生産。禁煙・分煙化の浸透や2010年のたばこ増税による需要減を受け、日本たばこ産業(JT)が昨年、廃作希望を募ったところ、県内では生産者の約4割に当たる88人が応じ、2012年以降の作付けをやめた。残った農家も高齢で代替わりなどの見通しは立っておらず、県内の葉タバコ生産は岐路に立たされている。

 約60年前から栽培を続けている長野市戸隠母袋の北山学さん(77)。60アールで麻を、5アールで葉タバコを栽培し始めたが、麻の需要減を受け1958年から本格的に葉タバコ栽培に移行。一時期は128アールまで栽培面積を広げた。だが、時代の波は葉タバコにも押し寄せ、母袋でかつて15軒あった農家は現在3軒まで減った。

 「タバコ作りが生きがい」と話す北山さん。JTからの廃作募集にも「栽培をやめるときは農家をやめるときさ」と応じなかった。今年も約1万7千本の苗を育て計1717キロの葉タバコを販売した。

 現在、県内の葉タバコ農家は99人で平均年齢は75歳。昨年の廃作協力金が約1年分の耕作純粋所得相当(10アール当たり28万円)だったことも廃作に拍車を掛けた。かつて県内に11カ所あった葉タバコ取扱所のうち、1カ所だけになった長野市若里の「長野葉タバコ取扱所」も今年限りで閉所される。県たばこ耕作組合長の原山敬康さん(77)は「若者が専業でやっていくのは難しく、後継者がいない」と話した。

[写真・文 有賀史]
 
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