学びのロード

充実のプログラムで深まりゆく、知の「探検」ロード。

地圏環境科学科

地球と人類の現在と未来を、46億年の地球進化史のスナップショットとして理解する。

地圏環境科学という学問

水圏、気圏、生物圏は、太陽からの放射エネルギーによって駆動しており、その基盤をなす固体地球(岩石圏)も、放射性元素の崩壊熱に支えられて活動しています。4つの『圏』の交差する空間が『地圏』であり、各圏は物質とエネルギー循環を通じて相互作用しています。そこでは、絶えずバラエティー豊かな自然現象が起こり、固体地球の進化とともに共進化してきました。『地圏』の最も新しい産物がわれわれ人類です。

地圏環境科学科では、現状の理解からだけでは知ることができない地球環境の過去を解きあかすことにより、その現在と未来を、一連の進化のスナップショットとして理解しようとしています。さらに、人類の活動をも含め、地圏全体をひとつのシステムとして解明しようとしています。

地圏環境科学科の概要

地球科学系の前身は1911年に遡り、この分野では我が国で2番目に長い歴史を持っています。その後、地質学古生物学・岩石鉱物鉱床学・地理学の3学科に拡充されました。近年の地球科学の著しい進歩と地球環境問題に対応するため、地質学古生物学科と地理学科が統合され、1992年に新たに発足したのが地圏環境科学科であり、岩石鉱物鉱床学科は地球物質科学科(2008年より地球惑星物質科学科)となりました。専任教員数や学部学生数は他大学に比べて多く、我が国最大級の規模を誇っています。

最新鋭深海掘削船『ちきゅう』

研究内容は、

  • プレートテクトニクス
  • 断層と地震
  • 岩石の力学的・電磁気的物性
  • 地圏における物質循環と大気・海洋・陸域の環境変動
  • 隕石の衝突と生物の大量絶滅
  • 多様な地形の形成機構
  • 生命の発生と生物系統進化
  • ウォーターフロント生態学、
  • 地域形成
  • 人類活動と地圏環境との関わり

など、多岐にわたっています。

とくに地球環境の分野では、最新鋭深海掘削船『ちきゅう』によって行う統合国際深海掘削計画の推進を研究の中軸としています。1億5千万年前以降の海洋環境変動、サンゴなどを対象とした高解像度浅海域環境変動、バイカル湖やウプスグル湖の湖底掘削による内陸域での環境変動など、海域・陸域での環境変動を統合的に研究しています。

卒業後の進路

地圏環境科学科の卒業生の約7割が大学院に進学します。博士前期課程で修士の学位を得た学生は博士後期課程に進学し、引き続き研究を行って博士の学位を取得しています。

学部や修士課程を卒業・修了した学生はその専門性を生かし、石油開発、地質・環境コンサルタント、官公庁、小中高教員、学芸員などとして活躍しています。

博士後期課程を修了した学生の一部は、大学や国公立研究機関の研究者となります。

科目に見る入学から卒業までの流れ

科目に見る入学から卒業までの流れ

4年間の学部生活のうち、最初の1年半は全学共通で開設されている基幹科目・展開科目・共通科目を履修し、地圏環境科学の基礎となる広範な自然科学と人文社会科学の素養を身に付けることになります。その後、次第に地球科学系の専門科目が増加する仕組みです。地球科学系には地圏環境科学科と地球惑星物質科学科があり、さらに地圏環境科学科には地圏進化学コースと環境地理学コースが設定されています。2年次の夏にこれらへ配属が決まり、それ以降はそれぞれの学科・コースの専門科目を本格的に学ぶことになります。

地圏環境科学科においては自然観察能力を身に付けることが大切であるため、講義と有機的に結合した多くの室内・野外実習を開設しています。学部教育の総仕上げである卒業研究は必修であり、集団指導体制で専任教員が指導にあたります。

放射性元素と安定同位体で地球の謎を解く

放射性元素と安定同位体で地球の謎を解く

岩石には、固体地球のエネルギー源であるウランやトリウムのような放射性元素や原子の質量数が異なる同位体が微量ながら含まれています。放射性の炭素14Cを使えば、地層の年齢を計ることができ、このことを利用して、活断層で発生した過去の大地震の時期も特定できます。ウランが放射壊変してできるラドンの濃度は、地震の予知に役立ちます。石灰質の化石などに含まれる安定同位体の18Oや13Cからは、過去の海水温や生物生産量などが分かります。

地圏環境科学科で放射性元素や安定同位体の科学を学べば、炭素・窒素の地球大循環、生物大量絶滅、地震予知といった地球環境問題や災害科学の謎にチャレンジできるようになります。

地域を冷ますことが地球を冷ますことになる
仙台のヒートアイランド研究の重要性

  • 海風日日中の仙台の気温分布
  • 県周辺での立体観測

[図]海風日日中の仙台の気温分布と県周辺での立体観測

地球温暖化は人間の行動が地球に撥ね返るという構造を持っています。たとえば暑熱に耐えかねてエアコンを使用することが、CO2の排出量を増やし地球を暖めるのです。仙台の夏は東京以西の夏に比べ、ずっと過ごしやすいですが、真夏日や熱帯夜は確実に増加しています。ヒートアイランド現象が暑熱をさらに耐え難い状態にしています。仙台で発達する海風はその暑熱を冷ます効果があるのか、私たちは都心や郊外で立体的な観測に挑戦しています。