四回転(クワド)を入れたエフゲニー・プルシェンコ、四回転を抜いたエヴァン・ライサチェク。どちらが「金メダル」にふさわしいかと随分と大きな議論になっているようですが…。私ごときの意見など何の価値もないとは思いますが…うーん、やっぱり微妙なところですねえ。 トリノ・オリンピックのゴールド・メダリストとして、旧採点時代からの生き残りとして、技術の向上なきスポーツに意味なし!と四回転をしっかり決めてみせたプルシェンコですが、いかんせん転倒はなくてもジャンプの質がよくなく、全体的に雑な演技に見えてしまいました。いや、実際にプル様は「雑」に滑ったのではけしてないのだと思います。満身創痍の身で3年ぶりの競技復帰、そして年齢的なことを考えても演技の質が下がってしまうことは防ぎようがなかったのでしょう。ステップも、得意の高速ステップではなく、最近の採点傾向にかなり無理して合わせていたようにも見えたし。 そうなると、四回転なし、3Aまでで、SP・フリー共に手堅くまとめてきてライサチェックの金メダルが妥当なのでしょうが…しかし、私は彼の演技に感動出来なかった。 荒川さんのフレンズ・オン・アイスに毎年来てくれて、たとえショーでも日本の観客のために誠実に滑ってくれるエヴァンに、私は好感を抱いています。だから、こんなこと書きたくないし、またエヴァンのファンの方が目にしたら、不愉快になるとは思いますが…敢えて書きます。 '08イェテボリ・ワールドでジェフリー・バトルが優勝するまでは、「四回転なしの最後のワールド・チャンピオン」と呼ばれていたトッド・エルドリッジの全盛時の演技を、一昨年放送されたNHK杯名場面集の番組で見た時、「これはクワドなしでも、ワールド・チャンピオンとして納得出来る素晴らしい演技!」と感動しました。気品溢れる、と言っても過言でないほどの美しいスケーティング、クワドはなくても高さがあり質の高いジャンプ。3Aコンボも、当時としては最高難度の3A+3Tでした。 それを見てしまっていると、ライサチェクの今回のオリンピックでの演技の印象の薄さは否めません。3Aコンボも3A+2Tだし、技術的にも十数年前から後退してしまったのでしょうか?採点傾向が高難度のジャンプを入れずに、手堅くまとめる演技に有利になっていること、ジュベールをはじめとする四回転ジャンパーがそろいもそろって不調と、色々な条件が重なったこともあるのでしょうが…。 重ねて、ライサチェクのファンの方がこれを読んで不快に感じることがあったら、お詫びします。 4位のステファン・ランビエールは、ヴェルディのオペラ『椿姫』の音楽を上手につなぎ合わせたプログラムで、彼の優美な演技はやはり群を抜いていて、見惚れてしまいました。しかし、クワドをはじめとするジャンプの無理な着氷が目立ったことと、それに以前のステファンが放っていた強烈な「俺様オーラ」が感じられなかったのが残念でした…。キスクラでの元気のない様子もステファンらしくなくて、さびしかったよ。 5位のパトリック・チャンは、多くの方が指摘しているように、「地元上げ」の高得点、これは否定出来ないでしょう。なぜ彼がジョニーより上?小塚君より10点も上?彼が才能ある若いスケーターであることは間違いありませんが、その若さ故なのか、彼のフリーの『オペラ座の怪人』には、訴えかけてくるものがまるでない。SPの『ロクサーヌ』を見ても、あ、これタンゴだったっけ?で終わりです。フリーを見てもファントムの凄みも悲しみのかけらも感じられない。ただきれいに滑っているだけ。ついでにジャンプは、まだまだ未熟。それでいて、自分が跳べない四回転をバカにしたり、先輩スケーターを貶める発言の数々。到底応援出来るアスリートではありません。彼の将来性までは否定しませんが。 それに比べて、あんな素晴らしい演技をしたジョニー・ウィアーの得点がなんで伸びなかった(怒)…正直なところ、彼の得点が出るまでは、大ちゃんを抜くのではないかとハラハラしてしまったのですが、いざ得点が出ると、その評価の低さは納得出来ないものでした…。何度も言いますが、なんでチャンより下なのよ?しかし、キスクラでのジョニーは得点や順位のことすら達観しているような立派な態度でした。薔薇の花冠が素敵に似合っていたし…25才にもなって、花冠ををあんなに見事にかぶりこなせるなんて、ジョニーしかいません(きっぱり)。 そして、バンクーバーは、そんなジョニーの美学をとことん追求した集大成だったと思います。美しかったよ、ジョニー。たとえクワドがなくても、あなたは素晴らしいアスリートであり、アーティストです。 7位の織田信成君に関しては、私が今まで極力話題を避けていたことは、当ブログを今までお読み頂いた方ならご存じのことだと思います。しかし、さすがに今回はオリンピックであり、また前のページで書いたように私のわだかまりも解けてきたことだし、今日は彼について書きますね。 といっても、靴紐が切れて演技中断という事態には、あまり同情出来ません。元金メダリストのウルマノフ氏が「スケーターとしてあるまじき失態」と評したそうですが、確かにオリンピックという大舞台であまりに不注意。周囲のスタッフはフォロー出来なかったのでしょうか?モロゾフ・コーチは以前、高橋のエージェントが靴をきちんと用意しなかったからイェテボリ・ワールドで優勝出来なかったとか言ってましたが、今の自分の生徒のこの事態は…?ただし、織田君が演技再開後も崩れることなく最後まで滑りきったことは、よくやったと思います。 演技に関しては、紐が切れる前から、彼にしては動きも表情も固く、かなり緊張していたのでしょうか。結局、クワド回避になってしまったのは、シーズン当初からのモロゾフの安全策からくる必然だったのだと思います。ジャンプを得意とする織田君が今後、ライサチェク・タイプの3Aまでの手堅くまとめる路線で行くか、クワドに挑戦するかは、本人が納得いくようにすればよいでしょう。 …2ページ使っても、書きたいこと全部収まりませんでした。8位の小塚君らについては、明日以降に書きますね。 それと、ART ON ICEのオリンピック評の大ちゃんの部分など、出来るだけ早く訳したいと思っているのですが…当分、フィギュア関連の記事が続きそうです。 |
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タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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なつ様,興奮あとの冷静総括をよく書いてくださった! |
ペンギンママ 2010/02/22 04:39 |
そうですよね〜〜・・・難しいですね、この問題は。 |
rose 2010/02/22 12:06 |
「音楽を引き摺り回して暴れてるようにしか見えない」とは、フィギュア男子シングルを観戦したあるライターさんのライサチェック選手のSPの感想・・・。 |
ヴァンフ 2010/02/22 12:07 |
私もなつさんと同じことを思いましたよ! |
rose 2010/02/22 12:19 |
しばらくフィギュアネタですね〜毎晩楽しみにしています。なつさん目線で観た評,なんだかスッキリハッキリです。どうぞ引き続きよろしくです。 |
きょろろ 2010/02/22 22:34 |
>ペンギンママさん、こんばんは。 |
なつ 2010/02/22 22:50 |
roseさん、再びこんばんは。 |
なつ 2010/02/22 23:05 |
>ヴァンフさん、コメントありがとうございます。 |
なつ 2010/02/22 23:12 |
>きょろろさん、こんばんは。 |
なつ 2010/02/22 23:19 |
待ってました!なつさんの感想シリーズ パート1(^O^) |
フミ 2010/02/22 23:47 |
なつさん、こんにちは。 |
フミ 2010/02/23 13:37 |
再び・・・笑 |
rose 2010/02/23 15:21 |
>フミさん、こんばんは。 |
なつ 2010/02/23 22:45 |
>roseさん、こんばんは。 |
なつ 2010/02/23 22:57 |
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