モバイル/無線通信

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2009/10/29
出典:日経コミュニケーション 2009年9月15日号  pp.56-57
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

[後編]オープン・モデルで新サービス開拓、MVNOビジネスを裏方として支援

MVNO(仮想移動体通信事業者)との協力関係は。

 MVNOが自由にサービスを展開できるよう支援するスタンスだ。リスクが高い分野では、UQ自身が手がけてからMVNOの参入を待つ。例えばMIDやスマートフォン向けにサービスを提供する場合などは、UQがまず使い方を示すことを考えている。

 新しいデバイスを持ってきてビジネスを展開しようとするMVNOがいた場合、UQがプロモーションを担うとか、一緒に料金プランを設計するとか、異なる2社のサービスをマッチングするといった支援がある。

株主のKDDIがUQのMVNOになったが、どういう役割分担か。

 UQには体力がないため、法人ビジネスが難しい。そこでUQはコンシューマ向けサービスの裏方に徹して、MVNOを支援していくモデルにした。KDDIは、UQを使った法人事業を積極的に展開していく。

 KDDIからすると、UQは高速のインフラに映る。KDDIは携帯電話事業者の中では速度面で他社に劣る部分もあるので、そこを補うように役立てる。

MVNOから卸値はもう少し下がらないのかという要望があると聞く。

田中 孝司(たなか・たかし)氏
写真:中島 正之

 MVNOに対しては将来、値下げしていくことも検討する。現在はサービス開始直後のため、基地局を立てる資金が必要になっている。

 ただユーザー料金は、光ファイバと携帯電話を使い、さらにUQに4480円を支払うのでは、料金がネックになる可能姓があることを気にしている。

 そこでUQは、「WiMAX機器追加オプション」で200円足すと別の端末からも接続できるようにした。二つの端末から同時接続はできないが、こうしたサービスで端末1台ずつに通信カードが内蔵されている環境を作りたい。

 将来は回線数と端末数を切り離すことを検討している。現在は4人家族が何台もの端末を使う場合、4480円×4回線と割高になってしまう。そこで複数の端末を使うユーザーが追加で2回線目を契約したときを想定し、その料金をいくらにすべきか思案しているところだ。

 従来のサービスがこうした料金を実現できないのは、回線に端末代を含んだ垂直モデルだから。UQはオープン・モデルで端末代を含まないため、現行でも200円の追加で済ませられる。

 歴史的に見ると、通信事業者は端末売りからスタートし、インターネット時代に端末をオープンにした。携帯電話ではまだ端末を売っているが、このモデルは長く続かないだろう。

 やがて無線もオープンな世界に進む。それによってトラフィックや新しい用途が増えるだろう。

ただ、ARPU(契約者1人当たりの月間利用料金)は下がるのでは。

 オープンになると、多くのユーザーが多様にネットワークを使うようになって全体のボリュームが増え、ユーザーのトータルの支払い額が増える。UQが目指しているのはこうした環境だ。そのためにも新しいトラフィックを生む端末を広げていくことが、これからの課題になる。

UQ MiMAXにつながる端末と地域WiMAXとの接続性は。

 UQに接続する端末はWiMAXフォーラム(WMF)の認証を通ったものが前提で、「3A」周波数帯(2.496G-2.69GHz)の全帯域に対応している。この端末が地域WiMAXとローミングする場合は、3Aの全帯域をスキャンすれば接続の可能性がある。

 端末がUQに接続するには、WMFとUQのIOT(interoperability test)をクリアしないといけない。ただし端末ベンダーの判断で、IOTで接続性を確認した事業者以外の帯域は、対象帯域としない仕組みを実装できる。これによってUQの帯域しかスキャンしない端末もある。

 一方で地域WiMAXの一部では、WMFの認証を通った端末からのローミングを前提としていない基地局を使っている。こうした基地局とは端末が3A全帯域をスキャンしてもつながらない可能性がある。

海外のWiMAX事業者との互換性は。

 協議はスタートしている。実は、技術的にはそれほど困難なことはないと考えている。

 ただ標準化の遅れから、現在の端末にIDを二つ書き込める機能がないことが課題になっている。二つのIDを使えれば、米国では米国の契約、日本でUQの契約という使い方ができ、ユーザーの利便性を高められる。

 もう一つは周波数の課題。海外にはUQ WiMAXとは別の周波数帯を使う事業者がいる。この問題は、1台で2.5GHzも3.5GHzもサポートする機器ができれば解決される。そうなればパソコンに内蔵されたWi-Fiと同じように、どこのサービスでも端末1台で加入できるようになる。

UQコミュニケーションズ 代表取締役社長
田中 孝司(たなか・たかし)氏
1957年、大阪府出身。京都大学大学院工学研究科電気工学第2専攻修了。米スタンフォード大学大学院電子工学専攻修了。1981年に国際電信電話入社。DDI,IDOとの合併、KDDIへの社名変更を経て、2003年4月にKDDI執行役員ソリューション事業本部ソリューション商品開発本部長。2009年4月から同取締役執行役員常務ソリューション事業部門担当。2007年8月からワイヤレスブロードバンド企画(2008年3月からUQコミュニケーションズ)代表取締役社長を兼務。趣味はゴルフと読書。最近読んだ本は「WiMAX教科書」。

(聞き手は、松本 敏明=日経コミュニケーション編集長、取材日:2009年8月18日)

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