特別天然記念物の両生類オオサンショウウオを文化庁の許可なく無償で譲り渡したとして、警視庁は先月下旬、神奈川県横浜市の会社役員の男A(71)と兵庫県加東市の会社役員の男B(72)らを種の保存法違反と文化財保護法違反などの疑いで書類送検した。
容疑は2010年5月、Bに宅配便で送らせたオオサンショウウオ1匹を、Aが引き取った疑い。体長1メートルになるオオサンショウウオは民間人の飼育が禁止されている。1週間に1度小魚を2~3匹食べる程度で、100年以上生きる不思議な夜行性動物だ。
10匹を飼育する日本サンショウウオセンター(三重県)は「軟弱な生き物ではないけど、体長の倍の水槽はあったほうがいい。暗くて狭いところが好きなので隠れ場所も必要。飼育は簡単ではない」と話す。両生類がかかる「ツボカビ症」にも注意が必要だ。
しかし、希少種マニアの愛好家もひそかに存在する。日本最大(体長1メートル51センチ)のオスを飼育する城崎マリンワールド(兵庫県)の飼育員は「淡水で生きるので広範囲に移動しない。限定地域に生息するところにマニアは引かれる。『飼えない』と言われれば飼いたくなるのが心情」と話す。
日本海側の一部地域に生息するが、場所を公表するとマニアがこっそり捕まえに行くため、言えないという。「産卵期の冬の終わりから春にかけて、夜中に捕まえにいくようだ」(同飼育員)
異様な風貌のオオサンショウウオはかつて食用だった。「『半分に裂いても生きている』との意味で、地方によっては『ハンザキ』と呼ぶ。昔は滋養強壮に効くとして食べてた」(前同)。一説にはサンショウの匂いがするため、その名がついたともいわれるが「それはない。生臭い」(飼育員)。
前出の飼育員は「それなりに表情があって動きはかわいい。私がそばに近づくと何かを感じ取って、水面に顔を上げたり前進したりする」と魅力を語る。しかし、ダメなものはダメ。見つけてもそっとしておかねばならない。